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<秋のカフェ講座>初日のご挨拶の部分をアップします。


開店以来35年、豆屋は面白い仕事です。

今日は<秋のカフェ講座>の初日に受講者の皆様にお話しした、ご挨拶にお代えてという文章を掲載致します。私の豆屋の開店指導についての基本的な
立ち位置をよく現わしていると思うからです。
 
2024年 秋のカフェ講座 テキスト
 
初日 ご挨拶に代えて
 
1・混迷の時代のスモールビジネスについて
 
2024年11月6日アメリカの大統領選が終了しました。選ばれたのは、トランプですが、これにより世界はますます混迷の度合いを深めて行くのでは無いかと思います。
 
それ以前からウクライナの戦争、ガザのイスラエルによる攻撃、イスラエルとアラブ諸国の戦闘、中国の南シナ海での度を越した横暴等、世界は数年前に比べて混迷の度合いを深めて来ましたが、今回のトランプの当選によって2025年以降の世界の混迷は極まったと思って良いのでは無いでしょうか。
 
もともとアメリカの選挙の話で、日本の事では無いですし、私達にどうこう出来る話では無いですが、世界が激変する事で、私達の生活にも大きな変化が訪れる事は間違いありません。
 
人々が夢を持って生きて行くには、生きにくい時代が2025年以降日本にもやってくるという事になると思っています。
 
日本の問題として生活に直結しているのは物価高の問題だと思うのですが、選挙で候補者の一部が言っている様に、時給を2、000円にすること等出来る筈も無く、法律でそれを決めて実現すれば当店も含め大半の中小零細企業は倒産するしか無くなります。
 
日本の会社は中小零細が殆どなので日本全体がとんでも無い状態になるのでは無いかと思います。それが分かっているのか、それともその分を国が補填する用意があるのか分かりませんが、そんなに簡単に売り上げや、利益を増やせる中小零細企業など何処にも無いと思っています。
 
選挙の時、特有の誇大発言だとは思いますが、そういう言葉こそ厳に慎むべきでは無いかと思います。
 
2・個人としてはどうするのか
 
アメリカの選挙から、日本の物価高に対する対応迄いろいろ書いて来ましたが、後は個人としてはどうするのかという問題になって来るのでは無いかと思います。
 
日本では若い人が働かなくなって来ています。人出不足が騒がれていますが、それはただ単に人口が減ったからという問題だけではなく若い人が働かなくなって来ている事も大きな原因があると私は思っています。
 
一番大きな理由は仕事が面白く無いからではないかと思います。勿論、給料が安いという問題もあると思いますが、それだけでは無く、仕事にやりがいも感じられず、毎日がただ単なる忙しい労働にしか過ぎないと思う人が増えているのでは無いかと思います。そこには自分の発想やアイデアや技術を進化させる事も無く、力を付けて行くにつけ収入が増える事も無いという、仕事が単なる労働になってしまっているという現実が重たく堆積してしまっているのでは無いかと思います。
 
ここの所、ユーチューブで豆の焙煎を見て、インターネットで豆を販売したいという若い人が異様に増えている様に思います。私は豆屋としてはこうした動きに否定的ですが、(上手く行かない事が目に見えているからです。)ただ、ここには自分の興味のある事を仕事にし、それで食べて行きたいという基本的な仕事対する意欲はある様に思います。
 
話は変わりますが、日本では昔からスモールビジネスは盛んだったはずです。飲食店が多いのでは無いかと思いますが、スモールビジネスそのものは多種多様な業種がいろいろな形で存在していました。
 
それがアメリカ的なスパーマーケットやデパートという形に集約されていき90%以上の人がサラリーマンになってしまいました。自分がサラリーマンだった親はそれしか仕事を知らない訳ですから、結局、子供にもサラリーマンになる事を勧めるしかありません。
 
ですから子供には<良い中学>⇒<良い高校>⇒<良い大学>⇒<良い会社>という道を示す以外に、他に方法は無かったのだと思います。
 
それは日本の教育も大きく歪める事になってきました。教育がその人間の人間性を育てるのでは無く、大会社に入社出来る人間を育てる単なる会社予備校になってしまい、それ以外は落ちこぼれと呼ばれ様になったのです。
 
そういう社会が長い事続き、当然社会は閉塞してきます。そうした社会に上手く適応出来ない人が沢山増えて来ている様に思います。仕事はいろいろあり、別に会社でデスクワークするだけが仕事ではありません。
 
そういう意味では、昔、村上龍さんが、子供達の為にありとあらゆる仕事を紹介した<13歳のハローワーク>等はとても面白い本だと思っています。
        


 
村上龍さんは小説としても、<希望の国のエクソダス>という、日本の中学生が反乱を起こす。という優れた小説があります。

話は少し逸れましたが、私はこれからの時代、日本ではスモールビジネスが増えて来ると思っています。無味乾燥なデスクワークをお金の為にいやいややり続ける人生では無く、自分が好きな仕事を、小さな規模でも良いから自分の為に作っていく、そうした人生に憧れる人が増えて来るのは当然の成り行きだと思っています。
 
ただ思い付きや流行だけでそうした物に飛びついても、大抵の場合は失敗すると思っています。豆屋の場合はきちんとした焙煎方法を知り、良く練習し、美味しい豆が焙煎出来る事が、まず一番大事な事になります。
 
後はどんな業種でもそうですが、接客です。これはとても大事です。ユニクロの柳井さんの本<プロフェッショナルマネージャー・ノート>にもアメリカの営業マンの話について語られていますが、最終的に良い人間になるしか無いという答えになっています。どんな良いスーツを着ていても、どんなに話術が達者でも、そんな事は関係なく、ただ、どれだけ良い人間であるかという事が何より大事なのだという事がその結論です。

私もその通りだと思います。私が近頃いつも言っている事は『豆屋で大事な事は二つだけだ。一つは豆が美味しく無くてはならない。もう一つは接客だ。』と言っています。豆屋を長く続け繁盛店にしていくのは結局この二つしか無いのです。
 
焙煎はうちの開店指導で覚えられます。ただ、人間は開店指導では作れません。小さな店ではマニュアル接客など何の役にも立たないという事を、店を作れば嫌という程知る事になるのでは無いかと思います。
 
ではどうしたら良いのか。それは日々自分を磨いて行くしかないのです。それが豆屋でも、他のスモールビジネスでも一番大切な事になる様な気がします。
 
立地も、店舗デザインも良いに越したことはありません。ただ、それが決定的な決め手になるかと言えば、そうでは無いといつも思っています。
 
それでは最後にもう一冊新しい本を紹介しておきます。買ってからまだひと月も経っていなので、全部を読んだ訳ではありませんが、大きな仕事をしてきた人の、小さな仕事に対する態度が書かれています。帯にはこうあります。
 
『心からしたい』を事業に育ててゆく。それが豊かな人生の近道だ。
 
興味があれば読んでみると良いと思います。
 
それでは、具体的な話に入っていきます。
 
南方郵便機 店主 高橋義雄

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