その18「頑な。」

本を手に取り、そっと棚の扉を閉め、更に物音がしないように部屋に戻った。


薄い布団に横になり、少しだけ夜が近付いて暗さを帯びてきた薄暗い部屋でしばらく本を読む。


本の中の住職は優しい口調で私まるでに話しかけるようだった。数日前まで死ぬ事ばかりを考えて、誰の言葉も耳に入らなかった私にゆっくりと説諭する。


ページを捲る度に目を閉じて深く息を吐く。でもまだ自分の心は溶けそうにない。思ったよりもずっと頑なだった。

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