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読者から『面白い』と思ってもらえる小説ってどんなの?

 「はじめまして」の方もそうじゃない方も、こんにちは。
 私、2023年3月に角川ビーンズ文庫より小説家デビューを果たしております、野菜ばたけと申します。

 今回は『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第一弾。
 小説書きにとっての永遠の命題、「『面白い小説』って何?」について考えていきたいと思います。

・小説家を目指している方
・今よりもっと面白い小説が書きたい方
・もっとたくさんの人に読んでもらいたい、ランキング上位を狙いたいという野望をお持ちの方
・執筆活動に行き詰まっている方
・『面白い小説』あるあるに共感したい方

など

 にオススメです。
 少しでも何か、拾って帰ってくださいね。


野望がある作家は、プロアマ問わず『面白い』を追い求める必要がある

 この記事を書いている2023年8月3日現在、私は小説を書き始めて丸3年と3か月ほどになりました。
 Web小説から始めて、今は主に公募で戦う傍ら、商業小説の執筆に励んでいます。

 じつは先日X(ツイッター)で「どのくらいが小説書きビギナーだと思いますか?」というアンケートを取ってみました。
 すると「半年まではビギナーを名乗っていい」と答えた人が120人中54人を占めていました(※あくまでも『私界隈』の『多数決』による結果です。諸説あります)。
 これに照らし合わせると、私は既に「中堅です」と名乗らなければならない執筆歴の持ち主です。
 まったくと言っていい程、どんな実感はありませんが。笑

 執筆文字数で言えば、もう余裕で100万字を越えています。
 年数的にも文字数的にも、商業デビューという経験的にも、ありがたい事に他の方から「すごいね」と言われる事が増えてきました。
 しかし、そんな身であっても……いや、そんな身だからこそ常に考えています。
「『面白い小説』ってどうやったら書けるの?」と。

 だって、上には上がたくさん居るのです。未だ運に恵まれず鋭い爪を研いでいる未デビューの方もわんさかいらっしゃいます。
 才能皆無の私などが天狗になれる余地はありません……。

 時に成功している他人を羨み、ちょっと妬んでは自己嫌悪。
 それでも書いたら書いただけ書籍にできる……なんていう夢のような作家を目指しています。

 だからこの辺りでとりあえず、目指すべき答えを定義したいのです。

 皆さんも、よろしければ自分が好きな作品を頭に思い浮かべながらこの後を読んでみてくださいね。

面白い小説① キャラクターの関係性に没頭する人は多い。

 近頃「関係性ヲタク」をよく聞くという方は多いんじゃないでしょうか。

 関係性ヲタクとは、キャラクター単体ではなくてキャラクター同士の過去の繋がりや掛け合いなどの関係性にエモさや尊さを感じる人たちの事です。
 実際にそういう言葉を知らなくても、誰しも読書をした事があれば一度は「この二人が一緒に出てくると和むよね」と思ってニヤニヤしたり、「絶対に何か起きるよね」と思ってワクワクした事があるんじゃないでしょうか。

 あらゆる創作本に「魅力あるキャラクターを作る事」と書かれていたり、読者さんが「○○さんカッコいい。好き!」と言っていたりしますが、そこから更にキャラクターを掘り下げる事で生まれる関係性が、読者の心を鷲掴みにします。
 魅力あるキャラクターたちが関係性を築く事、そういう関係性を描く事が、ストーリーを紡ぐ事になります。
 絡む相手によってキャラクターに抱く印象が変わる・特定のキャラクターにだけ素を見せるなど、相手がいるからこそ見せる事ができるキャラクターのよさを持つ作品・キャラクターは、自ずと読者に愛してもらえると思います。

面白い小説② 思わず一気読みしてしまうようなストーリー展開……には、理由がある。

 たまに「気付いたら一冊読んでいた」「もっと読みたいのに続きがない」という作品に出逢う事があると思います。
 そういう作品が上手いのは、必要十分な情報提示引き際を弁えている部分でしょう。

 必要十分な情報提示は、必要な時に必要なだけの情報を提示するという事。
 説明をし過ぎない事や、会話の中に情報を紛れさせる+キャラクターの感情を言わせる事で読者に情報開示を意識させない工夫をする事でスムーズに行う事ができます。

 対して引き際を弁えているとは、冗長にならない、エピソードを読者を飽きさせない長さに収める事を指します。
 これらを行うためには、一度書いたものを読み直し、話運びのテンポの良さを優先して必要のない場所をカットする勇気も必要でしょう。

 勿体なく感じる時は、カットした部分を後に「番外編」や「○○特典」として出すなどの+α要素にしたりするという方法もあります。
 必要な人にだけ読んでもらう。この工夫をするだけで、作品を読了した人の満足感が安定し、作品を「面白い」と思ってもらえやすくもなるでしょう。

 技術と勇気が必要な項目ですが、できている人も多くはないので、できるようになればきっと大きくステップアップできると思います。
 とはいえ、言うは易く行うは難しですけどね……。

