夫のモラハラに気づかなかった

家訓に従えていない私が悪いのかも。
離婚する1年前にそう思った。

イヤなことかあれば相手に態度でわからせ、決して言葉にしてはならない!


これが我が家の家訓だったと知ったのは、結婚して10年目にさしかかる時だった。

結婚当初から夫は、気にいらないことがあると、自分が怒っているということを知らせようと、不機嫌な態度で舌打ちし、ため息をつき、睨んだり無視したりした。

私はそれに動揺し、私が何かした?あれのこと?それとも…正解の出ない渦の中で、ただただ疲弊して体調を崩すことが多かった。

夫に聞いても、ギロッと睨むだけで答えなかったり、
「自分で胸に手を当てて考えろ!」
とキレるだけで解決はしない。

夫に、不満や言いたいことがあれば、態度でわからせようしないで言葉で伝えてとお願いした。

人はすぐには変われないので、根気よく繰り返し伝え続けていけばいいと思った。

そして何回も何十回も伝えた。

その日、仕事から帰ってきた夫は不機嫌だった。

気にせずにいると、ため息をつき、ジロッと睨む。

はっ?夫の様子を見て、猛烈に怒りが湧いた。

10年もお願いし続けて、こんなに聞き入れてもらえないもの?

夫に変わってもらおうとしたが、本当は私が変わるべきことだったのかも。

夫のやり方に従ってこなかった私が悪かったんだと思った。

「何度も言いたいことは言葉で伝えてと言ってるよね?でも、これからは私があなたのやり方に合わせる。私もあなたも、お互いの行動で判断していこう。私は今日から、何も話さないから。」

私はそう宣言して、夫と口をきかなくなった。

そんな時、何気なく眺めていたパソコンで、気になる言葉を見つけた。

パートナーへ感情的ではなく、
冷静に自分の要望を伝えても聞き入れてくれない場合は、
モラハラ、もしくはサイコパス
を疑ったほうがいい。

えっ?私の夫は、聞き入れないどころか

怒るけど?

ちょっと待って?どういうこと?
モラハラ?えっ?

ものすごく混乱した。

モラハラという言葉は知っていたけれど、まさか夫がそうだとは思ってもみなかった。完全に他人事だった。

夫がモラハラ加害者かもということは驚きだけど、もっと驚きなのは、私自身が被害者かもしれないということだった。

私は自分の気持ちをちゃんと主張するし、言いなりになんかならない、強い人だと思っていたから。

半信半疑で、とにかく調べまくった。

モラハラとは何か、モラハラチェックリストなどで確認し知っていくと、夫の言動は完全にモラハラだと確信した。

10年も気づけなかったの?!

言うとみんなに驚かれるけれど、私自身もそう思う。

なぜ早くに気づけなかったのかが、とても悔まれた。

私がモラハラに気づくきっかけの言葉に出会ったように、私の経験が必要な人に届き、何かのきっかけになってもらえるなら嬉しい。

そうすれば私の中に蓄積された理不尽な思いも成仏できるかも。

そんな思いで書いてみようと思った。


夫とは職場で知り合った。
私40歳、夫29歳。

2回目のデートで夫は、悲しい不幸話をした。

私は涙を流して同情し、一回り下の夫に対して、守ってあげたいような気持ちになった。

そして、こんな大変な話を私にしてくれるのは信頼されているからだと感じ、一気に惹かれた。

夫はとても優しくて、デートのプランを考えてくれるし、遠出のときは、お弁当を作ってきてくれたりもした。

紫外線が苦手な私が、お店を出る時に急いで手袋をし、カーディガンを羽織ろうとして、夫を待たせると悪いので慌てていると

「ゆっくりでいいよ。いつまでも待つよ。」

と笑顔で言ってくれて、夫といるとすごく安心だった。

そして付き合ったと思ったら、あっという間に入籍した。2か月でのスピード婚だった。

離婚が決まって知ったことだが、この夫の行動は、モラハラ男の特徴そのままだった。

〈モラハラ男 付き合い時の特徴〉
✳深い付き合いではないのに不幸話をする。
✳ものすごく優しい。
✳スピード婚になりがち。

いよいよ幸せな楽しい結婚生活が始まる!
と思いきや、すぐに、おやおや?ということがたくさん起きた。

夫は夫婦は常に一緒に行動するのが当然だと思っていた。

一緒にご飯を食べ、夫がシャワーを浴びたら、その後すぐに続いて私も浴びないといけないし、テレビを一緒に見て、同じタイミングで布団に入って寝なければいけないことになっていた。

