#36「折り目」
先日、「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」を観に行った。
僕にとってこれが2回目の鑑賞である。
同じ映画を二度も三度も観にいくというのは、これまでも話にこそ聞いていたものの、自分自身で実践したことはなかった。恥ずかしながら、初であった。
1,500円で映画館に4回観に行くくらいだったら、6,000円のパッケージで10回でも20回でも観た方がいいじゃん(待つことにはなるけど)とドライに打算的に捉えていたのが正直なところで。
が、今回僕はその差額を了承してでも、その時のボルテージで、あのスクリーンと音響で、もう一度観たいと思ったんである。差額と書いたが、今まで僕はずっとあのダイナミックな環境での贅沢な鑑賞体験というものを加味するのを怠っていた。鬼滅に5回も6回も並ぶ人を顎を引いて見ていたが、今は誠心誠意謝罪したい。
この映画の感想を言語化することは生半可なことではないので、平均3,000字前後でお送りしているこのエッセイ上でそこに言及することは見送る。
然るべき時、然るべき内面的準備が整ったうえで、気が向いた暁には、別途その旨の記事を立ち上げようと思う。
簡単に触れてだけおくなら、およそ2時間半の映画とは思えないほどあっという間だったということだろうか。それは初回でも感じていたことではあったが、なんなら初回よりも体感時間は早かった。この映画の訴求力を肌で感じ直した。
1回目を観た後に散々考察記事を漁っていたのと、今回は最後列ど真ん中に着席できたのとで、1回目よりも充実した鑑賞体験だったと言える。
ところで、僕は二度目にしてようやくパンフレットを買った。
いつもホチ止め冊子のライダー映画パンフしか買わないので驚いたが、背表紙がついた重厚なそのパンフはもはや手応えだけで言えばムック本と言っても差し支えなかった。
凹凸加工とでも言うのかなんなのか無知で申し訳ないが、疑似シン化したエヴァ初号機がざらざらした表紙に描かれ、
"EVANGELION 3.0+1.0 THRICE UPON A TIME"
の字が彫り込まれている表紙は実に美麗で、白と黒しかないが、なんというか鮮やかさを感じる。
表紙をめくると、映画のタイトルロゴが真ん中にどーん。
その後、庵野秀明監督のメッセージへと続く。
その日の夜以降、度々空き時間にその膨大なキャストインタビューを少しずつ読み進めているのだが、未だにこのパンフに僕は折り目というものをつけていない。
つけることができずにいる、憚られていると言った方がいい。
***
そういう話をしてお決まり的に思い出すのはやはり、新しい教科書の1ページ目をめくったときのこと。これは洋の東西を問わずだと思う。
低学年時なら折り目やなんやの意味も知らず、高学年時なら一年間使い続けてクタクタになるのがもうそれまでの経験上目に見えているので、いずれにしても躊躇いなく折り目をつけることができていた。
秋冬ごろに教科書が未使用品並みに綺麗に保管されているのは…なんというか、それはそういう罪だから。
新しい本を買った時は、ここに少し躊躇いが混じる。
どうせ読みたくて買ったのだから、読むのに最も適した形で置いておくのがよい。遅かれ早かれ、である。
そういう自己説得をして、ようやくその表紙をぐっぐっと折り込む。
というのもCDや本やDVDにはある種のインテリア性を感じているからで、CDジャケットを見える形にしてディスプレイしていた時期もあったりした名残で、鑑賞体験の楽しさを保存したい気持ちが働くがゆえの習性なのかもしれない。
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