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『Lemon/米津玄師』のMVはなぜ正方形なのか

このマガジンでは僕がデザイナーとして活動してきた中で、得られた知識、気づいた事、また、「この考え方はデザインだけでなくいろんな事に応用できるな」と思ったことを書いていくマガジンです。『デザイン』って人間が作るもの全てに当てはまるものなので本当にキリがないです。そしてその一つ一つに意図があり、設計された経緯があります。それは人類の財産だと思っているので僕としても蓄積しときたいし、いろんな人に伝えられたらなと思ってます。なので正直自分の備忘録のためにも書いているので、一意見として参考にしていただければありがたいです。それでは早速、今回は米津玄師さんの大ヒット曲『Lemon』のMVについてです。

正方形のミュージックビデオ

『Lemon』は当時のTBSで放送されていた『アンナチュラル』の公式曲として使われていました。ドラマの影響もあったのかこの曲めちゃくちゃバズって、今ではMVが4億回以上再生されているバケモノ曲です。カラオケ行ったときに歌うんですけど、キーが完全に追いつかなくてただ恥を晒して終わります。

このMV最初見たときに「かっこいいけど、なんで正方形なんだ?」って思いませんでしたか?レモンと正方形ってなんか関係あるっけ?とかインスタグラムの影響?(これは半分当たってた)とか平凡な推測を繰り返していたのですが、このMVの監督である山田智和さんのインタビュー記事でその理由が判明しました。

正方形の理由は3つあります。まずInstagramの影響です。今若い人たちが一番目にしているアスペクト比は1:1です。Instagramにおいては写真も動画も大体1:1で表現されています。普段目にしている比率に寄せることで観る方もこの映像に対して気持ちを寄り添わせることができるし、1:1によって画角の面積が減ることで余計なものが映りづらくなり、被写体の感情がより伝わりやすくなります。
Instagramでライブ配信をする芸能人はテレビやYoutubeで観るより、親近感を感じないでしょうか。スマホのインカメ特有の画質というのもありますが、やはり縦画面で余計なものが写っていないからだと思います。

2つ目の理由は「デバイスの形関係なく、印象を揃える為」。いま世間の人が1番使ってるデバイスはスマートフォンだと思います。スマートフォンで何か動画を観るといっても縦で観る人もいれば、横にして観る人もいる。他にはパソコンで見る人、タブレットで見る人様々です。昔はブラウン管で映ることを想定していればいいだけでしたが、本当に今はデバイスの種類や鑑賞方法が細かく分かれていて、一つの動画の印象を揃えることが大変です。

印象を揃えるとは、スマホの縦横のように向きを変えると、横長の比率の動画だと面積が大きく変わってしまうので、その面積差をできるだけ少なくするということです。正方形は縦にしても横にしても1:1の正方形なので、面積の変化の差が少なくて済みます。


「普遍」は色褪せない

最後の理由は、この先デバイスが進化して例えば極端に細長くなったとしても、前の話と同じで印象差が少なくて済む。言い換えれば時代の耐久性が上がる、錆びないということです。昔のテレビの映像が地上デジタルで流れるとき、左右に黒い余白が入っていることがあると思います。あれが入ると懐かしいなぁーと思う反面、時代を感じてしまうことになると思います。「あ、これは古い映像なんだ」という印象を受けます。アーティストにとっては音楽に集中してほしいのに、時代の古さを感じてしまわれるのは意図していないことかもしれないので、時代を感じさせない方法として正方形にするのはもしかしたら主流になるかもしれません。

ちなみにこの考え方は応用できます。
例えば不動産。マンションを購入したとして、将来的に売却することを考えているとします。その際に売れやすいのはオーソドックスな間取りの物件らしいです。間取りにも流行り廃りがあるらしく、そのとき流行っているおしゃれな間取りの物件でも10年後には生活スタイルが時代的に変わり、誰からも求められない物件になる可能性があります。なので普遍的な地味な間取りを買った方が無難で売れやすいのです。まさに正方形にして時代の変化に左右されない価値を保つことと一緒だと思います。
奇抜な見た目、形はその時代のアイコンとして語り継がれるというメリットはもちろんあります。それが目的ならそれでいいと思いますが、長期的なスパンで求められるものを作るのであれば変なことはしない方がいいと思います。

まぁでもMVを作る際にあからさまに正方形にすると「Lemon参考にしたなぁー」と余計な先入観を持たれる可能性もあるので、他のメディアでしれっーとやるのが良いんじゃないでしょうか。

今回は以上です !





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