5月6日

 女子高生のスカートの襞が、隣の座席まで広がっている。茶色がかった無造作に乱れる髪の毛を白いヘッドフォンが包んで抑えている。眠っているのだろうか。足首をくねらせて、やや斜め方向に姿勢を崩している。まるで居間にいるかのように新学期で環境が変わり、長い授業を終えた束の間のソファの上でゆったり寛いでいる姿だった。深い呼吸のために上半身が膨らんでは萎んでいく。夕焼けに燃える浜辺を描いたのだろうか、印象的な色彩のリュックをか細い両腕で抱えていた。そのリュックも電車の揺れ動く一定の速度と彼女の眠る呼吸の反復動作に合わせていた。
 スカートの丈は決して短くはない。座った姿勢でも膝頭を少し隠しているから、立ち上がった時にはその位置よりもやや長いのだろうと見える。彼女はくるぶしで切られた短い靴下を履いていて、片方の茶色のローファーの底が見えていた。
 急行での待ち合わせでも彼女は降りなかった。この電車は各駅停車のために、急行から乗り換える人が押し寄せてくるのだった。それでも彼女の隣に座る者はいなかった。眠りに落ちている彼女のスカートが隣席の幅を支配しているために、乗ってくる大人たちは忌み嫌うような目つきをしながら遠ざかるのだった。彼女の聖域は、私が降りるまでずっと誰からの体温も感じないまま放置されていた。

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