漫画モデル理論ー敵キャラ編
「モデル」という単語を辞書で調べると”原型”、”典型”、”ひな型”という意味だそうです。漫画モデル理論とは、漫画の重要な構成要素であるストーリやキャラクター設定にもモデル化が適用できるのでは?と筆者が考えた造語です。(異論は認めます)
漫画における敵キャラの重要性
物語では、主人公の目的を達成するために障壁が存在します。その障壁を乗り越えて主人公は目的を果たし物語は完成します。その障壁となりうるのが敵キャラの存在です。敵キャラの設定は、弱すぎると物語の盛り上がりに欠けますし、強すぎても作中の世界観が壊れてしまうためとても重要です。逆に魅力的な敵キャラであれば主人公が倒した時、作品がとても盛り上がります。つまり敵キャラの完成度が作品の面白さに比例すると言っても過言ではありません。
敵キャラのモデルを理解していることで、作品が面白くなる手助けになると考えています。
敵キャラ4象限マトリックス
図2に示したマトリックスは、敵キャラのパターンと倒し方を示しています。
横軸は、敵キャラの思想です。左に行くほど自分中心に物事を考え行動します。逆に右側は、自分を犠牲にしてでも世界や国のこと考え行動します。
縦軸は、主人公の興味の度合いを示しています。主人公に興味があるほど敵側から主人公にアプローチをかけます。一方上に行くほど主人公に興味はありません。これは敵の力が強大すぎて主人公を過小評価したり眼中になかったりするパターンです。そのため主人公から敵キャラにアプローチすることになります。この軸の関係で4タイプの敵キャラに大別することができます。
第1象限 : チート技で倒す
この領域の敵キャラは、物語のラスボスに相当することが多く、人間社会や世界のことわりについて深く考え行動している存在です。具体的には「創造神」「コンピュータ」「巨大な脳みそ」と言ったような人間の概念から離れた存在となります。それゆえ人類殲滅や宇宙を一からやり直すといった個人では考や実現できない目的を持っています。物語の構造としては、敵キャラの大いなる目的が達成してしまうと主人公含め不利益になるので、主人公が敵キャラの目的を止めるために行動することになります。(敵キャラからしたら主人公の存在は目的達成のためのほんの一部でしかないため認識さえされていないこともあります。)
作品の中の世界を動かせる力を持つキャラクターのため、圧倒的な戦闘力を持つキャラクターです。このキャラクターの倒し方は、下記のように所謂チート技で倒します。チート技というだけあり、主人公は命などの相応の対価を払う必要があります。この敵キャラの目的を阻止することとその対価を天秤にかけ苦渋の選択をすることで、主人公は最後の成長を遂げることができるようになります。
・封印術
・異世界または宇宙に追い出す
・覚醒
第2象限 : 武力で負かす
この領域の敵キャラは、「純粋悪」「悪政王」「町のチンピラ」という具合に悪い人です。この領域の敵キャラは、自己中心的で他人に迷惑をかける事をなんとも思わない性格をしています。またその迷惑は、町や国といった個人ではなくコミュニティに影響します。それゆえそのコミュニティのメンバーから嫌われているものの、敵キャラが持っている権力や暴力といった力でその迷惑行為が許されている状況を作っています。その状況を主人公サイドが解決することで、今まで迷惑を被ってきたコミュニティのメンバーから感謝されるストーリーラインが基本となります。そのため敵キャラには読者からみてとても不快なキャラクターにすることで主人公が倒した時の爽快感が増します。
この敵キャラとの戦いは、内容より勝利という結果が重要視されます。なぜなら負けた場合、コミュニティーのメンバーがより酷い目に遭うためです。しかし、コミュニティに影響を及ぼすほどの力を持っているため簡単には倒せません。たとえ敵キャラ本人に力がなくても、政治力やお金の力で用心棒を雇ったりして強さの補完をします。そのため主人公サイドも敵キャラを倒すために、仲間と協力したり、作戦を立てるなど物語内で考えられる手段を講じて勝利する必要があります。
敵を倒すという点で後述する第3象限と似ていますが、100%実力で倒していないため、主人公が敵キャラを倒した時の報酬に明確な違いがあります。第3象限の敵キャラを倒すと主人公の強さの証明が明らかになるという自己成長の側面が強いです。一方、第2象限の敵キャラを倒すことで得られる報酬は、迷惑を被ったコミュニティのメンバーからの信頼という社会的地位となります。
第3象限 : 正々堂々と戦う
この領域の敵キャラは、「戦闘狂」「ライバル」「復讐者」が代表するように主人公と戦うことが目的そのもののキャラクターです。自分の感情や考えだけで行動するキャラクターで、世の中にはあまり興味を示しません。
主人公から見た敵キャラは、自身の自力より高く越えるべき存在であり、敵キャラを倒す事が、主人公の実力が明確にレベルアップすることを指します。そのため主人公は、対決前段階で勝つためのトレーニングや新技獲得などの事前準備をしっかり行います。また物語上、主人公が負けても良いキャラクターのためどっちが勝つか分からない対決を作ることができるため、多くの作品でベストバウトが生まれています。どの作品でも下記の特徴があります。
・主人公と敵キャラ双方に負けられない理由があり、心理描写が描かれがち
・実力を惜しげもなく出し切る
第4象限 : 説得して改心させる
この領域の敵キャラは、主人公考えに反した存在です。主に力を求めて人間以上の存在になった者や主人公のお父さん/師匠など元々は主人公と同じ考えや志を持っていたキャラクターが、あるきっかけで考え方が変わって敵になるといったパターンの敵キャラです。
キャラクターの強さに関わらずこの敵キャラは、主人公の心や考え方の成長を促す存在です。主人公のアンチテーゼを提示された時、きちんとその命題に向き合い自分の答えを出し切ることが求められます。主人公の答えがまとまらず、敵キャラに響くことなく武力で勝利した場合、「戦いに勝って勝負に負けた」状態となります。このように敵キャラとの戦いでは武力の勝利ではなく説得による降伏させることが必要となります。この戦いの過程で主人公は、自身のテーゼを深掘りして考えて、精神面が強くなるという報酬を得ることができます。
以上のようにモデル化することで敵キャラの輪郭が見えてきたのではないでしょうか?このマトリックスを実際使った解説記事は下記のように随時書いていますのでよろしければ見てやってください。
・漫画モデル理論-ワンピースの敵キャラ
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