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ひまそら大躍進と蓮舫惨敗は、マッキノン・ドウォーキン主義の終焉を告げる
この記事の要約
ひまそらあかねが大躍進したのも、蓮舫が惨敗したのも、人々が表現の自由を求めているからだ。表現の自由を脅かすマッキノン・ドウォーキン主義を排除しないならば、リベラル派に未来はない。
小池百合子の三選
昨日7月7日、東京都知事選挙の投開票が行われた*1。56人という過去最多の候補が立候補する異例の選挙であった。
裸の女性のポスターを貼る候補がいたり、政見放送で脱ぎ出す若い女性候補がいたり、NHKから国民を守る党が24人を擁立してポスターのスペースを転売し出したり、あまりに色々ありすぎて政見放送で大暴れしたいつもの泡沫候補のみなさんの影がすっかり薄れたりと、混沌とした選挙活動が繰り広げられた。
が、結果は誰もが予想したとおり、現職の小池百合子が三選を果たした。人々が自由勝手に無秩序な活動をしても、結局良識ある結果に至る――これが民主主義のよいところなのかもしれない。めでたしめでたし。
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ひまそら大躍進、蓮舫惨敗
しかしこの都知事選の結果には、いくつか驚くべきことがある。
第一に驚きだったのは、ひまそらあかね*2の大躍進だろう。政見放送もせず、街宣もせず、ポスターも貼らず、顔すら出さない、肝心のネット上の活動から見ても都知事の器とは到底誰も思わないような泡沫候補が、ネット上の活動だけで110,196票という桁違いの得票を集めたのだ。
第二に驚きだったのは、蓮舫の惨敗だろう。石丸伸二が1,658,363票で第二位につけ、蓮舫は1,283,262票で第三位となった。国会議員や国務大臣を何度も務めてきた、かの蓮舫が、375,101票、約3.5ひまそらもの差をつられけて、安芸高田市長を1期務めただけの、いわば「ぽっと出」の石丸伸二に敗れ去ったのである。蓮舫の選挙対策委員会の幹部は、ついには「何が原因かよくわからない」と泣き言を漏らす始末であった*3。
後出し孔明と笑われるかもしれないが、この記事では、なぜこんなことになったのか考えてみたい。結論を言えば、私はこの現象を、これまで日本に巣食ってきたマッキノン・ドウォーキン主義の終焉を告げる福音として解釈し、歓迎したいと考える。
リベラリズムを捨てたリベラル派
この選挙で蓮舫は立憲民主党と共産党から支援を受けた。当選した小池百合子は自民党と公明党から支援を受けており、石丸伸二にはこれといった後ろ盾はない。要するに、保守・リベラルの対立軸では小池百合子が保守、蓮舫がリベラルということになる。蓮舫の惨敗はリベラル派の凋落を如実に示す、ということになるだろう。
それはなぜか? 東京の人々はリベラリズム(自由主義)を憎み、権威主義・保守反動主義に染まってしまったのか? いや、むしろ逆だろう。人々は自由を求めているのだ。
ここでひまそらあかねに再登場してもらおう。ひまそらあかねは公約ではあまり堂々と述べてはいないが、表現の自由の擁護者として祭り上げられた気配がある。ひまそら支持者による応援漫画*4は、「コンテンツ潰し」に立ち向かうひまそらあかねの姿を(やや大げさに)描いて話題となった。
フェミニズム団体の関係者が「性的消費」や「女性差別」を主張して表現の自由を潰そうとすることは、現代では見慣れた風景である。ひまそらあかねはそのようないくつかの団体をまとめて「ナニカグループ」や「WBPC」といった名前で称して、それらの団体の補助金利用の不透明さを追求してきた*5。
そんな陰謀論めいた呼び方をしなくても要するに「左翼」*6なのだと思うが、いずれにしても、要するに、現在において、左翼、すなわちリベラル派を以て自ら任ずる人々は、自由の擁護者とは考えられていないのだ。この国の左派には、いつの間にかマッキノン・ドウォーキン主義的なラディカル・フェミニズム思想が染みついてしまっている。すなわち、半ば言いがかりに近い形で特定の作品を「性的消費」と呼び、潰すという行為が行われてきた。『宇崎ちゃんは遊びたい!』や『ラブライブ』などの作品がその対象になった*7。
リベラリズムを捨てた左派は、もはや「リベラル派」とは言いがたい。それは自由の擁護者ではなく、自由の抑圧者である。マッキノン・ドウォーキン主義的な思想を捨てなければ、リベラル派の復権はないだろう。
蓮舫個人がどうかというよりも、もはや左派というものにそういう匂いがついてしまっている。それゆえに、立憲民主党や共産党に応援されている蓮舫は都民に見放され、石丸伸二の後塵を拝することとなった。これがひまそら大躍進と蓮舫惨敗の理由であると、私は考える。
おまけ:ゼノフォビア・反ゼノフォビアの対立はもはや訴求しない
ついでに、蓮舫の選挙運動についても、都民に訴求するものではなかったように思う。音楽に合わせて踊ってみせて*8、誰が投票したいと思うのだろうか?
