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『FINAL FANTASY Ⅱ』に取り憑かれるとこだった
もし僕が「今年で一番熱中したゲーム」を1つだけ挙げることになったとしたら、この『FF2』を迷わず挙げる。
しかし、僕は『FF2』という作品が好きではない。好きではない、というよりあんまり楽しくなかった。この後の記事を読んでいけばその理由が分かると思う。
それなのにも関わらず、僕は『FF2』に病的に熱中し、クリアしたバージョンを挙げればピクセルリマスター、GBA、PSP、あとファミコンの原作も未クリアながら少し触った。僕はこのリメイク群を今年の上半期、ものの数ヶ月で購入しクリアし尽くしてしまった。馬鹿は僕です。
ここまで『FF2』の厄介オタクに堕落した僕にとって、今年の流行語は『FF2』だし、今年の漢字も間違いなく『FF2』だ。こんなおしまいみたいな2024年の総決算としては、これほどぴったりな記事のテーマはないだろう。
なので今回は、僕を狂わせた『FF2』を冷静に紹介していこうと思う。この記事で『FF2』の依存性と異常性を知っていただければ、とても嬉しい。
『FF2』のいいところ
まえがきでは異常だの楽しくないだの言ったが、もちろんこき下ろすだけの記事にする気はない。だって好きなんだもん。なので、まず最初は『FF2』の良いところから話す必要があると思う。
『FF2』の良いところといえば、なんといっても音楽にある。
例えばこの、『FF』シリーズが好きなら一度は聴いたことがあるであろう名曲・「反乱軍のテーマ」。この曲を一度聴いてしまえば、僕のように音楽の疎い人間でもこの名曲を名曲たらしめている理由が肌でわかる。これ4音だけでできてんだぜ、恐ろしいね…。
そして、その音楽によって一層引き立つのがストーリーだ。本作は負けイベントからゲームスタートという、あまりに衝撃的な始まりを迎える。そして、この演出に戸惑うプレイヤーが次の瞬間に聴くことになるのがこの「生き返りの間」である。
この穏やかなBGMによって衝撃の敗北に動揺したプレイヤーも一安心する。よく計算された場面運びとBGMであり、物語の掴みとしてはバッチリの出来だ。
また、以降のシナリオも完璧で、「戦争」を主題に置いた物語であるため、出会った仲間との死別を描く機会が多い。そこに「実は生きてました」なんていうご都合展開はなく、ただただ硬派で重厚な物語として、死を丹念に、リアリティたっぷりに描写するのである。
具体的にいえば、OPの字幕で主人公の故郷と両親がなくなる。その後も味方陣営の指導者が死んで、ブレーンの白魔道士も死んで、『FF』おなじみの竜騎士も死ぬ。シビアすぎ。
正直、『FF』シリーズでメインキャラがこんなに死ぬ作品は他に見たことがないし、多分近年の作品でこれをやるのは気が引ける。ファミコンのドット絵だからこそ美しく映える展開なのだと僕は思う。結構、ハマる人はハマる雰囲気だと思う。ここが僕を狂わせたところだ。
僕はこの作品をだいたい『FF』版鬼滅の刃だと思っているので、皆さんもそういう風に認識するのがよろしいんじゃないでしょうか。煉獄さんくらいのトーンでどんどん味方が死んでく。『FF2』で推しは作るな。
バトルが根本的な欠陥を抱えている
しかし、ここまでストーリーや音楽の秀逸さを語っても、最後には『FF2』最大の欠点を話さざるを得ない。『FF2』の欠点とはずばり、「システムに欠陥がある」ことだ。
多分、ちょっと『FF』が詳しい人なら、『FF2』が特異な育成システムをしていることを知っているだろう。『FF2』の育成にはLvのような経験値テーブルがなく、攻撃すれば力が、ダメージを受ければHPが上がる。つまり、戦闘中にとった行動でステータスがそれぞれ上昇する。
また、武器や魔法も種類ごとに熟練度が上がっていくため、理論上は剣士キャラにも魔法使いキャラにも好きなように育て上げることが可能だ。
しかし、よく考えてみてほしい。LvのシステムがほとんどのRPGで使われているのはなぜか?それはプレイヤーに要求する余計な作業がなく、手軽だからだ。要は数をこなすだけで自然と成長する。ストーリーやボス戦を中心に遊びたい人にとって、レベル上げは面倒くさいものだ。
しかし、『FF2』はどうだ。行動すればするほど能力が上がる仕様にしたせいで、1戦闘を長引かせなければ大した成長にならん。またそれを独立した能力値(力、体力など)で1つずつ成長させなければならないから育成する気にもなれない。
だがここで、RPGに詳しい皆さんなら『FF2』の熟練度システムが同社の名作RPG『サガ』シリーズの育成システムに類似していることに気づくだろう。だが、『サガ』は面倒にならないように熟練度をLv制のような経験値で管理したり、最初から固定パラメータにしたり対策してる!!!『FF2』はただただ面倒なだけ!!!!