単独行動が好きな私は、それまで生活の中にはない経験だったので戸惑った。

結婚って苦しいな。何だか自由じゃないな。

でもそれは、1人で自由に暮らしているのとは違って、お互いに何かしら譲り合って暮らしていくわけだから当然のことだと思い直した。

私の独身時代が長すぎたために、2人での生活が苦しく感じているのかもしれない。

自由にしすぎていた私が悪かったと感じ、じきに慣れていくだろうと思った。

寝る時は1つの敷き布団で寝ていたが、エアコンはなく、冬には窓のカーテンの下からすきま風が入ってきて寒かった。

1人の時は両肩に毛布を押し込んで顔だけ出して寝ていたが、2人で1つの布団だと、夫側の肩から冷気が入ってくる。

じっとしていると暖まってきて眠れそうになるが、夫の寝返りで冷気が入る。また、じっとして寝れそうになると、夫が動く。

その繰り返しで全然寝られない。でも夫に言うのは躊躇した。不機嫌になったらどうしよう。

しばらくガマンしたが、思い切って夫に言うとやはり難色を示した。

「同じ布団だし、掛け布団も一緒。毛布2枚あるんだから、それを1枚ずつ使うだけだよ。」

何度言っても、却下され続けた。

ある時、あまりの寒さに、夜中リビングのソファーへ移動すると、とても暖かく、ぐっすり眠れた。

朝になって夫が
「ここで寝たのか!」
恐い顔で声をかけた。

寒くて移動してきたら、ソファーの背もたれがあって、風が全然来なくて、いつの間にか寝てたと言うと、

「俺がいるのに、ここで寝たのか。寒くさせる俺が悪いんだな…。」
夫は肩を落とし、落ち込んだ様子を見せた。

何だか意味がわからないけれど、どんなに寒くても、ソファで寝てはいけないなんて知らなかった。ガマンすればよかったと、夫を傷つけてしまって申し訳ないと心から反省した。

どうやら夫は「寒い~」と、甘えた感じでくっついて来て欲しかったらしい。

私の性格上、そういうことはできないけれど、もしそうしたとして、夫は朝になって、私のせいで寝不足だとプリプリしないかという不安もある。

正解なんてあるのかな。

冬が終わり、次の冬が来ても
「毛布だけ別々にしたい問題」
は解決せず、結局しぶしぶ許可されたのは3年後だった。

休日はもちろん一緒に外出しなければならない。

食品の買い出しのスーパーへも一緒に行く。

私は果物が好きなのでカゴに入れようとすると

「何考えてるんだ。果物なんて高いよ!」

と戻される。

私が買いたい物はケチをつけられるので
いつもカゴに入れるのは夫。

私はカートを押すだけだった。

大好きな果物を何年も口にできないのは、これまでの人生でなかったことだった。

私には小遣いがなく、必要なものは夫に言って買っていた。

化粧水を買おうとすると「高い!」と言われる。

私だけが使う物は贅沢で、私のワガママだと思っているようだった。

毎回嫌な顔をされるので、とにかく安いものをチビチビ使ったし、自分で化粧水を作ったりもした。

安さ最重視で、これまでのように、私に合うものではないので、だんだん毛穴が目立つようになり、かなり気になったが、どうしようもなかった。

食事も、私は薄味なので、味見をお願いして、夫の味を覚えたかったが夫は応じず、私が作るものでいいと言う。

夫も薄味に慣れてくれれば健康にいいかなと考えていた。

しかし、ケンカになった時に夫が
「それに、メシマズ女だよな!よくもあんなマズい飯が作れるな!」

全く関係のないのに、怒りのついでに言う。

「味見をお願いしてもやってくれないから、このままでいいのかと思っていたよ?」

「味見?俺がそんなのするわけないだろ!プロの料理人は味見なんかしないんだぜ?そんなことも知らないのか!バカか!キミみたいに料理のヘタなやつが何度も味見するんだ!」

