ベーシックインカムってなんだ?
1 はじめに
コロナ禍で再び脚光を浴びているベーシック・インカム(Basic Income:日本語訳は基礎的所得とか収入とか。以下BI:ビーアイ)。
今秋(2021年秋)には、メディアで連日取り沙汰されること間違いなしのバズワード「BI」について、導入賛成派と反対派が何を言い争っているのか。
論点を整理して、来たるべきその時に、一介のコメンテイター並みに議論に加われる知識の予習をしてみたい。
2 議論する発言者の前提とする制度はバラバラ
BIを定義すると
政府から、
①すべての国民へ、
②無条件に、
定期的に、
③最低限の生活を送るために必要な額の現金を、
④支給する
所得保障制度
と整理できる。
低所得者の所得保障が議論される際に、発言者が前提としている制度は、4つの要素で何を選択するかによってバリエーションがあるため、議論を聞いたりインプットするときには、発言者が「何を採用しているのか」を確認することが大切。
4つの要素で分解できれば、発言者の前提としている理想の制度を網羅的に分類できるので、以下にその組み合わせの選択肢をあげておく。
①対象 個人単位か/世帯単位か
②条件 無条件か/就業条件をつけるか/所得制限をするか
③最低限の金額 支給金額をいくらにするか
④給付手段 支給か/税額控除という形にするか
BI導入賛成派も反対派も、低所得者の所得を保障して貧困問題を解決したいという目的は一致している。
また、生活保護の仕組みに課題があるという事実認識は共有されている。
3 BIを生活保護制度との比較で整理
生活保護の問題は、
給付すべきではないのに給付してしまうケース:
a 不正受給
b 賃金所得を得ると給付額が減るため勤労意欲が削がれる点(いわゆる貧困の罠の問題)
逆に、給付すべきなのに給付できないケース:
c 生活保護は恥というスティグマによる申請しない人の存在
d 水際作戦によって相談者に申請をさせない行政側の問題
があり、決定的なのは後者で、捕捉率わずか2割と言われているように、救うベき低所得者層を救えていない実態がある。
収入や所有資産に関わらず、無条件かつ一律に現金を支給するBIならば、
給付のための「申請手続き」も「審査」もないため、申請を躊躇すること(c)も、水際作戦(d)も不正受給(a)も起こらない。
生活保護では、受給者が働いて賃金所得を得るようになると給付額が減額されるため労働意欲を損ねやすい(b)が、BIの場合は、最低限しかもらえず、より良い生活のために働けば働くほど合計所得はちゃんと増える特徴があるため、貧困の罠に対して生活保護より優れた制度といえる。
このように、BIならば現行制度の問題点を一挙に解決してくれるという期待が、2020年、新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に無・低所得者が増えている現状と相まって、BI導入の議論を活性化している。
4 BIのその他のメリット
BI賛成論者があげるメリットは、他にも
・ブラック企業の減少
・暴力的な配偶者からの自由
・育休期間の長期化
・行政の効率化
・起業や自由な開発の増加
・交通事故の減少
・学業成績の向上
・東京一極集中の緩和(地方での生活者増加)
・少子化の改善
と枚挙にいとまがない。
生きるために働かなければならないという現実的制約・不安から開放されると、時間や気持ちに余裕を出てやりたいことを追求できるようになる。
そして、そこから様々な望ましい波及効果が見込まれる。
というのが論者の主張であるが、実際にはどうなのだろうか。
良いこと尽くめのように見えるBIが、いままで先進国で採用されてこなかったのはなぜか。
次回は、BIのデメリットに触れつつ、日本で導入するための課題を棚卸しする。
【2021年5月28日追記】
《次回 BIの課題》
▶ ベーシックインカムってなんだ?(2)
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