
フライ版サーバルちゃんが野球ボールを投げたら時速何km/h出るのか
300kgの岩を16m先まで投げ飛ばせるサーバルちゃんが野球ボールを投げた場合に時速何キロ出せるかを推定する。
※このnoteは、2020年11月1日にニコニコ動画へ投稿した動画の内容を少々コンパクトにした上でテキストベースに起こしたものである。内容はニコ動に投稿したものと同等です。また、現時点では一部の内容は省略しております。今後も本文は適宜修正していく予定です。
※あくまで空想科学的な話だと思って見ていただけると幸いです。
※音量注意
I. 動機
けものフレンズは、サンドスターという謎物質と動物が結合することで生まれたフレンズという少女の姿で擬人化された動物達が主役となるコンテンツである。これまでに漫画、テレビアニメ、およびスマホアプリ等で展開されてきた。その中のフライ著の漫画版「けものフレンズ」にて、次のような描写がある。
フレンズの身体能力を測る体力測定に参加したサーバルキャットのフレンズ(以下、サーバルちゃんと略記する)が、砲丸投げならぬ岩石投げに挑戦しようとしていた。岩石は300kgあり、グランドピアノほどの重さがある。サーバルちゃんは軽々と両手で岩石を持ち上げては投げ飛ばした。結果、距離として16mという記録となった。グランドピアノを16m飛ばすのは普通では無いがジャパリパークでならさほど不思議では無いのだろう。
この時、このサーバルちゃんが野球ボールを投げたらどの程度速度が出るのだろうとふと思った。そこで、力学の知識を利用して、サーバルちゃんが野球ボールを投げる時に300kgの岩石を16m飛ばせるだけのエネルギーを与えた場合、どのくらいの速度が出るのかを算出してみる。
II. 方法
まず、岩石に重力のみが働く場合の運動方程式を解くことで、サーバルちゃんが水平方向に岩石を投げ出した時の初速度を求める。この速度から岩石に与えたエネルギーを求め、このエネルギーと同等のエネルギーを野球ボールに与えることとして、球速を算出する。
III. 岩石に与えたエネルギー

サーバルちゃんが300kgの岩石を投げ出す時に、投げ出された直後の岩石の水平方向の初速度を求めることとする。ここで、サーバルちゃんは両手を上げた状態で岩石を水平方向に投げ飛ばしたとする。さらに、サーバルちゃんが万歳した状態での足から手までの高さを$${h = 1.76}$$[m]とする(※詳細は動画のAppendix Aで説明している)。

質量$${M}$$(=300[kg])の岩石を水平方向に投げ出したとき、岩石の位置$${\bm{r}=(x,y)}$$と投げた後の時刻$${t}$$の関係を運動方程式から導出する。岩石に加わる外力を$${\bm{F}}$$とする。この時、岩石の運動方程式は下記で与えられる。
$$
\begin{align}
M \cfrac{d^2 \bm{r}}{dt^2} = \bm{F} \notag
\end{align}
$$
投げ飛ばされた岩石には重力しか掛からないとすると、岩石に加わる外力$${\bm{F}}$$は下記のように表せる。
$$
\begin{align}
\bm{F} = ( F_x , F_y) = (0, -Mg) \notag
\end{align}
$$
ここで、鉛直上向き方向を正とする。また、$${g}$$(=9.81[m/s^2])は重力加速度である。水平方向、および鉛直方向それぞれの方向に関する岩石の運動方程式は下記となる。
●水平方向の運動方程式
$$
\begin{align}
M\cfrac{d^2 x}{dt^2} = 0 \notag
\end{align}
$$
●鉛直方向の運動方程式
$$
\begin{align}
M \cfrac{d^2 y}{dt^2} = -Mg \notag
\end{align}
$$
この2つの方程式は$${t=0}$$における初期条件、つまり投げ飛ばされる時の状況を指定することで解くことができる。解くためには下記2つの初期条件を与える。
●岩石が投げ飛ばされる位置
$$
\begin{align}
\bm{r}_0 = (x(0), y(0) ) = (0, h)\notag
\end{align}
$$
●岩石が投げ飛ばされる速度
$$
\begin{align}
\bm{v}_0 = (v_x (0) , v_y (0)) = (v_0 ,0) \notag
\end{align}
$$
上記を前提として運動方程式を解いていく。まず水平方向の運動方程式を解く。両辺を積分すると下記のようになる。
$$
\begin{align}
&{\rm (left\ hand\ side)} = \int^t_0 \cfrac{d^2 x}{dt^2} dt = \left[ \frac{dx(t)}{dt} \right]^t_0 = \frac{dx(t)}{dt} - \frac{dx(0)}{dt} = \frac{dx(t)}{dt} - v_x (0) \notag \\
&{\rm (right\ hand\ side)} = \int^t_0 0 dt = 0 \notag