プロの料理人は味見をしない?
何情報だろう。

最終的にはオレが優しいから、メシマズ女を嫁にもらっても、ガマンして食べてやってると言いたいらしい。

その後、義母から「ビギナーさん向け」と書かれた、ボロボロの料理本が送られてきた。

夫のルールは私の友人関係にも及んだ。

友だちのいない夫は、私の友だちは自分の友だちと思っているようだった。

友だちから集まりの連絡がきて夫に伝えると、夫も参加する気満々だった。

友だちに気を遣わせたくないので、私1人で参加すると言うと、途端に不機嫌になった。

「本当に1人で参加する気なのか。結婚してるのにおかしいだろ。」

恐かったけど、私だけで参加すると主張した。すると、

「それでいいと思うなら、そうすれば?」
不機嫌に席を立つ夫。

たぶん夫は、こう言えばコントロールでき、私が折れて夫の思い通りにするだろうと、圧力のつもりだったんだと思う。

私はその言葉で
「いいの?じゃ、お言葉に甘えてそうするね。」
わざと明るく返した。

すると、当てが外れた夫は、私だけの参加を許す代わりにと言いたげに、集まりには夫が送迎すると言う。

夫の迎えをお願いすれば、帰る時間も気にしなければならない。

そこで、バスとタクシー使うと言うとお金がもったいないからダメだと言われた。

送迎は、ありがたいのかもしれないけれど、迎えの時間を気にせずに楽しみたかったが、そんな小さな願いは叶えられなかった。

帰る時間に連絡すると言っても
「着いたから待ってる。終わったら連絡して。」
夫の判断で、充分楽しんだだろ?と迎えにくる。

待たせると怒るので、「えつ?もう帰るの?」と言う友だちに泣く泣く別れを告げ、先に席を立つことになる。

最終的には友だちの集まりには参加できなくなった。

飲み代をもらおうとすると、「いくら?」と聞かれ、お釣り持ってくるからと言うと、

「ちょうどの金額を言って。」

と言われる。ちょうどって…。

「お金ないから、ちょうどの金額言ってもらえば銀行から借りてくるから。」

そう言われて心がギューッとなった。専業主婦なのに、遊びに行くために夫にお金を借りさせる私はひどい妻だと思った。泣きそうになり申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

それで参加しないことにしたが、夫に聞かれ、私がお金を稼いでいないという意味で、お金ないからと言うと、

「オレの稼ぎが悪いって言いたいのか?」

と、低いトーンで重く言われるので、つまらないから参加したくないなど、言い訳にも気を遣った。

いつまでたっても窮屈な生活は改善されるどころか、ますますひどくなっていく気がする。

やっぱり私は結婚に向いていない人で、誰とも一緒に暮らせないのかも。

もう少し一人の時間が欲しいと言うと、

「夫婦は常に一緒にいて当然だろう、俺のことが好きじゃないから、イヤだということなのか?」

と怒られる。

上手く伝えられなかった私の伝え方が悪かったんだと思った。

そこで、お互い穏やかな時に
「話し合いをしよう」
と何度か提案した。

お互いの、ここはちょっと改善してもらいたいというところがあれば話し合おうと。

すると夫はそのたびに
「不満なんて全くないよ。」
と言う。

「お互いのイヤなことは話し合って、どこまでは譲れて、ここは譲れないと、すりあわせした方がいいと思うんだけど。ここはこうして欲しいとか、ない?」

私が聞いても夫は、
「うーん、考えても本当にないな。キミと結婚できて幸せだよ。」
と言う。

徐々に話し合っていけばいいか。

そう思っていると、他県で暮らす義母から連絡がきた。
「そっちはお天気とかどう?黄砂とかで、洗濯物干せなかったりする?」

唐突に洗濯物の話しや掃除機をかけるかなど、何の話し?ってことが多い。

義母の質問内容から、私が家事をしないと夫が伝え、それを確認したいのではないかと推測できた。

夫に聞くと
「母親も口が軽いな、言うなと言ったのに!」
と怒りだした。

口止めしていつも私のこと悪く言っていたんだ。

私:「何で私が家事やってないって嘘言うの?」

夫:「本当のことだろ!オレがいつも掃除してて、キミは何もしてないだろ?」

最初、意味がわからなかった。

そういえば夫がたまに、ため息をつきながら不機嫌そうにフローリングワイパーで居間のローテーブルの周りだけを、せかせかと掃除することがあった。それこそ四角い部屋をまーるく。

