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台湾の我が家のキッチン事情とおもてなし
台北の我が家のキッチンは狭い。
過去に住んできたどの家よりも狭く、日当たりが悪い。
エクアドルに住んでいた頃の家のキッチンはとても広かった。日当たりも良く、裏庭に面したキッチン窓からはプール沿いに寝そべる愛犬や、暖を求めてやってきた低温動物のイグアナが塀の上で日向ぼっこしている姿をながめることが日常だった。
自宅で弁当屋をする傍ら、プラントベース(ビーガン)料理のプロコースも受講していたので、課題のレシピをこなすためにキッチンで過ごす時間が長かった。料理の効率を上げるために、高性能のブレンダーや主にデザート類を作るスタンドミキサーなどなど様々な調理器具を取り揃えた。
まさにキッチンは私のオフィスであり作業場でもあった。
ダイニングも広かったので、たまに近所の人や夫の職場の同僚を呼んでおもてなしをすることもあった。
ところが台湾のキッチンは、コンロもシンクも壁に面した「I型」と言われる縦に細い窮屈な配置で、たたみ3畳くらいの大きさ。窓はなく、日当たりの悪いベランダに繋がるドアがあるのみ。そんな狭いキッチンの中には揃えた調理器具がとこと狭しと並んでいる。
気分の上がらないキッチンと台湾の外食文化もあって、すっかり料理をする頻度が減ってしまい、「人を招いておもてなし」なんてとんでもないと思っていたけれど、同じマンションに住む夫の同僚からディナーのお誘いを受け、そこで「はっ」とするような経験をした。
料理を振る舞ってくれたのは、フロリダにある高級レストランのシェフである、夫の同僚のお父さん。旧正月の時期にアメリカから台湾を訪れていて、同じマンションに住む息子の友人たちにディナーを振る舞いたいとのことだった。
手土産のワインを持って訪問すると、招待客6人分のテーブルはすでに綺麗にセッティングされていた。フランス人のお父さんは物腰も柔らかく、ゆったりとした雰囲気でお迎えしてくれた。
まずはスパークリングワインを飲み、レバーとサラミのカナッペを食べながら会話を楽しむ。自己紹介と近況を交えた会話を楽しんだあと、お父さんがゆっくりと席を立って夕食の準備をし始めた。そこにはあくせくとした雰囲気は微塵も感じられない。「準備ができたよ」と言われてテーブルに着くと、これまた優雅な動きで美しいプレゼンテーションの料理をサーブしてくれた。
台湾で安くて早いものを買おうとすると、大体が台湾料理になる。そして皆なかなか料理をしない。そこで、お父さんは普段食べることの少ない、洋食をご馳走したかったとのことだった。
白身の魚にオイルとみじん切りにされたカラフルな野菜の旨みが織りなす繊細なソースの魚料理と、しっとりとした鶏胸肉に程よい口当たりのしつこすぎないクリームソースがかかった肉料理。
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カールした薄切りレモンと対角線にあるトマトにキュンとした。
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あまりにも洗練されて美味しい料理だったので、皆、無意識に「味わいたい」という気持ちになるのか、口数が少なくなった。料理とともにワインが進んでくると、徐々に饒舌になりおいしさを賞賛しつつ、「旧正月中で多くの店が閉まっている中、どうやって食材を調達したの?」とか高級レストランの仕事のことや、アレルギーのお客さんにどのような対応をするのかとか、政治の話などに花を咲かせた。
その間もお父さんはそっと席を立ち、デザートを準備してサーブしてくれたり、私たちの会話に加わりつつ、おもてなしを完璧にこなしていた。
その様子を見ながら、「キッチンが狭いから、おもてなしができないなんて言い訳だ。同じマンションで同じレイアウトのキッチンでこんな優雅に料理とおもてなしができるなんてすごい」と思い、お父さんを尊敬の念で見ていた。
お父さんの立ち振る舞いに比べると、エクアドルでやっていた私のおもてなしなど、忙しい屋台のようだった。(実際、焼き鳥とか出してたし)
外食文化の台湾では、キッチンのない家も珍しくないと聞く。そう考えるとせっかく備え付けられたキッチンを使わないのはもったいない!「キッチンが狭い。」とぼやくのはやめ、まずは夫への食事レベルを少し上げるように心がけよう。
あらゆる場面でゆったりと、家でおもてなしができるようになるのが目標。
ということで、今から食材の買い出しに行ってまいります。