7月25日
畑の頭上に赤い筋をつけた大きな鳥のような物体が風に靡いて動いていた。奇妙な物体は鷲のような翼を広げていて、奇妙に旋回したり翼をたたんで萎んでいたりしていた。萎んでしまったのはいつも無風になったときだった。
一本の杭が畑の真ん中に打ってあった。そしてその杭先に針金を括り付けて物体は風の影響を孕んで動いていた。案山子の要領で害鳥から畑を守っていることも分かった。
夏の風は大いに熱気を纏ってあり、鳥のような物体の赤さがその熱気を吸収して変化しているのではないかとも私は思った。
住宅街にぽつんと畑を拵えて、守り神みたく物体は少ない範囲を飛んでいる。ただ鷹揚に勇ましく見え、害鳥も寄りかからないような力強さも感じた。
私は歩みを止めたまま、自由の利かないその鳥のような物体に目を奪われていた。汗がじわりと背中を伝って流れていくのにも、不快な感触を残すことはなかった。生唾を飲み込んだ際、鳥と目が合ったような感じがした。何も言わないその鳥は優雅に踵を返して私を無視した。汗が引いた。夏の夕暮れだった。