あげものファンによる、映画すみっコぐらしへの感謝と叫び

「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」

素晴らしかった。想いが溢れて止まらなかった。重度のとんかつとえびふらいのしっぽこと、あげものコンビのファンによる、鑑賞後のこの感想とも呼べない拙い愛の叫びをだれか聞いて欲しい。

すみっコの映画の素晴らしい部分、
可愛いとかストーリー自体が良いとかが大前提にあるとしても、

何よりも

"全てにおいて矛盾がない事"

それが本当に大きかったと思う。


例えばすみっコのみんなが立体になった時の動き。
ぬいぐるみやフィギュアはあるけれど、
基本的に平面的な絵でお話を展開していたすみっコ達の世界にアニメの動きがついた時の矛盾のなさ。それにまず感動した。
横から見たざっそう、走るとんかつ、くるくる変わるオバケの表情に踊るたぴおか、泳ぐとかげ……と挙げたらきりがないけれど、
全ての動きが自然で活き活きとしていて、愛くるしい。
ただストーリーの流れや行動に合わせてとって付けたようなアニメーションや感情表現ではなく、
私たちが想像し、またこうだったら良いなと思った理想の動きを各キャラクター達が見せてくれたことによって、
それはただの動く絵ではなく、
意思を持ってそこに存在する彼らになった。

特に体も小さく、
何よりファンの私たちにとっても"はじめまして"の存在であるひよこの、
あの世界に居る存在感やすみっコ達との馴染ませ方は本当に素晴らしかった。
小さな体と瞳で沢山の感情をあらわし、
七年の歳月をかけて培わられ、
最早出来上がっているとも言えるであろうすみっコの世界に何の違和感も無くひよこが参加して、新たな仲間になってくれた。
全く新しい映画という試みに、新しいキャラ、
ファンの不安を拭い去るどころか最高のアンサーを見せてくれた。

それは勿論アニメーションだけではなく、演出やストーリーの力も大きい。
キャラの発言、決断、行動、全てにおいて最後まで違和感を感じる事なく、
しかもこのキャラがこんな動きをするのか!という新たな発見まで与えてくれた。拍手でしかない。

例えばとんかつ。
とんかつはのんびりおっとりとしたキャラに描かれるが、
そのとんかつが今作では走ったり早歩きをしたりする。
それはえびふらいのしっぽを探す時、二人で危険から逃れる時、そして自分を食べてくれるかもしれない狼に出会った時……(正直このシーンを思い起こすとしんどい)
いずれのシーンも嫌な意外性ではなく、
とんかつ自身の性格や、えびふらいのしっぽとの関係性を強調するアクセントとして、とても効果的に演出されていた。
特に尊過ぎてしんどかったのが、あのおっとりとしたとんかつが、
あんなに一所懸命えびちゃんを探しているあのシーン。
不思議な世界に連れてこられ、右も左もわからない状況なのに、とんかつはまず真っ先に、
残り物仲間のえびちゃんを探して、知らない土地を走った。何が潜んでるかもわからない山へと一目散にかけた。とんかつのマイペースさも優しさも全てが良く伝わってくるあのシーン。もうこれ以上は私の稚拙な文章では表せない。愛だ。

そうとんかつだけではなく、
本作のすみっコのみんなの行動が全てが愛に溢れてて、あんな素敵な話が見られて、私はもうそれだけで100年は生きて行ける気さえした。

話はかなり脱線しているが、
関係性といえば、作中殆ど表情を変えないえびふらいのしっぽ。
映画の中でも天真爛漫で無邪気、でも無表情なえびちゃんが、
飛び出す絵本を見つけた時と、狼に出会った時にとんかつと共に嬉しそうに頬を赤らめた時は本当に心に来た。とても嬉しかったんだね。私も嬉しいよ、ありがとう。
そして何よりその狼逃げられてしまい落ち込んだとんかつをえびちゃんがよしよししたシーン。
あれはもう本当に、あの時のえびちゃんは無表情だったけれど、あのよしよしには二人の関係性の全てが詰まっていた。尊い。愛。そしてしんどい。神よ。
あの演出を物凄く自然な動きとして取り入れてくれた全ての方々へ、本当に愛してます。死ぬまで足向けて寝ません。

長くなったが、この映画すみっコぐらしは、
失敗した映像化作品がやって来てしまったような、
これが俺たちのすみっコぐらしだ!!
と、人様の作品を借りてクリエイター魂を見せつける様な事を一切せず、
逆に作品のファンが
"これだけは大切にしてほしい"
と作品に対して抱いていた要素や、
すみっコぐらしの世界が七年かけて作り上げて来た設定の細かいところまで一つ一つ丁寧に拾い、
各プロの手によって、
すみっコぐらしの新たなストーリーとして一つの映画へと昇華させた、そんな素晴らしい作品だった。
もっと言えば私は映画のエンドロールが終わるまで、
映画を一本見たと言うより、
すみっコ達の大切な思い出のおはなしをおすそ分けして貰った、そんな感覚さえあった。
それくらい彼らはあの作品の中で生きていた。

最後に余談になるが、印象的な話を一つ記させて頂きたい。
家に帰り、パンフレットを見返しながらなぜすみっコ達はこの世にいないのかと嘆く私に、一緒に映画を観てくれた夫がこう言った。
「もしかしたらすみっコ達は映画のラストみたいに、すみっコの世界からこの世界にイラストやぬいぐるみへ姿を変えて側にいてくれてるのかもよ」
普段冷静な夫から出たこの夢のある発言に私は泣いた。ありがとう。
普段冷静な三十代男性にこんなにも夢のある発言をさせてしまう映画すみっコぐらし。やはり素晴らしいという言葉しか見つからない。
映画すみっコぐらしに関わって下さった全ての関係者の方、本当に素敵な作品を提供してくださりありがとうございました。
この体験は絶対に忘れません。公開中は出来る限り観に行きます。