ロード・パイロット 1
汐留の駐車場に入る階段降り口は古びていて何かのダンジョン攻略ゲームの入り口を思わせて風舞琴里(かぜまいことり)を一瞬怯ませた。それに、タバコ臭いし。ええい、ビビるな。気合いいれて琴里は階段を降りた。えーと、たしか地下二階?しかし駐車場は広すぎて目指す事務所は分からない。電話してみようかしら。
「あの、すみません。採用面接に伺いました風舞ですが、駐車場に今いるんですが、地下二階でよかったでしょうか?」
「あ、風舞さんね。地下一階だから。階段登ったらすぐ事務所あるからね」
ずいぶん古い駐車場…。耐震とか大丈夫かな。小さなドアに社名が書かれていたので直ぐに場所は知れた。
「失礼します…」
ドアの先には見えない角度で部屋があり、誰か話していた。
「今日も東京都200人超えたみたいですけど、コロナの影響はどうなんでしょう?」
「こればかりはわからんですよ。希望的には春先に向けて回復してもらわないと」
わかりました、では、と言いながらおじさんが出てきた。こちらとちらと目が合う。
面接受けに来た人だ。
「あの、すみません。電話しました…」
「風舞さんね、お待ちしてました」
ポマード頭のおじさんが部屋の奥のテーブルに座る様に即す。
「ほ、本日はお時間いただきありがとうございます!」
いつまでも面接って慣れないわ。
「あ、山本から話は聞いてるんで、そんな固くならずにやりましょう」
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