道徳の系譜

  ニーチェ著 木場深定訳 『道徳の系譜』 岩波文庫p39

彼の魂は横目を使う。彼の精神は隠れ場を、抜け道を、裏口を好む。すべての隠されたものが、彼の世界として、彼の安全として、彼の慰安として彼のお気に入りだ。彼は黙っていること、忘れないこと、待つこと、差し当たり卑下し謙遜することを心得ている。こういう<<反感>>を持った人間どもの種族は、必ずやついにはいかなる貴族的種族よりもより怜悧になる。彼らは怜悧ということをまた全く別の尺度で、すなわち最高級の生存条件として尊重するようになる。これに反して、貴族的人間における怜悧は、ともすれば贅沢とか典雅という繊細な添え味を伴いがちである。

           Friedfich Wilhelm Nietzsche (1844−1900)




今の時代は、ニーチェの言うような怜悧なひとが強い権力を持ってしまっているという印象。