002:納豆定食
朝7時、新宿御苑駅で下車し、思考整理をするために場所探し。いつものタリーズか、気分転換のサンマルクか、変化球のドトールか。悩み歩くこと約5分、目に飛び込んできたのは、ひらがなと漢字の渋い看板「やよい軒」。連日、御苑駅前のタリーズに通い、洒落た空間に気疲れしていたのか、男性だらけの店内に戸惑いながらも、吸い込まれるように初入店。
4ヶ国語に対応しているタッチパネル式の発券機に苦戦しながら、370円(税込)の納豆定食を注文。到着したのは、納豆+味付け海苔+冷奴+白飯、そして、なぜか生卵…
予想外の複雑な組み合わせに、正しい食べ方は何なのかと不安になり、けれど、店員さんに訊くのも申し訳なくて、さりげなく「納豆定食 食べ方」で検索すると、出てくる出てくる十人十色の定食御作法…
・納豆 on 卵かけ御飯
・卵とご飯と納豆を混ぜた上に味付け海苔を乗せ、醤油を垂らしてのりめし風
・納豆をご飯にのせ、納豆全てとご飯を3分の1ほど食べて、3分の2残ったご飯を卵かけ御飯にして味付け海苔で食べる
etc..
検索結果を読んでいると、もう何だか凄くどうでもよくなって「つまり自分の好きなように食べろ」ということなのだと納得し、卵入り納豆ご飯を味付け海苔で頂きました。
朝から定食の食べ方で苦闘し、一仕事を終えた気分で冷めた味噌汁を飲んでいると、初めて目に入る他のお客さんの朝食風景。
そこには、何の戸惑いもなく、慣れた様子で朝食を食べている出勤前のサラリーマンのおじさんや歌舞伎町風情のお兄さんたちがおりました。
もう、その姿のなんと格好良いこと…。なおかつ、他人の正しさや世間体に囚われず、誰にも迷惑をかけることなく、純粋に自分の好きな方法で粛々と欲求を満たしている、その光景のなんと平和的なこと…。
他の人の食べ物を奪ったり、食器を投げたり、騒音を立てたり、そういう人がいないというのは「そうする必要がない充足感」を一人ひとりが持っているからこそなのだと思います。
平和というのは「争わない」ということではなく、利益を得るために争いを起こしたり、誰かを傷つけてでも、もっと豊かになりたいとか、そういった不幸な願望を持つ「寂しい人が生まれない社会」のことを指すべきなんじゃないかと思います。なおかつ、一人ひとりが、他人から見た成功や幸福ではなく、自分の心を満たす「在り方」を追求するということなんじゃないかと。
高尚な表現ではないですが、まさに「自分の好きなように食べなさい」と。でも、人の食べ物にまで手を出すなと。けれど、自分が余分に食べ物を持っていたら、飢えている人に分け与えましょうと。そんな小学生でもわかる暖かい道理が、色んな表層の絡まった糸で見えなくなってしまっている今日。改めて平和を想えば想うほど、出来ることは、まずは自分なりの幸福を追求することからなのだと感じます。
冷めた味噌汁の塩気がやけに沁みた8月15日の朝でした。
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