カイブツになりたい #1
昔々あるところに、一風変わった願望を持った一人の少年がおったそうな。
少年は心の奥の奥に、それそれはたいそう立派な竹のように強い芯を持っておったのに、人前になると、てんで情けない有様であった。
少年はそんな自分の弱さを変えたいと、毎日思っておったそうな。
ある日、少年は寺子屋の帰りに寄り道をしてみようと思った。
いつもならすぐに家に帰り、母君の握ったおにぎりを食べている時間なのだが、不思議とその日は腹が減っておらず、
「今まで行ったことのない場所へ足を踏み入れよう」
そんな冒険心が湧き上がってきたそうな。
家とは反対の方向へと歩いていくと、次第に人家が減っていくように思われた。
お天道様もまた雲の陰に隠れてしまったようで、先刻までは心地の良い涼しさを感じさせてくれた秋風が、今は肌寒さと物寂しさを少年の身に振りかける。
少年は段々と心細くなっていった。
早々と家に帰りたくなってきた。
腹が減ってきた。
母君のおにぎりが恋しくてたまらなくなってきた。
そんな自分が情けなくてたまらなくなってきた。
弱い自分を振り払うために、少年は闇雲に駆けた。
人の気配のない雑木林の方へと走り出した。
母君の優しい顔や、おにぎりの一粒一粒が頭に浮かんでくる度に、
少年は叫んだ。
その叫びに反応するのはスズメやリスぐらいのものであった。
しばらくして、急に少年は足を止めた。
息が切れ、体力を酷く消耗したのも理由なのではあるけれども、
一番の理由、それは・・・・
金色の小さな社を見つけたからであった。
つづく。