面白い小説③ 作品の雰囲気・世界観。必要なのは、底力。

 中にはその作品・その作者独特の世界観、醸し出される雰囲気を好んで小説を読む人もいると思います。
 そういう人の何が優れているのかというと、独特な世界観設定づくり表現に使う語彙のよさです。

 「この作品シリーズが好き」と思う場合は、独特な世界観設定づくりが上手いのだと思います。
 他にはない独創的な前提設定や同じ題材の他作品とは違った切り口の作品シリーズなどは、オンリーワンだからこその強みがあります。

 流行るかどうかは分からない、場合によってはニッチな層をターゲットにした作品である場合も多いですが、その分ガッチリとニッチな層の心をわしづかみにできるような筆力がある作品は、強いですよね。

 前述の①②を満たしている事が前提にはなりますが、題材の切り口が他者と違うというのは、作者の個性があればこそできる芸当です。
 それはおそらく表現に使う語彙のよさにも言える事だと思いますが、こちらは作者本人のセンスのよさの他に読書歴も関わってくるでしょう。

 読書歴は、作者自身が意識していなくても、自ずと執筆時に反映されます。
 よく読むジャンルや好きな作家など、これまで自身が触れてきたもののすべてが影響し、交ざり合い、その作者特有の何かになります。

 読書数や頻度などのインプットについてのあれこれが、創作界隈ではよく議論の種になりますが、私は読書量や読みの深さに問わず、必ずしもすべて作家にプラスになるとは思っていません。
 しかしインプットが自分に大なり小なり影響を与える事だけは意識しておいた方がいいと思っています。

 この作品の雰囲気・世界観については、本人のセンスや個性に大きく依存するものの、読書などの努力で少なからず補える部分だとも思います。
 特に私のような非凡である自覚がある人間は、せめて努力で補える部分は補いたいと思う一方で、アウトプットしないと結果は出ないという事実との板挟みにあう事も多いでしょう。

 いい塩梅を探したい。
 それはきっと誰もが少なからず思う事であり、適正な比率は人によるため中々線引きが難しい問題です。

面白い小説【番外】 自分の小説が誰かの『面白い小説』になるためには

 ここまで『面白い小説』の条件を上げてきましたが、結局のところその定義は読者の感性に依存する事に、皆さんお気づきでしょうか。

 『①キャラクターの関係性』を例に挙げると、どのような関係性をいいと思うかは、読者の好みに依存します。
 ある人にとってはどうしようもなく素晴らしい関係性が提示できたとしても、別の人間にとってはそうでもないかもしれない。
 他の条件も同じです。
 すべての人の『面白い』になるのは、きっと不可能でしょう。

 そんな世界で、どうすれば誰かにとっての『面白い小説』になれるのか。
 そんなの無理じゃんと思う人も居ると思います。
 中には「私の作品めっちゃ良いのに、周りがその良さに気付いてくれない」という悩みを抱いている作者もいるのではないでしょうか。

 そういう悩みを完全に解消できる方法はありません。
 どんなに頑張っても、自作がどれだけよかったとしても、時や運が悪くて見つけてもらえないこともあるでしょう。
 しかし見つけてもらえる可能性を上げる方法は存在します。
 それが、外側を飾り販促活動をする事です。

 外側を飾るというのは、読まれるためのタイトルやあらすじ・検索タグを付ける事です。
(ありきたりな事を言っている様に思えるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでくださいね!)

 長文タイトルは、自作のよさを最大限読者に伝えるための手段です。
 あらすじはその作品の見どころをアピールするための場所、検索タグはたくさんある作品の中から自作を見つけてもらうためのもの。
 表紙があるサイトに作品を投稿する場合は、少し手間ではありますが、その作品の雰囲気に合う表紙を付ける事で、手に取ってもらいやすさは間違いなく上がります。

 誰かの『面白い小説』になるためには、作品を見つけてもらわなければ始まりません。
 そして一度タイトルやあらすじを読んで「自分の好みには合わない」と思われたら、本文を読んですらもらえません。

 きちんと時間を割きましょう
 そして書く内容は、ちゃんとその作品の魅力が伝わるものにする事を心掛けましょう

 タイトルやあらすじ、タグなどで嘘をつかない事こそが、自分の作品を好いてくれる本当の読者層を、最も多く捕まえる事ができる結果に結びつきます。

最後に注意

 結局のところ小説も、一種の人気商売です。
 たとえ外側を綺麗にする事でたくさんの人に一ページ目を開いてもらえたとしても、中身が伴わなければぬか喜びになってしまいます。

 外側も大事、中側も大事。
 どちらかと言えば中側の方が優先順位は高いですが、中側よりは外側の方が手軽に工夫できるのも確かです。

 一作一作、試行錯誤を繰り返しましょう。
 貴方の作品は、無駄にしていいようなものではありません。
 せっかくなので最大経験値を稼いで、なるべく早く、なるべく多くの結果を残せるように頑張りましょう。

 結果を求めて頑張る事は、なにもカッコ悪い事ではありません。
 なりふり構って結果が出ない方が、むなしいし悲しい事ですよ。
(というのは、自戒でもある。笑)


『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第二弾はこちら。
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