ガチ勢が競技的にナワバリバトルを楽しむために③~辺縁の価値~
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さて、前回、前々回につづき、「ガチ勢がナワバリバトルを競技的に楽しむための私見を述べたいと思います。
最終回となる今回は、ナワバリ特有の要素である、「辺縁の強さ」について書きます。「特に序盤に、いかに辺縁を押さえていくか?」という話です。
ここまで、バンカラマッチにないナワバリバトル特有のスキルとして「形勢把握」と、「ラスト30秒の仕掛け」について述べていきました。これらを組み合わせていくと、「ナワバリは結局ラスト30秒の形勢と仕掛けでしょ?」「結局ラスト30秒ゲーでしょ」と解釈されるかもしれません。
それでは、ナワバリの序盤から中盤にはあまり意味がないのでしょうか?もちろん、終盤よりプライオリティは大きく下がるのですが、まったく意味がないわけではありません。特に拮抗した試合において、その立ち回りは最後の数ポイント、0.数パーセント、勝率の数パーセントにかかわると思います。
それが、「辺縁の塗り」です。辺縁とは、いわゆる手前の自陣であったり、ステージの左右の端っこですね。私たちが大好きな中央前線から最も遠い場所です。
ヒトの認知バイアス~中央に強く、辺縁に弱い~
このテーマはヒトの直感に反するので、まずは一見遠回りですが、「ヒトの認知特性(バイアス)」について知る必要があります。
皆さんが、ぱっと目の前に世界地図を目にしたとします。ぱっと目にしたとき、まずどのあたりに目がいくでしょうか。おそらく、「地図の中央」や、「国際主要都市」に目がいくのではないでしょうか。すべての国や都市をひらべったく、等価に知覚することはできないはずです。
仮に地図上の辺縁にある都市や国名に誤植や致命的な間違いがあったとしても、ただちには気づけないでしょう。
これは、「非注意性盲目」といわれ、ヒトに備わった認知バイアスとして知られています。
ガチ勢ほど起きやすい?ナワバリ盤面の「非注意性盲目」
ガチ勢のみなさんは、試合中にマップをみることは当然こころがけているはずです。ただ、一瞬のマップ把握で、どこをみているでしょうか。おそらくは、「中央の前線」に目が向いてしまうのではないでしょうか。あるいは、終盤の極限状況でも、いかにして「前線」を上げるか、維持するかにアタマが向いてしまうのではないでしょうか。しっかりバンカラマッチに向き合っているひとであればあるほど、そうあってしかるべきです。
しかしながら、この磨かれた学習経験が、「フィールドすべてが等価なオブジェクト」であるナワバリにおいては、「辺縁への非注意性盲目」を生み出してしまう素地になります。
そのため、しっかり中央前線を抑え込んだにも関わらず、「ナワバリ検定」のような敗北を喫し、「ナワバリやってらんねー」という感情につながります。
バンカラで培った盤面把握が、ナワバリにおいては裏目に出る。これは「学習の負の転移」ともいわれます。
(ちなみに、この認知バイアスよる逆転劇は当然運営によって想定された射幸経験です。実際にスプラトゥーン3の過去CMでは、絵描きが趣味な女子の丁寧な自陣塗りによる「ナワバリ検定」型勝利が映されています)
ナワバリにおける辺縁の価値
バンカラマッチと異なり、ナワバリではステージの辺縁の価値がきわめて大きいです。それは、①中央と同等の勝敗規定カウントを有していること(等価性)、②地理的に相手の収奪コストが高いこと(維持性)、③非注意性盲目により相手に価値が軽視されやすいこと(認知性)に代表されます。
ただし、困ったことに私たち自チームもホモ・サピエンスですから、③認知性により辺縁を過小評価してしまう傾向にあります。そのため、この認知バイアスにいち早く気づき、(個人での修正は困難でも)チームとして修正することで、1歩リードできたり、ナワバリの深みを理解できるのではと思います。
「コントローラー」を立てよう
長い前置きでしたが、ここからがソリューションです。個人個人としては、この認知バイアスを解消することはできません。ただし、チームであれば、特定の一人の視点を戦略的に偏らせることで解消することができます。複数人置いてしまうと、かえって中央がおろそかになるかもしれませんのでご注意を。
このロールを仮に「コントローラー」と呼びましょう。バンカラマッチにおけるコントローラーとは、オブジェクトのカウントに関わるプレイヤーですが、ナワバリにおける「コントローラー」とは、意識的に辺縁の塗り状況を把握し、塗ることで、チームとしての認知バイアスを補正する役割が期待されます。
担当するのは、下記のようなジョブを担うプレイヤーが望ましいでしょう。
① 自陣塗りを担当する
② チーム内でバンカラマッチの経験やウデマエが相対的に低い(学習の負の転移にあまりさらされていない)
③ 好戦的でない(非注意性盲目に陥りにくい)
中央や、前線は、他の好戦的でアゲアゲなプレイヤーに任せてかまいません。ただしコントローラーたるプレイヤーは、静かに自陣や辺縁を固めていき、前線に合流します。
まとめ
ナワバリバトルは①等価性、②維持性、③認知性により、辺縁の価値が高い!
一方で、長年のバンカラマッチによる学習の負の転移にさらされると、辺縁の価値に気づけない!(非注意性盲目)
チーム内でコントローラーを指定し、個人でなくチームとして盤面把握のバイアスを補正すると「ナワバリ検定負け」がへる!?
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