2027年のビーンズショップ <夢の途中> 第15話 開店までの仕事
それから二週間後、沢木さんから正式な見積書が届いた。谷川さんは正式に発注したようだ。勿論、テラスは付けられなかったが、カフェ付のベッド&ブレックファーストのミニホテルとしては、それで充分だと私は思った。
総額二千三百万円、残り一千万円に借入金が合計一千万円。残金二千万円。これで、内外装費以外の物を全て賄い、谷川さんご夫婦の開店までの生活費も賄わなければならない。外装に関しては余り手を付けず、そのまま使う事になったが、看板は別だからそれも百万円近く係るかも知れない。看板は意外と係る物なのだ。
ホテルの名前は『風の森』、松崎は冬には<頭布はがし>という強い風が吹く。その風からお客さんを守ると言う意味もあるのだと言う。カフェの名前はタイのカフェから頂き、『花の樹』とした。どちらも素敵な名前だと私は思う。一応、別々の看板を立てる事にした。庭には花をたくさん植えると恵子さんは張り切っていた。テラスを付ける予定だった川側にも花を植えるそうだ。
駐車場は六台しか取れないようだ。自己使用が二台必要だから、お客さんの車は後四台しか置けない。足りない場合はどうするか、駐車場を借りるしかないかもしれない。ただ、それは開店後に決めれば良い事かもしれない。
谷川さんご夫婦は毎週日曜日に焙煎を習いに来ていた。もうだいぶ進んだようだ。『抽出は上手くなりました。』と谷川さんが嬉しそうに言っていた。『ほんとかい。』と私は言ったが、『まあまあです。』という事なので本当なのだろう。
後は飲み物、食べ物だった。朝はヤグラを立てた大きなネルドリッパーで濃い柔らかい、自家焙煎のコーヒーを出す。これが売り物なのだから、それが美味しく無いようだとホテルは潰れる。そして、何杯でもお代わりしてもらう。
その他に地元で取れた野菜のサラダを出す。新線な野菜を沢山食べてもらうのだと恵子さんは張り切っていた。パンはバタートーストにするそうだ。こちらもお代わり自由だという事だ。後は、卵料理を出す。卵を二つ使ったオムレツ、目玉焼き、スクランブルエッグ、朝テーブルで注文を聞きそれから焼くそうだ。朝食はそれだけだ。それだけだけれど、一つ一つの物が輝いているような朝食にしたい。と谷川さんは言う。
カフェが始まると、料理はもう少し増える。まずパスタがある。これは一品だけだ。基本的にはトマトのアーリオオーリオだが、いろいろ出しても美味しく無ければ仕方がない。宿泊のお客様も食べたいかも知れないが、カフェが始まってからになる。
後は、サンドイッチが一品。トーストが二品。ホットドッグが一品
チーズの盛り合わせ、その他には、ワッフル、アイスクリーム、等のデザートも置くそうだ。これらのメニューはやってみながらいろいろ変えて行きたい。という話だった。
飲み物はコーヒー、紅茶、カフェオレ、アイスコーヒー、アイスティー、アイスカフェオレ、にアルコールはビールの小瓶と、グラスのカバを置くそうだ。私が考えても、それで充分だし、それ以上何の必要があろうというメニューになっているのではないか。種類だけが多い、現在のカフェへの一つの答えにもなっているはずだ。
カフェは五時で閉め、六時過ぎからは飲食店に向かう人の送迎の時間になる。チェックインした時に、提携店の簡単なメニューを御渡しし、何処へ行きたいかフロントに伝えてもらう。自分でどうにかする人はコンビニの場所も、ラーメン屋さんの場所も、お好み焼きやさんの場所も、全て書いてある紙をチェックイン時にお渡しして自分で動いてもらう。帰りは皆いろいろだろうから、迎えにはいかない。車がよい人はタクシーで帰って来て貰う。と夕食の大体の基本的な動きは決まった。
後は、部屋の掃除だが、もし二人で出来なければ、地元の主婦やお年寄りにパートで手伝ってもらうしか無いだろうが、出来るうちは二人でやってみる。という事になった。
家具は谷川さんが中古家具屋をいろいろ調べて回っているのだが、どのタイミングで買ったら良いのかが難しそうだった。早く買いすぎれば、置き場所に困るし、工事の邪魔になってもいけない。
ただ、良い家具を見つけたら、欲しくはなるだろうし、それがいつまであるのかも分からない。短期間なら預かってくれるかも知れないが、長期間は無理だろう。そういう煩雑な問題がいろいろ起きてくる。
ベッドのサイドテーブルも、ベッドランプも、カウンターの上に置くスタンドも良いものが見つかったら、買っておきたいが、置き場所が無い。いろいろ難しい問題が起きて来るが、それは何時だってそうだ。それを楽しめるくらいにならないとプロにはなれない。でもそれは初めて仕事を立ち上げる人には無理かも知れない。
焙煎機は富士ローヤルの1K釜に決めてあるが、その発注は済ませたようだ。一時期、発注から一年以上経たないと届かないという状況が続いていたが、今は直ぐに届く様になった。消煙機は付けない。一K釜なので、大丈夫だろうという事で、付けない事に落ち着いた。
こうやって準備は着々と進んで行った。『何とかなる。』と言うのが私の基本的な生活信条だが、カフェ付ベッド&ブレックファーストのミニホテルもどうにかなりそうだった。
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