そしてやっと、それを
「掃除はオレがいつもやってる」
と言っているんだと気づいた。

夫にとって、あれが掃除の全力なのかも。
確かに結婚前の夫の部屋は汚部屋だった。

片付けや掃除ができなくて、見かねた家族が何度か他県からわざわざ片付けに来たと聞いたことがある。

「あのさ、いつもここだけ掃除してるよね。角はやってる?あなたの部屋は?寝室は?キッチン、トイレ、浴室、脱衣所、玄関、棚の上、掃除したことある?」

夫がハッとした。

「排水口は?キッチン、お風呂、洗面台、ここに越してきて半年近くなるけど、汚れてる?」

夫は私が掃除もせず、自分が全てやっていると本気で思っていたようで、そこまで言ってやっと気づいたようだった。

その後、夫は親に訂正したと言っていたが、優しい息子が私をかばって我慢していると思い込んでいたようで

「仕事もして家事もしなくちゃいけないなんて、息子がかわいそう!」

一方的に義母に強く言われた時には、何も言えず、泣くしかなかった。

このことで義両親からは、その先何年も、嫌みを言われ続けた。

でも不思議なのは、これまで息子の汚部屋を、何度も家族総出で片付けてきたはずなのに、結婚したら突然、家事全てを担っていると言い張ったとして、信じられるものなの?親ってそういうもの?

言いたいことがあれば、義母に言わずに私にちゃんと言って欲しいと言うと、夫が声を荒げた。

夫:「オレはいつもガマンしてツラいんだ!
それを家族に言っちゃダメなのか?じゃあオレは友だちもいないし、誰にも言えずに、苦しんでいればいいってことか?」

私:「だから、夫婦のことは夫婦でちゃんと話し合おうって言ってるよ。」

夫:「キミはいつも上から目線だから、キミに本音は言えない!」

私:「お義母さんに言っても、こじれるだけでしょ?実際そうだし。後であなたがいくら訂正したところで、ずっと嫌み言われ続けてるよ?」

夫:「そんなの言いたいやつには、言わせておけばいい!そうじゃないって俺たちがわかっていればいいことだろ!」

私:「いやいや、私の嫁の立場はどうなるのよ?」

夫:「嫁?キミは嫁らしいことなんて、したことないだろ?」

最終的に夫は、
「オレは結婚してから全然安らげないし、
1度も幸せだと感じたことはない!」
と言い放った。

私の心を、これでもかと折れさせようとする夫の話に打ちのめされ、泣くしかできなかった。

夫の革靴を磨いているのを見た夫が、初めて磨いたと茶化すように言うので、これまでも時々やってたと言うと、ピカピカにした翌日、泥まみれにして帰ってきた。

職場で花壇など整備の係らしく、それで汚れたとのこと。

替えの長靴はあるがサイズが合わないからそのまま作業して汚れたらしい。

おかしい。これまでも、その作業はあったはずなのに、こんなに汚れたのは見たことがない。夫は汚れたんだから仕方がないだろ!としか言わない。

でも、これまでは汚さないようにしていたけど、私が靴を磨いてると知った途端、それなら汚れても私がやるから平気だと思ったってことよね?

