~解体韻書~ Vol.9 「Attention」Kid fresino feat. Campanella
第9回目はKid fresino 4枚目のアルバム『ai ping』から名古屋のラッパーCampanellaをフィーチャリングした1曲です(2018年リリース)。
【概要】
BPM:約64or128
構成:Hook(Kid fresino)⇒Verse(Campanella)⇒Hook(Kid fresino)
Prod.by BACHLOGIC
BACHLOGICのクールなトラックにフレシノは歌風Hookを担当、そしてCampanellaが24小節(48小節)、タイトにラップをしています。
このアルバムについてのインタビューでフレシノがこの曲に関して
Campanellaのバースが素晴らしすぎたので自分はラップをいれるのをやめた
というような発言していたのが印象的でした。
リズムのタイトさやフローの多彩さ、リリックの純度の高さをみると、フレシノの発言にリスナーも頷けますが、ライムという観点からみるとどんなバースとなっているのでしょうか。早速みていきましょう。
※歌詞は筆者の耳コピです。推測も含みます。
【Verse】
始めに断っておくとこの曲のCampanellaのラップは全体を通して "ai" の響きが非常に多いので、"ai" の響きの部分には、黄色網掛けまたは黒下線を引いています。
最初の8小節です。
まずは「Talk to me」と「様子見」、「Street」と「Favorite」という脚韻から入ります。
しかし、3小節目以降は"ai" の響きを畳みかけるように配置しています。特に5小節目以降は、"aio" という響きが10個ほどみられますし、「最高」「再度」「回答」「太陽」と頭韻で踏んでいることも明らかです。
また、小節の脚韻で考えると "ia" の響きで踏んでいます。「liquor」というワードから連なっていると考えます。
"ia" のつながりで見ると1小節目~4小節目でもその響きは既に配置されています。
続きの8小節です。
最初の2小節は "ia" の響きを継続しています。3小節目~4小節目ではフローの変化も特徴的ですが、"ai" をメ韻としています。
5小節目~8小節目は、"en(u)"や "ii"で踏んでいますが基本的には、"ai"ないし"ia"の響きを用いています。
最後の8小節です。
最初の2小節は "e" 主に「け」 の音が印象的に響きます。また、脚韻は「泥だらけ」と「帆をたため」(筆者推測)で5文字踏んでいます。
3小節目~4小節目は "u" 主に「く」の音が印象的に響きます。脚韻は「体たらく」「かいて働く」「べからず」で踏んでいます。
5小節目~6小節目は "ii" の響きが目立ちますが、ケツの響きは引き続き "u"の響きです。
そして最後は「過去から」と「さよなら」の脚韻で締めくくられます。
【まとめ】
Campanellaはラッパーの中でもラップが上手いと称されるタイプのラッパーだと思います。ライブ映像を見ても、リズムのブレが少なく、音源さながらのラップを聞かせてくれます。
どのようにラップが上手いのか?それを説明するのは難しいですが、感覚的には「リズム感が良い」「声質も相まって耳に気持ち良い」という印象でした。
そして、今回の解剖で、「耳に気持ち良い」要因の一つに「韻」の配置の仕方があるということが分かりました。
2文字~3文字の韻を多用しており(今回は "ai" "ia" "ii")、それはリスナーに言葉として印象に残すというよりも、音として印象を残すことを重視しているのかなと思います。
"ai" や "ia"の響きは意図してなくてもリリックを書く上で出てきてしまう響きなのかもしれないとも思いましたが、おそらくこの曲では意識的に多く配置しているのではないかと思います。
特に "ai" の響きは異常に多く、韻は「何小節かで明確に踏む」ものという固定概念がありましたが、「バース全体で抽象的に印象付ける」というやり方もあるのかなあ・・・と考えてしまいました。
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