\end{align}
$$
これをもう一度積分すると左辺は下記のようになる。
$$
\begin{align}
{\rm (left\ hand\ side)} = \int^t_0 \left( \frac{dx(t)}{dt} - v_x(0) \right) dt = \left[ x(t) -v_x (0) t \right]^t_0 = x(t) - v_x (0) t - x(0)\notag
\end{align}
$$
となるので、初期条件を代入して整理すると岩石の$${x}$$座標は下記のようになる。
$$
\begin{align}
x(t) = v_0 t \notag
\end{align}
$$
いわゆる等速直線運動の式が得られた。次に鉛直方向の運動方程式を解く。同様に両辺を積分すると下記のようになる。
$$
\begin{align}
&{\rm (left\ hand\ side)} = \int^t_0 \cfrac{d^2 y}{dt^2} dt = \left[ \frac{dy(t)}{dt} \right]^t_0 = \frac{dy(t)}{dt} - \frac{dy(0)}{dt} = \frac{dy(t)}{dt} - v_y (0) \notag \\
&{\rm (right\ hand\ side)} = \int^t_0 (-g) dt = -\left[ gt \right]^t_0 = -gt \notag
\end{align}
$$
さらに積分を行えば下記のようになる。
$$
\begin{align}
&{\rm (left\ hand\ side)} = \int^t_0 \left( \cfrac{d y}{dt} - v_y(0) \right) dt = \left[ y(t) - v_y(0) t \right]^t_0 = y(t) - v_y (0) t - y(0) \notag \\
&{\rm (right\ hand\ side)} = -\int^t_0 gt dt = -\left[ \frac{1}{2}gt^2 \right]^t_0 = -\frac{1}{2}gt^2 \notag
\end{align}
$$
この式に初期条件を代入すれば、岩石の$${y}$$座標における式が得られる。
$$
\begin{align}
y(t) = - \cfrac{1}{2} gt^2 + h \notag
\end{align}
$$

この岩石の軌道を表す式を用いて、初速度$${v_0}$$を求める。まず、岩石が投げ出されて着地するまでの時間を$${T}$$とし、投げ出した距離から着地地点までの距離を$${l}$$とする。時刻$${T}$$では岩石は着地、つまり$${y(T)=0}$$であるので、このことを$${y}$$の式に適用すると次式が得られる。
$$
\begin{align}
T = \sqrt{ \cfrac{2h}{g}} \notag
\end{align}
$$
さらに、時刻$${T}$$においては、岩石は距離$${l}$$の地点の存在するので($${x(T)=l}$$)、このことを$${x}$$座標の式に適用すれば次式が得られる。
$$
\begin{align}
v_0 = \cfrac{l}{T} = l \sqrt{ \frac{g}{2h}} \notag
\end{align}
$$
よって、岩石の初速度が分かったので、岩石が投げ出されるときサーバルちゃんから与えられたエネルギー$${E}$$は運動エネルギーの式から下記のようになる。
$$
\begin{align}
E = \cfrac{1}{2} M v^2_0 = \cfrac{Mgl^2}{4h} \notag
\end{align}
$$
IV. サーバルちゃんの球速
サーバルちゃんが岩石に与えたエネルギーが分かったので、これと同じエネルギーを野球ボールに与えた場合を考える。野球ボールの質量を$${m}$$、投げ出される野球ボールの速度を$${u}$$とする。過不足なく野球ボールに先ほどのエネルギーが与えられるとすると、下記が成立する。
$$
\begin{align}
E = \cfrac{1}{2} m u^2 \notag
\end{align}
$$
この式より、野球ボールの速度$${u}$$が次式のように得られる。
$$
\begin{align}
u = \sqrt{ \cfrac{2E}{m} } = l \sqrt{ \frac{Mg}{2mh}} \notag
\end{align}
$$
以上より、サーバルちゃんが300kgの岩石を16m先まで投げ飛ばす時と同じ状況で野球ボールを投げた時の球速が、上記の球速の式から求まる。式に代入する数値を下記にまとめておく。ただし、野球ボールの質量に関しては、サイズ.COMより141.7 ~ 148.8[g]であるので、最小値と最大値の平均値を採用することとした。
表.1 パラメータ一覧
$$
\begin{array}{l:c:c:c} \hline
