見出し画像

第2章_#03_パリはラッシュアワー


さて、1994年12月、パリ、シャルル・ド・ゴール空港に到着。

まずは空港からRER線(郊外とパリ市内を結ぶ鉄道網)に乗ってパリを目指す。初海外の私、旅慣れたB子さんに100%依存の旅だったので、正直、旅の細かいことは何も憶えていない。この時もRERのB線に乗ってどこで乗り換えたのか思い出せない。最終目的地がメトロ4番線のオデオン駅だったので、乗り換えは恐らく、北駅かシャトレ・レアール駅ではないかと想像している。かすかに記憶の片隅にあるのは、RERの改札を出られなかったか、あるいは次のメトロの改札に入れなかったかで、立ち往生したこと。着いて早々これ??・・・とオロオロしていると、B子さん「飛び越えられない?」。「はァ?むむむ無理です!!!」…で...結局、どうなったんだっけ…...すいません、いい加減で...。

憶えていない割にトラウマにはなったようで、以後何度旅を重ねようと、MobilisだのNavigoだのといったパスを持ってるとき以外で、RER線とメトロを乗り継いだことはない。

さて、北駅もしくはシャトレ・レアール駅乗り換えの記憶が正しいとすれば、ここからメトロ4番線への移動も結構緊張したことだろう。多くの路線が集まる駅は必然的に大きいからそのぶん移動距離もある。そして大きな駅というのは概して治安もよくない…と事前に何かで読んでいたので、行き交う人びとがみなスリか引ったくりに見えてビビりまくっていたはずだ。(実は今でも大きな駅を移動するときには全身全霊で周囲を警戒する。)

さてようやく、4番線のホームに到着。ここまでスイスイ辿り着けたのもB子さんもおかげ。パリのメトロは予め終着駅の駅名を知っていないとホームを間違えてしまうから大変なのだ。(今でも予習をしておかないと時々間違う。)

さあ、電車が入ってきた。
そこでまた想定外の展開。

フランスと私-02_03-A

なんと電車が混んでいるのだ。映画で見たメトロはいつもガラガラだったぞ。そう、夕方の時間帯はパリだってそれなりに電車が混む。
パリにもラッシュアワーがあるなんて!これはかなりの衝撃だった。

混んでる電車が嫌いで10時出社の会社にしか勤めたことがないというのに、わざわざパリまで来てこれか。いまの私はおそらく世界で10番目くらいにツイてない旅行者だ。でも乗らない訳にもいかないから、勇気を振り絞る。といってもB子さんの後にくっついて行くだけなんだが...。

しかし、そこでまたビックリ。

ドアにレバーのようなものが付いていて、乗る人はそのレバーを軽く回してドアを開ける仕組みになっているのだ。レバーを握ってエイッ!とドアを開けるんじゃなくて、レバーはスイッチの役割で、当たり前だが動力は電気。さておき、これは何気ないようで勇気を要するアクションだ。この動作がこなれているか否かで、生活者かおのぼりさんか一目瞭然。路線や車両によってはレバーでなくボタンのこともあるが、緊張を強いることに変わりはない。もちろんこのタスクもB子さんに任せる。でも旅が終わるまでに最低1回は自分でレバーをくるりすることもあるのだろうと想像しただけで身震いがした。

ドアが開く。げっ、人がいっぱい。しかし実は「げっ」な存在は我々なのだ。デカいスーツケースとパンパンのバックパックを背負った東洋からの旅人2人が今まさに極狭スペースに割り込んでこようとしているのだから当然だ。「エクスキュゼ・モア…」と一応フランス語で詫びを入れながら乗り込む。バックパックを手に持たず背負ったまま乗った事が悔やまれる。東京では絶対にそんなことしないのに(いや、その前に東京ではバックパックは使わない)。周囲の乗客の「チクショ、迷惑だな」オーラを全身で受け止める。「エクスキュゼ・モア、エクスキュゼ・モア…」心の中で謝り続ける。心の中なら別に日本語でもよかったのだが。笑

日本風に言えば針のムシロみたいな非常に気まずいムードに加えて、メトロの中は暖房&人の熱気で半端なく暑く、冷汗だか脂汗だか分からないけれどとにかく全身に滝のような汗。額につたう一筋の汗も身動きできないから拭くことができない。

「来なきゃよかった、こんなとこ…。」
早くも後悔。駅3つか4つだから10分やそこらのことだったと思うけれど、大袈裟じゃなく1時間くらいに感じた。

で、まぁ、どうにかこうにか、ホテルの最寄り駅オデオンに到着、下車。(ちなみに降りるときもレバーくるりね。)
いやぁ、もう、一生分の旅を終えたくらいにくたくた。初っ端からこれでは、先が思いやられる。
「どうかもう悪い事が起こりませんように…。」そう祈りながら、ヨロヨロとB子さんの後を追って改札を出た。
(注:あくまで旅慣れていない自分の主観で、客観的に見れば「悪い事」はまだ一度も起こっていない。笑)

さあ珍道中の始まりか?旅のつづきはまた次回!À bientôt!

いいなと思ったら応援しよう!