支持者の行儀の悪さも、蓮舫のイメージダウンに一役も二役も買ったように思う。小池百合子の演説での「やめろ」コールも蓮舫支持者の仕業だという印象が広まった*9。「やめろ」コールを受けて一旦演説を中断した小池百合子が演説を再開して「本当の民主主義のプラットフォームを守っていこうではありませんか」と言ったときには、聴衆に歓声が上がり、小池百合子は大いに面目を施したのだった。
おそらく蓮舫支持者によってであろう、「R」や「多民族都市東京」などのステッカーが街のあちこちに貼られた。これを見ても、蓮舫支持の意味だと知らない人には影響がないし、知っている人はかえって悪印象を持っただろう。
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ところで、この「多民族都市東京」のステッカーを貼った人にとっては、おそらくこれがこの選挙戦の一つの争点に思われていたのだろう。つまり、外国人嫌いの頑迷な国粋主義者のゼノフォビアと、多文化共生主義の争い、という構図にしたかったのだろう。
しかし実際には「リベラル派」が嫌われるのは、先に述べたように、もはやそれが「リベラル」でなくなっているからだ。もちろん田母神俊雄や内海聡のような排外的候補もいるが、蓮舫に比べてはるかに弱小である。桜井誠に至っては、これだけ長いこと極右として活動してきて、ひまそらあかねの後塵を拝する83,600票に留まっている。
注
*1 東京都知事選挙2024 立候補者紹介・選挙速報(7月7日投票) 本記事で得票数等の数値はこの記事による。
*2 ひまそらあかねの公約・政策集|暇空茜
*3 蓮舫氏、まさかの3位に涙も…選対幹部「何が原因かよくわからない」 [東京都知事選2024] [東京の政治] [東京都]:朝日新聞デジタル
*4 暇空茜支持者が書いた暇空茜応援漫画、意外と良くできていた - Togetter [トゥギャッター]
*5 住民監査請求は住民の正当な権利であるし、小規模とはいえ不透明な補助金利用の問題を追及するのは必要なことではあると思う。ただし、それを「コンテンツ潰し」と結びつけるならば、その活動の仕方はやや倒錯していると言わざるをえないであろう。それ(表現規制)とこれ(補助金利用の不透明さ)とは別問題だからである。ひまそらあかね自身が公開している判決文には、ひまそらあかねが団体Colaboやその代表者に反感を抱いていることが監査請求の動機の一因であったとしてもその監査請求が不当とは言えない旨が述べられているが、そもそもこの二つの問題を並べて述べさえしなければ、「ひまそらあかねが団体Colaboやその代表者に反感を抱いているのが監査請求の動機なのだから監査請求は不当だ」と主張される余地を生まずに済んだのではないか。
*6 あるいは東浩紀のいう「Jリベラル」が近いかもしれない。いずれにしても思想的に近い立場の人々が徒党を組むのは当たり前であって陰謀でも巨大組織でもないと思うのだが、どうやらひまそらあかねはそういう考えを採らないらしい。ひまそらあかねは今回の都知事選でもせっかく応援してくれていた宇佐美典也にも喧嘩を売っていたくらいなので、むべなるかなである。
*7 https://x.com/asm99rx78/status/1460912398840201221参照。『宇崎ちゃんは遊びたい!』の作者は選挙期間中、ひまそらあかねのポストをしばしばリポストしていた。
*8 https://x.com/horiris/status/1809585182179213672
*9 小池氏演説、銀座の路上にナゾのビラ!「やめろ」「うそつき」コールに「逆効果」の声も(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース、【小池百合子氏、やめろコールで演説一時中断の異例(ノーカット版)@7/15 18:00~ バスタ新宿 + 解説・尾形聡彦】7/5(金) 20:00~プレミア配信 - YouTube
余談
私は今回の都知事選では安野たかひろをこっそり応援していました。