パラメータ名 & 記号 & 数値 & 単位\\ \hline
重力加速度 & g & 9.81 & {\rm m/s^2} \\
岩石の飛距離 & l & 16 & {\rm m} \\
岩石の質量 & M & 300 & {\rm kg} \\
野球ボールの質量 & m & 0.145 & {\rm kg} \\
岩石が射出される高さ & h & 1.76 & {\rm m} \\ \hline
\end{array}
$$
よって、表.1のパラメータを代入することでサーバルちゃんの球速は、
$$
\begin{align}
u = 1215 {\rm [m/s]} = 4374 {\rm [km/h]} \notag
\end{align}
$$
となり、サーバルちゃんの球速は約マッハ3.5というとんでもない速さで投球できることがわかった。やっぱりフレンズはぶっ飛んでますね。

※投手は白い線(投手板)に触れていないとボークになるとニコ動で御指摘いただきました。
ご教示ありがとうございました。

※描くのに結構苦労した覚えがある

※実際にこんな速さで投げたら空気抵抗による摩擦で炎上しそうであるが…

※戦闘機並みの速さで突っ込んでくるので兵器みたいなものですね…
※Appendix(=補足) A, Appendix Bは省略する。動画に内容は載っています。
Appendix C 岩石の射出角度が水平でない場合
ニコニコ動画で、「遠くに投げ飛ばすなら水平投射ではなく斜方投射で考えるのが適切ではないか」という旨のご指摘を頂いておりました。確かに仰る通りで、岩石の飛距離が大きければ身体能力の高さを示すことができるので、飛距離を大きくするように投げるはずだと思います(なんで気づかなかったのか…)。ご指摘ありがとうございました。そこで、岩石の飛距離を最大にするような射出角で斜方投射した場合を考える。
飛距離を最大にするような射出角$${\theta_{\rm max}}$$は、飛距離$${l}$$を角度の関数$${l(\theta)}$$として表し、この関数を$${\theta}$$で微分した値を0にするものである。
$$
\begin{align}
\left. \frac{ d l (\theta)}{d \theta} \right|_{\theta = \theta_{\rm max}} = 0 \notag
\end{align}
$$
まずは、飛距離を射出角の関数として表す必要がある。岩石の射出角を$${\theta}$$とした時、水平方向、及び鉛直方向の初速度は下記のようになる。
$$
\begin{align}
\bm{v}_0 = (v_0 \cos \theta, v_0 \sin \theta) \notag
\end{align}
$$
この場合の岩石の時刻$${t}$$における位置$${(x,y)}$$は、運動方程式から下記のように導出される。
$$
\begin{align}
&x(t) = v_0 t \cos \theta \notag \\
&y(t) = -\frac{1}{2} g t^2 + v_0 t \sin \theta + h \notag
\end{align}
$$
岩石が射出後の時刻$${t=T}$$で$${x=l}$$[m]の地点で着地するならば、上記の2式から下記が得られる。
$$
\begin{align}
&l = v_0 T \cos \theta \notag \\
&0 = -\frac{1}{2} g T^2 + v_0 T \sin \theta + h \notag
\end{align}
$$
$${T}$$に関する二次方程式は解の公式を利用して下記のような解を得ることができる。
$$
\begin{align}
T = \frac{v_0 \sin \theta + \sqrt{ v^2_0 \sin^2 \theta + 2 h g}}{g} \notag
\end{align}
$$
この解を$${l}$$の式に代入することで、下記のように飛距離$${l}$$を射出角$${\theta}$$の関数として表すことができる。
$$
\begin{align}
l (\theta) = \frac{ v^2_0 \cos \theta}{g} \left( \sin \theta + \sqrt{ \sin^2 \theta + \frac{2gh}{v^2_0} } \right) \notag
\end{align}
$$
この式を$${\theta}$$で微分すると、下記のようになる。
$$
\begin{align}
\frac{d l(\theta)}{d\theta} = \frac{v^2_0}{g} \left( 1 + \sqrt{ \frac{2gh}{v^2_0 \sin^2 \theta} } \right) \left[ \frac{1}{\sqrt{ \frac{2gh}{v^2_0 \sin^2 \theta} } } \cos^2 \theta - \sin^2 \theta \right] \notag
