大法寺・安楽寺〜上田は真田だけじゃない〜
こんにちは!ぽてこです。
長野県上田市。この地名を聞くと、お城や戦国武将好きな方なら真っ先に真田氏が思い浮かぶかもしれません。
ところが実は、長野県内には6件の国宝建築があり、そのうち2件が上田市周辺にあると聞き、南北に長い長野県の東の方へ行ってきました。
今回は、真田氏関連の史跡はかすりもしない、上田国宝建築の旅の記録。
主役は三重塔です。
大法寺
最初は上田市のお隣、青木村の大法寺から。
大法寺は古代東山道の駅寺として建てられたのが始まりとされており、
のどかな里山の中にあります。
季節は秋、彼岸花に囲まれて三重塔は姿を表しました。
その端正な姿の理由は、塔の一段目である初重が広くなっていること。
二層、三層の組物(屋根を支えている部材)が三手先(建物表面から三つ出ている)のに対し、初重は二手先で平面が大きくなっていることで、安定感を感じられるようになっているのだそう。
二層目、三層目の手先は目視できませんでしたが、精巧な技法によって、
バランスの取れた美しさを表現しているのですね。
同様の技法が用いられているのは他に、奈良の興福寺だけ。
この三重塔、大阪・天王寺から大工を迎えて建立されたと伝えられており、当時の大工は東山道を通り、都の最新技術を伝えに遠路はるばる信濃の山奥までやってきたのでしょう。
近寄ってみるとほんのり一部朱色が残っているようにも見えますが、塗りが剥げて木目が出ているのもまた、趣を添えているように感じます。
屋根を支えている垂木は垂直で、日本の建築様式のスタンダード・和様そのもの。蛙股も装飾がなく、全体的に生真面目な印象を受けました。
国宝というと、なんとなく豪華なものをイメージしてしまいますが(宝だけに)そのイメージをいい意味で裏切ってくれる素朴さ。
周辺の里山の風情とも相まって、なんともほっとする佇まいでした。
安楽寺
大法寺から山を越えて上田市に入ると、別所温泉街に出ます。安楽寺はこの温泉街の近くに位置し、周辺には上田電鉄別所温泉駅や北向観音などがあってちょっとした観光地になっています。
境内に入り本堂を抜けると少し鬱蒼とした林に入ります。お地蔵さんを横目に進むと、目の前ににょきっと八角三重塔が現れます。
鎌倉時代末期1290年代には建てられたと言われる、日本最古の禅宗様建築。また、奈良、京都にも八角塔は残っていないため、八角塔としては我が国唯一の遺構なのだそう。その貴重さが、国宝たる所以なんですね。
四重塔に見えるのは、初重に裳階(庇または雨除けのような装飾)がついているから。正面から見ると、まるで鳥が羽を広げて飛び立つ姿のようにも見えます。
扇垂木や詰物、連子窓などの意匠は、禅宗様建築の特徴をよく表しています。波波の連子窓は山梨の清白寺仏殿(国宝)でも見かけましたが、直線よりもリズムが生まれる気がして、個人的に好きな装飾です。
雨に濡れしっとりと湿ったこけら葺きの屋根とともに、静かに堂々と佇んでいました。
まとめ
長野県の国宝建築三重塔編、いかがでしたか?
今回は同じ三重塔でしたが、かたや和様の質実剛健な出立ち、かたや禅宗様のダイナミックで動きのある出立ちと、各様式の特徴をそのままよく表していました。
そのなかで共通して感じられたのは、信州の山奥で700年以上ひっそりと、でも確かにその土地に寄り添って存在してきた趣き。
城郭のような面白さや、戦国武将の一生に思いを馳せるドラマチックさはないけれど、地域の原風景に馴染んでいる気がしました。
ちなみに、長野県内の国宝建築残り4件の分布は長野市、松本市、大町市。こちらも近いうちに訪れたいと思います。(目標!)
★ぽてこ的寄り道スポット★
国宝散策の後のお楽しみはお茶の時間。国宝の余韻に浸りながら、ぜひ立ち寄ってみてほしい地元スポットをご紹介します。
◆「BOOKS &CAFE NABO」https://corporate.valuebooks.jp/nabo/
上田駅から徒歩10分弱。旧北国街道沿いにある、店内一面本に囲まれたブックカフェ。
新旧問わずジャンルレスな本や雑貨、ZINEなども。
居合わせたお客さんそれぞれが思い思いの時間を過ごしていて、街の生活に寄り添っているのが感じられました。
(椅子に腰掛けたら最後、お尻に根が張って動けなくなってしまうので要注意!笑)
本日もお読みいただき、ありがとうございました!
読んでくださった皆さんの、建築と歴史を巡る旅が楽しく充実したものになりますように。