トルコの一休さん
ナスレッディン・ホジャを知っていますか?
トルコ人なら誰もが知るとんちの天才。トルコを中心とする中東諸国で有名なイスラムの坊さん(説教師)です。
といっても架空の人物(のはず)ですが、中東では多くの人が彼を実在人物と信じていて、彼の生家まであります。
トルコに行ったとき、現地ガイドさんが彼の伝記(マンガ)の日本語版を見せてくれました。またその各国語版が土産物店などで売られていました。ホジャとゆかりの深いアクシェヒルの街や、彼が生まれたとされるシビリヒサールの町の入り口には彼の像もあります。
こちらは以前、代々木上原のジャーミーを訪れたさいにいただいたホジャを紹介する絵本。文字が大きくて、ふりがな付きの子供向けです。
彼にまつわる逸話が11話おさめられています。
その中の1つ、私のお気に入りを簡単に紹介しましょう。
◇ ◇ ◇
ある日、ホジャは隣の家から大きな鍋を借りました。
そして数日後、家にあった小さな鍋をのせて返しました。
「借りている間に、鍋が赤ちゃんを生みましてな。」
隣人は最初は戸惑いましたが、「まあ、そういうことなら。」
と2つの鍋をうけとり上機嫌で奥さんに報告。
しばらくの後、再びホジャは隣家から大鍋を借りました。
しかし、いくら待っても返してくれないため、隣人は催促しました。
するとホジャは言いました。
「いやー、お気の毒です。あの鍋はお借りしている間に死んでしまったのですよ。寿命だったんでしょうな。
あ、丁重に葬っておきましたから。ご安心を。」
すると隣人は烈火のごとく怒り、
「いいかげんにしてください!鍋が死ぬわけがないでしょうが!!
あんた、うちの鍋を巻き上げる気ですな!」
ところはホジャはまったく動じず、
「おや、これは異なことを!
鍋が子供を生んだことは信じたくせに、鍋が死んだことは信じないのですか!!」
・・・私は一休さんというより吉四六(きっちょむ)さんに近いように思いますが・・・。
ホジャの像やイラストでは必ず、彼がロバに後ろ向きでまたがっている姿で表現されます。・・・なぜ?
ホジャ曰く「わしが後ろ向きにまたがっているんじゃない。ロバが後ろ向きに歩いているのだよ」
別の話では、
「この方が、後ろからついてくる弟子たちと話がしやすいからさ」
いずれにせよ、ホジャは常識にとらわれるな、物事を自由に見なさいと教えてくれているようです。
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