しかも、1週間後とかなら、まだよかったけど、翌日って。

思いやりのかけらもない夫に腹を立て、もう2度と夫の靴は磨かないと言った。

その後、義両親から「汚れにくい」とタグのついた新しい靴が送られてきた。

原因があって結果があるが、夫は結果だけを義両親に伝える。私が夫に原因を説明すると、

「オレが悪いって言いたいのか!キミは何でもオレのせいにするよな。その性格何とかならんのか!」
とキレる。

あるいは、「オレは最低だな。オレなんか死んだほうがマシだな。」と落ち込んだ様子を見せ、私を萎縮させるように仕向けた。

夫が大好きなゲームは、好きなだけやったらいいし、独身の頃から一人でダイビングに行ってたなら、これまでのように、一人で好きにやればいい。それなのに、

「オレは結婚したら夫婦で一緒にゲームするのが夢だったのに、キミは全然やろうとしないじゃないか!」

「オレは海で一緒に楽しみたいのに、紫外線がどうのって、オレはいつまで待てばいいんだよ!」

結婚前にゲームは好きではないと伝えたし、UVケアの準備中、待つよと優しく言ってくれた、あれはその場限りの言葉だったと知り、ショックだった。

私が毛穴を気にしていると「クレーターみたいだな」と言い、

妊活中にケンカになると
「キミはこんなんだから母親になれないんだよ。」と言う。

不妊治療は経済的に負担が大きいと怒っているので
「普通に妊娠できないから私が悪いんだよね?」
と言うと、

「そうだよ。でも、仕方がないだろ!」
とプリプリし、自然に妊娠できなくて、経済的負担をかけるダメな妻でも、それでも受け入れてやる優しい俺、ということで話をまとめる。

