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ある大学院生のふところ事情ー修士時代編

大学院生にとって、ふところ事情は何かと気になるところです。
誰かの参考になるかはわかりませんが、結構厳しい経済状況であったと思われる自分がどう乗り越えてきたか、書き留めておきます。なお、修士は10年も前の話なので悪しからず。

人生波乱万丈を地でいく母にほぼ女手一つで育てられた私は、高校生から日本学生支援機構にお世話になっておりました。
そこから、国立大学4年制看護学部⇒大学院博士前期課程(≒修士課程)に進学という進路をとるにあたり、経済面は大きな課題でした。看護学部卒であれば、看護師として就職すれば、安定した収入が得られます。その道を選ばず、プラス2年学生を続けようというのですから、今考えるとよく決断したものだと。

収入源と支出のポイント

そんな私の修士時代の収入源は、以下の通りでした。
1.日本学生支援機構からの奨学金貸与(第一種・第二種併用)
2.アルバイト代(塾講師、家庭教師)
3.ティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタント
そして、支出のポイントに次の点が挙げられます。
1.授業料免除
2.実家への仕送り
3.日本学生支援機構第一種奨学金の返済全額免除

収入1.日本学生支援機構からの奨学金貸与(第一種・第二種併用)

 収入源として最も大きな金額を占めていたのが、奨学金でした。第一種は国立大学・自宅外で80000円/月、第二種は100000円/月の貸与を受けていました。まだ定職についていないくせに、とんでもない借金をしていますが、どうも私は借金に対する恐怖心が欠如しており(!)、全然不安ではありませんでした。返済途中の今になって、ひしひしと負担を感じております。ただ、第一種奨学金は免除申請ができると「奨学生のしおり」でみてから、「それは絶対申請!」と貧乏根性がうずいたのを覚えております。のちほど支出のターンで詳述しますが、こういう競争が働く免除申請などは早めの情報収集と「申請するぞ!」という前もっての意気込みが大事です。

収入2.アルバイト代(塾講師、家庭教師)

 アルバイトは大学入学前の3月から働き始めた地元の塾の講師、あとは知り合いから個人で依頼を受けた家庭教師をちょこちょこしていました。学部2年生まで地元から通い、3年生以降は大学の寮や近隣のアパートに移り住みましたが、アットホームで何かと融通をきかせてくれる個人塾が居心地よく、(その上辞めるのも後釜がなかなか見つからず難しく)、前期課程を修了するまで6年間働き続けました。もはや看護師より、塾講師の方が勤続年数が長いという。この塾講師と家庭教師を合わせると、大体5~6万/月、夏期講習など繁忙期で10~12万/月がまれにあるといったところでした。片道電車で1時間半かけて、地元まで。よく通ったものです。
 ちなみに、塾は目一杯働いてしまうと給与の非課税枠を超えてしまうので、それがないよう調整してくれた塾の社長にはとても感謝しています。

収入3.ティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタント

 高校・大学と奨学金を借り、親からの経済的支援なく学生をしていた事情は、指導教員や在籍する研究室の先生方に話してありました。ストレート進学者が少ない看護学部の大学院では、私のような「時間はあるけど、お金はありません!」というザ・学生はほとんどいません。みなさんアルバイトで看護師をしているので。。そんな中、私は先生方にお仕事くださいといって歩いて、臨床経験なしでもできるTA・RAのお仕事をもらいました。記憶がおぼろげなところもありますが、、
TA:学部授業(講義2科目、実習1つ)
RA:指導教員の先生の科研でデータ収集(インタビュー)、所属分野の准教授の先生(※自分の修士論文の指導補助をしてくれた)の科研で分析補助、隣の研究室の教授の先生の科研で分析補助
 分析手技は、学部4年の卒業研究で研修受講+自分のデータ分析で経験済だったため、修士課程でもお仕事をいただけたという経緯があります。
 お金を稼ぐ目的だけでなく、実は日本学生支援機構の返還免除の評価に少しでもプラスになればという戦略でもありました。目をひく業績は出せそうにないなら、他でかせぐしかない、ですね。