\end{align}
$$
飛距離を最大にするような射出角$${\theta_{\rm max}}$$は、$${l}$$を$${\theta}$$で微分したものを0にすることから、下記の方程式を満たすものとして与えられる。
$$
\begin{align}
\frac{v^2_0}{g} \left( 1 + \sqrt{ \frac{2gh}{v^2_0 \sin^2 \theta_{\rm max}} } \right) \left[ \frac{1}{\sqrt{ \frac{2gh}{v^2_0 \sin^2 \theta_{\rm max}} } } \cos^2 \theta_{\rm max} - \sin^2 \theta_{\rm max} \right] = 0 \notag
\end{align}
$$
上式から、$${\sin \theta_{\rm max}}$$に関する二次方程式が得られ、$${\theta_{\rm max}}$$は下記の式を満たすものとして定義される。
$$
\begin{align}
\sin \theta_{\rm max} = \frac{1}{\sqrt{ 2 \left( 1 + \frac{gh}{v^2_0} \right) } }\notag
\end{align}
$$
三角関数の相互関係$${\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1}$$より、$${\cos \theta_{\rm max}}$$は下記のようになる。
$$
\begin{align}
\cos \theta_{\rm max} = \sqrt{ \frac{1 + \frac{2gh}{v^2_0} }{2 + \frac{2gh}{v^2_0} } }\notag
\end{align}
$$
$${\sin \theta_{\rm max}, \cos \theta_{\rm max}}$$の式を飛距離$${l}$$の式に代入すると次式が得られる。
$$
\begin{align}
l = \frac{v^2_0}{g} \sqrt{ 1 + \frac{2gh}{v^2_0} } \notag
\end{align}
$$
この式から、岩石の初速度の大きさ$${v_0 (= | \bm{v}_0|)}$$が下記のように求まる。
$$
\begin{align}
v_0 = \sqrt{ g( -h + \sqrt{ h^2 + l^2} ) } \notag
\end{align}
$$
よって、サーバルちゃんが斜方投射の場合で与えたエネルギーを野球ボールに与えた場合の球速$${u}$$は次式のように求まる。
$$
\begin{align}
&\frac{1}{2} M |\bm{v}_0|^2 = \frac{1}{2} m u^2 \notag \\
&\Rightarrow u = \sqrt{ \frac{ Mg( -h + \sqrt{ h^2 + l^2} ) }{m} } \notag
\end{align}
$$
表.1のパラメータを代入すると、$${u = 1942 {\rm [km/h]}}$$となり、マッハ1.6程度になることがわかった。岩石の滞空時間が水平に投げるよりは長くなるので、同じ飛距離を飛ぶのであればその分遅くなる必要があるので、水平の時より球速が遅くなるのであろう。だとしても球速が音速を超えてるのでサーバルちゃんはやばいです。最後に、$${v_0}$$が求まったので$${\sin \theta_{\rm max}}$$の式から射出角を求めることができて、関数電卓を使って計算すると$${\theta_{\rm max} \simeq 42 ^\circ}$$となった。因みに、岩石が地面から射出された場合、つまり$${h = 0}$$の時は、$${\theta_{\rm max} = 45 ^\circ}$$である。
Appendix D サーバルちゃんが岩石に与えた力
岩石が速度$${v_0}$$で射出されるという前提で考えたが、サーバルちゃんに力を加えられた結果として初速度$${v_0}$$を得たと考えることもできる。ニコ動のコメントでも「力積で議論できないか?」といったコメントを頂いていたので、力積で考えてみる。
力積$${\bm{I}}$$は物体に加わる力$${\bm{F}}$$と、その力が加わる時間$${\Delta t}$$の積で表される。
$$
\begin{align}
\bm{I} = \bm{F} \Delta t \notag
\end{align}
$$
この力積は、運動方程式から運動量の変化量と同等であることも分かる。
$$
\begin{align}
&M \frac{d \bm{v}(t)}{dt} = \bm{F} \notag \\
&\Rightarrow \int^{t_1}_{t_0} M \frac{d \bm{v}(t)}{dt} dt = \int^{t_1}_{t_0} \bm{F} dt \notag \\
