その15「扉の外も無音。」

どうやら扉の鍵は医師の判断で最初から掛けられていなかったらしい。

扉の内側には取っ手も何もないし、隔離病棟と言うくらいなんだから、ここからは出られないものだと私が勝手に決めつけて扉に触ろうともしていなかったのだ。


開くと聞けば開けたくなるのが人の常。扉に耳をそばだてて廊下に物音がしていない事を確認して、そっと扉を押してみる。バネの効いた鉄製の扉がキッと言う音を立てて少し開く。


廊下には誰もいなかった。

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