ただもちろん、この熟練度システムも仕様や育成方法を知れば楽しくなっていく。魔法に上位下位の概念がないので、どの魔法の熟練度を上げて強化していくか悩ましさがあって楽しいし、この取捨選択を繰り返す「カスタマイズ感」は『FF7』のマテリアに通づるものがある。
だが、そんな『FF2』の真の恐ろしさはこの先にある。
RPGの皮を被ったクイズゲーム
さきに結論を言おう。本作は直接の攻略法がほぼ1つに限られている。
『FF2』の最重要ステータスは「回避率」。文字通り攻撃を避ける時に用いるステータスだが、なぜこれが重要なのかというと、敵モンスターの通常攻撃に付与される即死などの追加効果のせいで、いくら防御力を上げても意味がなくなってしまうからだ。
即死したくなければ、そもそも攻撃を避ければいい。HPを上げようが「源氏シリーズ」のような超防御の重装備を着込もうが、毒が回って衰弱すれば本末転倒。当たらなければ、どうということはない!!!!!
…ちょっと熱くなりすぎた。しかし、この回避率を上げようという攻略法は、ファミコン世代の小学生や初めて『FF2』を触る人には理解しがたいだろう。なんなら、重さの概念によって重装備ほど回避率が下がるので普通のRPGに慣れてかっこいい鎧兜を装備してしまえば即詰み。このゲーム、構造自体がトラップすぎるのだ。
かくいう僕も、『FF2』初見プレイのときはかっこいい「ダイヤアーマー」を着込んで回避率0でラスボスに挑み、桁違いの威力を持つ通常攻撃をかわせずに5回敗北した。回避率の重要性を知ったのは、後で攻略を見てからのことだ。
しかも攻略を見てそのとおりに育成したら、ラスボス戦で全く苦労しなかった。こっちの攻撃はザクザク当たるのに、相手からの攻撃は全部避ける。見ていて気持ちいいものも確かにあったが、それよりも思ったことが、
「クイズ感」
である。要するに「回避」という答えを見つけて育てればヌルゲーになり、それ以外の不正解ではまるで歯が立たない。さっき言った自由度という面で見てこれはかなりおかしいし、どれだけ武器・魔法の熟練度上げを吟味しても正解にたどり着いていなければ無意味だ。
これこそが『FF2』最大の欠点であり反省点にすべきところだった。『FF2』をやった後に『サガ』シリーズをやると、あまりの育成の快適さに驚くと思う。まじでベーゴマとベイブレードくらい違う。何周もひも巻く必要がないベーゴマとか最高だから。
それでも俺はお前のことが好き
しかしそれでも、僕は『FF2』に洗脳された身だ。今語った欠点も、悪口を言いたくなったわけではなく、ただお前と対等に接したいだけだったのだ。
言うなればこれは、「除霊」だ。洗脳されてイエスマンになるところだった僕が、やっとの思いでこれを書き上げたことを褒めてほしい。これで、やっとまともな目線でお前を見れるぜ、『FF2』。
じゃあ僕はもう満足なので、これでお暇させてもらうよ。君も気が向いたらこの『FF2』をやってみるといい。
…熱中しすぎて取り憑かれないようにね。