&\Rightarrow M \left[ \bm{v}(t_1) - \bm{v} (t_0) \right] = \bm{F} (t_1 - t_0 ) \notag \\
& \Rightarrow \bm{p}(t_1) - \bm{p} (t_0) = \bm{F} (t_1 - t_0 ) \notag
\end{align}
$$
ただし、物体に作用する力$${\bm{F}}$$は時間に依存せず一定であるとした。そうすると、この式からサーバルちゃんが岩石に与えた水平方向の力$${F}$$は下記のように表される。
$$
\begin{align}
F = \frac{M v_0}{\Delta t} \notag \\
\end{align}
$$
しかし、上式からサーバルちゃんが岩石に与えた力$${F}$$を知るには、力を加えた時間$${\Delta t}$$を与える必要がある。ここからは別途検討とする。
Appendix E 空気抵抗を考慮する場合
(※準備中)
Appendix F 岩石が着地後ある距離だけ滑った後に静止していた場合
本文では岩石が投げ出され地面に着地するまでの距離を16mとしたが、水平方向の速度成分は着地直前までは0ではないので、着地後も岩石は運動するはずである。そこで、投げ出された岩石が摩擦係数$${\mu}$$の地面をある距離$${d}$$だけ進んだ後に静止したとし、静止するまでの距離を16mとした場合を考える。
サーバルちゃんに投げで出された直後の岩石の持つエネルギーは、最終的に地面との間で発生する摩擦力により消失する。岩石が地面を滑っているときは、摩擦力は岩石に対して仕事をしている。この仕事$${W}$$は一般に下記で表される。
$$
\begin{align*}
W = \int_C \bm{F} \cdot d\bm{l} \simeq \sum_j \bm{F}_j \cdot {\it \Delta} \bm{l}_j
\end{align*}
$$
雑に言えば、仕事$${W}$$は力$${\bm{F}}$$を岩石に印加しながらどれだけの距離$${d\bm{l}}$$を移動させたかを表す。今の場合、岩石が地面に着地してから距離$${d}$$だけ進むまでの間に摩擦力$${f'}$$が働く(摩擦力が岩石に対して仕事をする)ので、摩擦力のする仕事量$${W}$$は次式で与えられる。
$$
\begin{align*}
W = -\int^d_0 f' dx = -f' d = -\mu N d=-\mu M g d
\end{align*}
$$
ここで、摩擦力は$${f' = \mu N}$$とし、$${N}$$は垂直抗力である。また、符号としてマイナスが付いているのは、岩石が進方向とは逆向きに摩擦力が働いていることに由来するものである。岩石が投げ出されて静止するまでのエネルギーの変化が、摩擦が岩石に対して行った仕事量に等しい(岩石が持っていたエネルギーが別のエネルギー、例えば摩擦熱に変換されることで消失する)ので、このことより下記の式が得られる。
$$
\begin{align*}
&E_{\text{停止後}} - E_{\text{射出直後}} = W \\
&\Rightarrow 0 - \left[ \frac{1}{2}M v^2_0 + Mg h \right] = - \mu M g d \\
&\Rightarrow\frac{1}{2} v^2_0 + gh = \mu g d
\end{align*}
$$
また、岩石の総移動距離$${l = 16}$$[m]は、水平投射により空中を進んだ距離と、地面を滑った距離の和と等しいので下記の関係式が成立する。
$$
\begin{align*}
l = v_0 T + d
\end{align*}
$$
ここで$${T}$$は、本文中で求めた岩石が投げ出されてから地面に着地するまでの時間である。上記2式を組み合わせることで、$${v_0}$$に関する2次方程式を得ることができる。
$$
\begin{align*}
v^2_0 + 2 \mu g T v_0 + 2g(h - l \mu) = 0
\end{align*}
$$
これを解くことで、岩石の初速度$${v_0}$$は次式のように求まる。
$$
\begin{align*}
v_0 = \sqrt{2gh} \left( - \mu + \sqrt{ \mu^2 + \frac{\mu l}{h} -1} \right)
\end{align*}
$$
よって、本文と同じ要領で球速$${u}$$を求めると次式のようになる。
$$
\begin{align*}
u = \sqrt{\frac{2Mgh}{m}} \left( - \mu + \sqrt{ \mu^2 + \frac{\mu l}{h} -1} \right)
\end{align*}
$$
あとは、この式に摩擦係数$${\mu}$$を調べて代入して算出すれば球速が求まるが、どのような値を採用すればいいのかまだ探している段階なので、一旦ここまでとする。(※今後更新予定)