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【チカホへの道 #19】森田豪さん編

SDGs賞受賞者の浪江さんからバトンタッチして、今回は「優秀賞」受賞者の農学院 博士後期課程2年 森田豪(もりたつよし)さんのご紹介です。

「ビークルロボティクス研究室」に所属する森田さんの研究は、ロボットトラクターをはじめとしたスマート農業です。幼いころに”はたらく車”図鑑を愛読した方は必見、そうではない方も”かっこいい”と興味が湧いてくる、ミライの”はたらく車”の姿を、一足先に一緒に覗いてみませんか?

SDGsはバズワード?- イベント参加の決め手には反省も・・ -

SDGs、最近ではバズワードといっても過言ではないかもしれないぐらいよく見る言葉です。みなさんはこの言葉を聞いたとき、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか?私は流行りものに反発したくなる性分ですが、ここで語られている17の条項は、大義があり、チャレンジングな目標であると感じました。そういった反省もあって、SDGsの視点から自身の研究を見つめなおすことで、自分にとっても考えたことのない新たな一面が見つかるのではないかと思い、今回のイベントについて参加を決めました。

ミライの農業を変えていく! - ロボットが持つ可能性 -

私は現在、ロボットトラクターを始めとするスマート農業の技術を対象に研究を行っています。SDGsを考える上で、ロボットは非常に重要なツールだと確信しています。
自動で走行や作業が可能なロボットトラクターは、少ない作業者でも効率の向上に貢献できるため、基幹的農業人口が減少している中で、重要な技術になると考えています。
他にも、農業のノウハウが少ない新規就農した方でも、ロボットを活用することによって、ベテラン農家さんのような作業クオリティに近づくことができ、農業従事者の方の早期成長につながります。

効率向上だけじゃない!-ロボットによるメリットは数多い-

しかし、ロボットを使うメリットは効率の向上以外にも重要な意味を持つと考えています。例えば、最近のトラクターは性能も良く快適ですが、それを考慮しても農作業は過酷です。強い日差しの中で運転し続けること、農作業中の振動、砂塵や農薬といった健康への影響があります。ロボットを活用することで、このような過酷な環境で作業をする必要がなくなり、人間が健康でいられると考えています。
他にも、農業は運搬や収穫といった筋力を求められるような重労働が多くあります。筋力には性別や個人差があり、様々なバックグラウンドによって重労働に対して向き不向きがありますが、こうしたきつい作業でも文句を言わずにやってくれるロボットは、多様なバックグラウンドによるギャップを埋めてくれるはずです。
このように、SDGsの観点から鑑みても、ロボットを使うことのメリットが多くあります。

研究について語る森田さん

ロボットトラクターは進化途中!? - 研究で目指すミライ- 

しかし、現在普及しているロボットトラクターは、自動で走行や作業が可能ですが、人間が圃場内で監視を行っていなければならないという制約があります。自動車の自動運転レベルのように、農業機械の自動化に関しても、自動化安全レベルというものがあり、先述した現行のロボットトラクターは
レベル2というものになります。

これからの開発が期待されるレベル3の自動走行は、目視を必要としない遠隔監視下での自動走行や作業、離れた場所に存在している農地を移動する圃場間移動といった機能を目指しています。レベル3の農業機械の実現にあたって、遠隔からの監視というシステム体系上、人間は現地にいないことが想定されます。
しかし、農業環境は複雑であるため、不測の事態が発生しやすいです。その際に農作業を継続するために、人がその都度現地まで移動して調整や意思決定を行うことは非効率です。

ロボットトラクターの更なる進化に挑む - 森田さんの挑戦 -

こうした課題を解決するために、操作者が遠隔からロボット農機を操作できる遠隔操作システムを開発し、自動走行可能なロボットトラクターと組み合わせました。(以下は実際に運転を行っている様子です)

遠隔操作機能が拡張されることで、ロボットトラクターの可用性は劇的に向上することが見込まれます。防風林や車庫の壁・屋根に阻まれて、GNSSの情報が取得できない際の意思決定、自動走行の経路を作成する際の事前運転、人間が運転しなければならない障害物を認識した後の安全な回避行動など、ロボットの意思決定だけでは難しいシチュエーションにおいて、人間が少量介入し、お互いを補い合う協調を実現することで、ロバストなシステムとなることが見込まれています。

イベント参加は発見の連続!! - 参加を振り返って -

実際にイベントに参加することで、自動化による農業の効率向上以外にも、健康と福祉・ジェンダーといった側面から、自身の研究の意義を考える
きっかけとなりました。このような新しい視点は、自身の研究の新しいモチベーション、インスピレーションになると強く感じています。
一方で、スマート農業の導入による負の側面も同時に認識することとなりました。例えば、スマート農業技術の導入によって、コンピュータによる複雑な計算を行うことによる消費電力の増加はわかりやすい例です。新しい技術によって、17の目標と相反してしまうような負の側面があることも、目を逸らせてはいけない問題だと考えています。

森田さんの研究成果発表ポスター

完璧は難しい、でも歩みは止めない・・-森田さんのこれから-

現状では、全ての課題を完璧に解決することは難しいかもしれませんが、
こうした技術の両面があることを忘れずに、これからも農業の発展に寄与できるような研究や開発ができればいいなと思っています。 


森田さん、ポスター展示へ参加くださり、ありがとうございました!人間の健康を守ってくれつつ、可能性を広げてくれるロボット。ロボットと人間が共生するミライがすぐそこまで来ている感じがします!

2回に渡ってご紹介した「博士学生が描く、66のミライ」受賞者紹介も、次回の最優秀賞受賞者の中西登志紀さんで終了です。お米、ロボット・・・。最後はどんなミライを描くのか、皆さん、お楽しみに~!


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