次わかんない!
駅のトイレに入るとき、自動アナウンスが聞こえた。
「このトイレは滝のおトイレです」
普段あまり出歩かないので、そんなトイレがいつの間にできたんだろうと思ったが、実に爽やかなネーミングである。
たぶん滝が設えてあるんだろう。
鹿威しもあるのかもしれない。
だが、流すのはもちろんトイレの排水だろう。
私が出したものが、鹿威しを、コトッ、コトッと鳴らすのはシュールすぎる。
まさか塊の方も、どんぶらこっこと流れてくるんじゃないだろうな。
そんな妄想をしながら、トイレを見まわしたが、どこにもそんな設えはなく、ごく普通のトイレだった。
トイレを出るとき、もう一度自動アナウンスが聞こえた。
「このトイレは多機能トイレです」
なるほど・・・
自動アナウンスは合成音声だから、そんな風に聴こえたのかもしれない。
合成音声はボカロにも使われているが、主な用途はたぶん人件費削減のための自動アナウンスなのだろう。そういえば電車の車内アナウンスも、合成音声風の声が使われている。
少し前は声の録音風だった。それより前は車掌がいちいちアナウンスをしていた。
自動アナウンスには、上のような誤解がありうるけれども、かと言って生身の人間のアナウンスでも誤解が生じないわけではない。
家内が通勤にJR根岸線を利用し始めた頃に、家内から聞いた話だ。
電車の車掌が突然「次わかんない~!」とアナウンスを始めたという。
「何とまた、投げやりな! 車掌さん、一体どうしちゃったんだろう?」
だが、まわりの乗客は驚いている風もない。
やがて電車が駅の構内に入ると駅名が見えて、疑問が氷解したという。
次の駅は関内だった。
言葉には二通り以上に解釈できる場合がある。単語では同音異義と言うが、文になると掛け言葉とかダブル・ミーニングと呼ばれるようだ。言葉の持つ性質の一つだ。
この性質は誤解も生じやすいが、利点もある。
私はしばしばダジャレを使うが、それは聞かされる方はともかく、私にとっては大きな利点である。
この記事も、まさにそれなんですけどね。^^