【読書メモ】熱海の奇跡 市来広一朗著
熱海の宿泊客数がV時回復した理由は?
民間主導のまちづくり。著者が主導するNPO法人が中心となり街の中心地をリノベーションまちづくりによって再生したから。
熱海はどのような状況におかれているのか?
日本の社会問題の先進地域。人口減少、高齢化率、空き家率に加え、生活保護率の高さや出生率の低さ、未婚率の高さ、四〇代の死亡率についても、熱海は静岡県内で一位、二位を争う状況。
全国の温泉地域はどこも同じような状況。
なぜ全国の温泉地域は同じ状況で衰退する一方なのか?
宿泊施設ではなく、まちそのものの魅力が観光の目的となっているにも関わらず、サービスの在り方が転換できず、需要を掴むことができていないから。
著者はなぜ熱海の再生に取り組んだのか?
自身のアイデンティティが熱海にあることを強く感じており、外資コンサルで社会人としてキャリアを歩む中でも忘れられず、一新塾に通学する等具体的なアクションを起こす中で決意を固めていった。
熱海の優先課題は何だと著者は認識したのか?
地元の人が地元にネガティヴなイメージを持っていること。なぜなら地元の人が地元について知らないから。
それに対して著者は何をしたのか?
観光情報ではなく地元の情報を流すwebメディア
地元の人向けの農業体験イベント
地元の人が地元を楽しむツアー「オンたま」→地域の意識改革には奏効したものの収益が出ず持続可能性に課題
不動産オーナーのまちづくり意識を変えるためのエリア一体型ファシリティマネジメント事業
現代版家守事業で熱海銀座の空き店舗をリノベしてカフェ出店→熱海銀座で近隣のリノベ等も増えたが赤字続きで閉店。サブリースに転換。
旅と住むのグラデーションのゲストハウス→泊食分離で近隣飲食店とwinwin
道路という公共空間を人が過ごす場所にし、熱海で新たに商売をする人を支援するため、熱海銀座を2週間に一回歩行者天国にするマルシェイベントを開催。出店基準は①自分で作るものでマージンがあること(転売ではない)、②熱海での将来の出店が視野に入ること、③趣味ではないこと
起業支援のためインキュベーション施設を新たに建てるのではなく、既存の民間ビルの一部を用いたコワーキングスペースnaedocoを設置
住宅市場が二極化していることから、若者が住めるシェアハウスを企画
どのようなコンセプトでまちづくりを行なってきたのか?
自ら仕事や暮らしをつくる、クリエイティブな30代に選ばれるまち。30代が変わることで、他の世代に波及すると考えた。
従来の男性目線のまちづくりではなく、生活を楽しむことに貪欲な女性の目線を重視。
宿泊、オフィス、居住等日常的に滞在できるまちづくり。
今後はどのような展開を目指しているのか?
エリアを拡大するのではなく、熱海銀座にエリアを絞り込み成功させる
示唆
試行錯誤のうえリノベーションまちづくりに辿り着き熱海の再生に取り組む筆者の姿は、地域再生を志す人達のロールモデルの一つだと思う。
参考にするうえでは単に真似すればいいのではなく、しっかりと各地域で儲ける宿泊・飲食を営むセンスある経営者がこうした取組みを資金とノウハウでパトロナイズする動きが出てくると、まちとして加速度的に再生が進むのだと思う。