支出のポイント1.授業料免除

 非常に貧乏な状況でしたので、経済的事由で授業料は免除されました。非課税所得の母、中学生の弟、そして定職なく学生をしている私。かじれる脛はなし。育つハングリー精神と忍耐。

支出のポイント2.実家への仕送り

 所得の少ない実家に、アルバイトで稼いだお金を毎月2万(くらいだったかと、、記憶が、、)いれておりました。一人暮らしでしたけども。
 どうしてこのような家の状況になったかは、そのうちまたどこかに書き留めておこうかと思います。個人史として。幼いころに父が病死して、、とかそういう話ではありません。離婚、そして養育費のもらえない高校中退のシングルマザーが生きていくのは大変だったという、そういう話です。

支出のポイント3.日本学生支援機構第一種奨学金の返還全額免除

 日本学生支援機構の第一種奨学金には、「特に優れた成績による返還免除」があります。虎視眈々とこの免除対象に採用されるよう、評価基準にかかりそうなことをいろいろと挑戦しておりました。結果的に、全額免除を受けることができました!そして、いろいろな挑戦は、今の糧にもなっています。

 私の研究分野、研究室では、修士課程で大きな研究業績を作るのは正直困難です。臨床フィールドで展開する質的研究が多く、質的データを複数の目的で扱うことは一貫性が崩れやすく、初学者には向きません。質的研究は研究者の問題意識、現象へのスコープや立ち位置が問われやすく、初学者はそのあたりが最初から明確になっていることが少ないため、研究プロセスの途中でブレブレになりやすいのだと思います。すなわち、卒業研究でも修士研究でも、研究者自身が問題意識から研究目的を練り上げ、そこと一貫したデータを収集する必要があります。そのデータのほとんどが「人を対象とした」もので、倫理審査を通過しなければなりません。(※コロナ禍以降は、そもそも臨床でのデータ収集が許される機会も減ったので、限られた期間で研究を進める卒業研究や修士研究では、文献やカルテ情報が活用されるものが多くなりました)倫理審査にたどり着くまでのプロセスを何個もできる質的研究初心者は、私の知る限りいません。必然的に、業績としていくつも研究発表や論文投稿をすることは少ないわけです。進学前までの経歴にも左右されますが。
 となると、特に優れた業績と評価方法の評価基準のうち、教育・研究の補助業務や社会貢献活動は頑張りどころとなるわけです。この申請に向けたポイントは、次の点です。
◎申請期限は短し!情報収集を前もって。
⇒修士論文のゴールが見えて、ふぁ~っとしてる間に締め切りがあります。遊んでると申請の準備が間に合わず逃します。むしろ逃す人が多かれ少なかれいたから、競争率が下がって採用されたのではと思うくらいです。希望する人は忘れずに。指導教員の推薦書とかがいることがあるので、そこは早めに依頼しなければです。
◎評価されそうな活動に前向きに挑戦を
⇒自分の研究を進めることはもちろん、せっかくの大学院ですから、いろいろなことにチャレンジし、業績につなげましょう。免除にならなくても、きっといい経験になると思います。教育興味ないな~って思っても、やってみる価値はあると思います。
◎業績につながる経験、免除申請準備の応援をしてくれる指導教員との関係を作っておく
⇒そもそも、お仕事紹介してくれたり、免除申請時に必要になる推薦書書いてもらったり、指導教員には何かと手間を割いてもらうことになります。教授はめちゃ忙しいです。少しでも応援・支援してもらえるよう、日ごろからよき関係づくりを。変に忖度したり、雑用係になる必要はありませんが。

 お金の余裕は心の余裕。心身ともに元気に大学院生ができるようにしたいですね。

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