まるで、というかまさに

着いたのは温泉旅館だった。
オフシーズンだし平日だからお客さんはほとんどいない。

着いて早々、もうけっこうな時間だったので部屋でご飯を食べた。
とてもおいしかった。こんないいとこ、誰に教えてもらったの、と聞きそうになってやめた。

話しをしながら、Nはときどきじっと私をみる。老けたな、とか思ってるのかな。まあ、老けたよな。
私は仕事の話しをする。最近の悩みはもっぱら、若者のことだ。なんか話し通じなくてさ、と言うと、ふーん、と口を挟むこともなく、でもたまに私の顔をみてニッと笑って、またふーんと言ってごはんを食べる。
話しを聞いてるんだか聞いてないんだか。でもこんの感じがずっと変わらない。

部屋の露天風呂に一緒に入った。まるで不倫旅行。ああ、不倫旅行か。
Nは夫のことをほとんど聞かない。一度だけ、なんで結婚したんだよ、と責められたことがあった。どんな男なのと聞かれて、答えようとしたら、やっぱりいいと言って遮り、それっきり聞かれない。

湯船の中でNの腕に抱き寄せられて、今度はNの話しを聞いた。師匠と先輩がうまくいってなくて、まさか抜けたりしないよなー、また人減ったら、困るなあ、と、私の肩や腰に手を回して言う。

目があって、ぐっと引き寄せられて膝にのると、もう硬くなっているのがわかった。照れて笑うNの頰を両手で包んでキスをした。お湯は熱くて、空気は冷たい。Nは私の肩にキスをして、そのまま舌を首に、鎖骨に這わせる。

指が入ってきて、Nは私から目を離さない。ぴちゃぴちゃとお湯が湯船の済にぶつかる音が聞こえた。もういれて、と言えないでいると、Nは私をお湯の中で持ち上げて、そのままグッと私に入れた。

あたたかくて気持ちいい。ぎゅっと抱きしめ合ってキスをして、Nが汗をかいているのがわかる。いったん抜いて立ち上がると、湯船の端に座ってもう一度私を乗せて、今度は激しくついてふたりで果てた。

罪悪感はない。
ただ幸せを感じるだけだ。


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