結婚する前に、私は40歳なので、子どもは望めないかもしれないと話し、妊活や、養子の線でも考えていると言うと、夫は了承した。

お金かかるよと言うと、1千万でも2千万でも出すよ、と夫は言っていて安心したのに。

でもそれを言えば、また俺のせいか!と言われるので、黙ったまま、悲しくて、悔しくて、情けなくて泣いた。

常に夫は、私が何に対して気にかけているかを把握し、その時その時の、落ち込みどころを、ピンポイントでついてきた。

夫は私がお風呂に入ると、よく脱衣所を覗いた。

体を拭いていると、少し引き戸を開け、目だけで覗いてたり、時にはシャイニングのようにニヤリと顔だけ出していることもあった。

そのたびにギャー!っと驚き、やめて!と言うが一向にやめない。

お茶目な俺で、かわいいと自分で思っている様子だった。

他にも、足音なく近づいてきて真後ろに立っていたりと、私が驚くことを面白がっていた。

恐すぎるので、脱衣所のカギを閉めて入るようにすると、
「カギまでかけて?そんなに俺のことが信用できない?」

と落胆した様子を見せる。

すると私は、カギを閉めるまでは、やり過ぎだったかもと、申し訳ない気持ちになった。

私は過去に性被害に遭ったことがあり、覗かれるのもそうだし、夫が近づいてきた時、怖いと感じることが何度もあり、思い切って打ち明けた。

すると夫は怒った。
「自分の妻が性被害に遭ったと聞かされた
俺の気持ちは考えないのか?」
そう言って泣き出した。

えっ?そっち?
怒り、嘆き、俺がかわいそうという感じで被害者だった。

私は、少し配慮してもらえたらと思ったが、まさかこんな返しだとは想像もしていなかったので、ショックを通り越し、ただ唖然とした。

夫に言わなければよかったと心底、後悔した。

テレビのことでも、よく怒られた。

私が毎週楽しみにしているテレビドラマが始まる直前に、

「コーヒーでも飲みながら、たまにはゆっくり話ししないか?」

と夫が言ってきた。

「えっ?ドラマもう始まるけど…後でもいい?」

夫には楽しみにしてると伝えてあり、夕食の時も、早く片付けなきゃと言ったのに。

夫:「俺との話しより、テレビが大事か?」

私:「そうじゃなくて週一のドラマの今?
終わってからじやダメなのかなと思って。」

夫:「俺は今話したいんだよ。」

夫が怒る前の不穏な空気。

私:「わかった。じゃあ録画するから
ちょっと待って。」

夫:「あっそう、そこまでしてテレビ見たいの、あー、もういい!わかった。録画しないで、どーぞテレビ見てください!」

そう言って自分の部屋に入り、バン!とドアを閉めた。

これは録画しても、夫と常に一緒の行動なので見る時間はないだろうし、かといってテレビ見てたら、もっと怒られる。

放心状態になり、そのドラマは今後も見るのは諦めた。

ケンカの後など、無理にでも笑って心を落ち着かせようと、バラエティー番組を選んで見ることも多かった。すると

「こんな時に、よく笑っていられるな。」

軽蔑した目で夫に睨まれることで、せっかく上げようとした気持ちが、一気に沈んだ。


逆に、ちゃんと見ていないと怒られることもある。

洋画が始まるが、それを見るつもりがなかった私がチャンネルを変えようすると、まだ見たことないなら、これはいい映画だから絶対見た方がいいと、強く勧めてきた。

一緒に見るのかと思ったら、俺は見たからと、自室でゲームをしている。

予告だけでも爆発したり、たくさん人が死んだりしていて、苦手分野だけど、夫のお勧めを無視して別番組見てたら怒られるだろうし。

でも、きっとツラくなるだろうと感じ、家計簿をつけながらチラチラ見ることにした。

内容はちゃんと入ってきてる。

「どう?面白い?」
様子を見に来た夫は、私を見て、

「こんな良い映画を、真剣に集中して見ないって、どういうことなんだ!」

と、怒った。

えっ?どういうことって、どういうこと?
どう見ようと私の自由じゃないの?

私はHSPだから過敏に反応してツライからこうしてるんだと伝えても、そんな過敏なんて嘘、そんなやついるわけがない!と散々怒鳴られた。

こんなの理不尽すぎる。

離婚前に、相談センターや弁護士さんに話を聞いた。

相談員の方は、私の話をじっくり聞いてくれて言った。

「モラハラと言うと軽く聞こえがちなんですけど、話しからすると、あなたは、経済的虐待と、精神的虐待と、性的虐待を受けていますね。」

虐待…。そう言われて、事の重大さを改めて感じた。

離婚の時、モラ夫は執着して離婚に応じないことが多いようだけど、私は子どもがいなかったことと、夫が勘違いしていたことで、しれっと離婚届けを出すことができた。

離婚届けにサインしてと言うと、夫は私の脅しだと思って、スラスラ書いた。

夫に家はどうするかと聞くと、
「じゃーキミが出てって。」
ニヤニヤしながら言う。

やれるもんならやってみろ、という様子。

やれますけど?
急いで家を探し、引っ越すことになり、出て行く日を伝えると

「離婚届け、出すって言いつつ、本当は出さないつもりなんだろ?」

と夫は言う。

夫は、私が夫のことをとても愛していて、別れられるはずがない、と思い込んでいたようだ。

その大きな勘違いのおかげで、あっと言う間に離婚は成立した。

1人の最高なこと!

でもモラハラは、離婚して終わりではなかった。

そこから後遺症が残るとは思ってもみなかった。

お金を持たない私は、夫が買い置きしてくれるものしかないので、ちゃんとした食事がとれず、塩ご飯と具なし味噌汁や、菓子パン、コンビニスイーツだった。

1か月間、肉が食べられず、お肉が食べたい!と毎日SNSでつぶやいたりしていた。

そのため離婚後は、あれもこれも食べたい!
という欲望が押さえきれず、胃が痛くても食べ続けることを、しばらく繰り返していた。

冷蔵庫を管理されていたため、冷蔵庫を開ける習慣がなく、買った食材をすぐに使わなかったり、欲しいものでも買ってはいけないと、ガマンすることが多かった。

買えるし、買っていいんだと気づいてからは、鬼のように本や服を買いまくった。

日中、夏にエアコンをつけていると夫に
「電気代が高いな。あー、1人の時にもエアコンつけてるからか。」
とジロッと睨まれるので、日中は、大汗かきながら、何度も頭痛や吐き気で起き上がれない状態になりながらも、エアコンは使わなかった。

そのため1人になっても、暑くても、ついガマンしていまい、そうだ!エアコンつけてもいいんだと思い出してスイッチ入れる感じだった。

それが半年くらいは続いた。

モラハラは99%治らないようだ。
1%は、本人が絶対変わりたいという強い意志と、カウンセリングなどを継続して受けることで達成できるとのこと。

それを知ってもなお、半信半疑の頃は、夫はその1%に入るのではないかと信じたかった。

私に限らず、そう思うモラ夫の妻は少なくないらしい。

夫婦生活が何だか息苦しいと感じたら、疑いの目を持って、ガマンし続けるようなことはやめ、自分を大事にしてほしいと当時の私にも、現在進行形の方にも強く言いたい。

離婚後すぐは「自由ってサイコー!幸せー!」と大声で叫びたいほどの多幸感があった。

3年半くらい経った今は、じんわりとした平穏な日々で、心が乱れず安定した幸せを、優しく抱きしめているような感じで過ごしている。

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