一年前の今日を、鮮明に覚えている
ふと今日の日付が目に入って、はっとした。
ブクガがいなくなってから、今日で一年が過ぎたらしい。
一年前、2021年5月30日の19時。
ワンマンライブ「Solitude HOTEL」を終えたその瞬間に、Maison book girlは削除された。
はっきりとした前触れのない、衝撃的な幕引きだった。
大好きなグループだった。今も、ずっと大好きだ。あの日からもう一年も経ったなんて信じられない。
忘れもしないあの日、私は朝から就職試験を受けていた。
ちょうどその時期、私は、試験準備や講義、実習に追われている就活中の学生だった。収まらないコロナ禍、地方在住という現実、ツアーもワンマンも行けないことは初めから分かっていて、忙しさを理由に、推したちを追いかける手が少し鈍くなっていた頃だった。不穏な更新を続ける公式サイトやインスタも、一見いつも通りだったメンバーのSNSも見てはいたけれど、たくさん取りこぼしがあったはずだ。もっとちゃんと全部見ておけばよかった、と今は思う。
そんな中でも、直前までずっと仲の良い様子を見せていてくれたメンバーのことと、どんどん崩れていく公式サイトの様子は、今もよく覚えている。
その日、試験が終わってから17時のライブ開演までに帰れるかは微妙だった。
最初は、アーカイブがあるはずだから、間に合わなかったらその時は仕方ない、くらいの気持ちでいた。日々の忙しさに手一杯で、心の余裕もまるで無かった。
だけど、その間にも公式のカウントダウンが減っていって、サイトはみるみる原型を留めなくなっていく。演出にしては壮大で、何にしてもブクガならやりかねないとも思って、でもやっぱり何かがあるような気がした。日に日にちゃんとリアルタイムで見たい、見なきゃ、という気持ちは強くなって、試験が終わってから急いで家に帰った。配信ページにアクセスできたのは開演15分前で、胸を撫で下ろしたのをよく覚えている。今思えば、あのときの自分は最良の選択をした。あのライブほどに、リアルタイムで見るべきライブは今後一生ないだろうから。
始まる前はきっと大丈夫だと、不穏な投稿や更新も全てはブクガらしい凝った演出で、きっとまた思いもよらないようなライブが待っているんだと信じて言い聞かせて、だけど心の何処かでは、今までと何かが違うことを感じていた。
最高のブクガを見ることができたライブだった。 Maison book girlとしてこれ以上ない、美しい最後だった、と今は思う。
他のどんなグループよりも唐突で残酷なラストシーンだった。全て終わった後はずいぶん長いこと悲しんだ。けれど、そんな終わりも何処か腑に落ちた。嘘だ、嫌だ、と叫ぶ頭の裏で、一度だけ、やっぱり、と囁く声がした。
全て考えないようにしていたことで、当然、心の準備は全くできていなかった。だけど途切れ途切れにでも、それまでのいろいろな発信を、今までのブクガを見ていたことで、分かっていなかったけれど、分かっていたのかもしれない。
それもこれも、彼女たちの優しい種まきのお陰なんだろう。私が愛していたブクガは、彼女たち自身に、もっともっと愛されていたんだと思う。
一年経っても、まだあの日のことを鮮明に思い出す。
大好きな歌声たち、ステージ上で舞う4つの体、唐突な幕切れとブルースクリーン。配信が終わって、混乱するTwitterのタイムラインに現れる公式サイトのURLと音楽ナタリーの記事。
あの日の姿が最後だった、唯ちゃんは元気にしているだろうか。今日までもこれからもずっと幸せであってほしい。
もちろん、コショも和田ちゃんも葵ちゃんも。
ブクガがどれだけ過去のものになっても、私はブクガを、みんなを、ずっと愛してる。
余談だけれど、ブクガ最後のベストアルバムが発売されてちょうど一年が経った日、私の手元には念願の内定通知が届いた。ブクガが削除された日に受けた試験のものだった。
ブクガが縁を繋いでくれたような気がして、なんだか嬉しかった。
一年経って、引っ越した私の部屋には今日も唯ちゃんのサイン入りポスターが飾られていて、音楽プレイヤーからはブクガが流れている。あの日と同じように。
あの日のBlu-rayだけは、どうしても躊躇してしまって、まだ見ることができていない。だけど今日この後、夜が明ける前に、あの青いパッケージの封を切れたらなと思っている。