見出し画像

サザンオールスターズ「盆ギリ恋歌」完全解剖! 後半

なんやかんやあって盆も明けてしまいましたが、前回に引き続きサザンオールスターズの新曲『盆ギリ恋歌』について、独断と偏見で要素を解剖していきます。

前回の記事はこちら▼

今回は2番から行きます!

盆ギリ盆ギリ
おどま盆ギリ
ヨロシク Hold Me Tight

ここは1番同様。「おどま盆ギリ」というフレーズによって「五木の子守歌」の由来を確固たるものにしています。

ほんにゃらほんにゃら
祇園精舎は
魅惑のHoly Night

「ほんにゃら」は聞いたことありそうであまり聞かない言葉。検索に唯一ヒットするのは植田まさし先生の名作「かりあげクン」です。その正式タイトルは「ほんにゃらゴッコ かりあげクン」らしい。初めて知った。

▲冒頭の注釈「からあげクンとは異なります」がジワる

祇園精舎は仏教用語で、かの平家物語の冒頭「祇園精舎の鐘の音」が真っ先に思い浮かびます。これも恥ずかしながら調べてみて初めて知ったのですが、祇園精舎は古代インド郊外にある寺院の名称とこのこと。

なるほど、サビでインドの民謡楽器シタールの音色が聴こえたり、MVでガネーシャを模した汽車が登場したり、そもそも盆ギリの全体に流れる異国曼荼羅な雰囲気はここに通じるわけですね。

それがキリストの生誕たる「Holy Night」に落ちるって、もう滅茶苦茶だよ(褒め言葉)

ぼんぼりぼんぼり
『牡丹燈籠』が
パーティーになっちゃって

ぼんぼりといえば真っ先に思い浮かぶのはひな祭り。灯りを付けましょぼんぼりに〜。

ただ調べてみると、そもそも「うすくすけてぼんやり見えるさま、はっきりしないさまを表わす語」という意味があるんですね。なるほどまさに1番で歌われた「姿は見えねけど 誰もがやってるよ みんなに内緒だよ」の世界感に通ずる、怪しさが匂い煙るようなビジュアルが目に浮かびます。ちなみに漢字では「雪洞」と書くらしい。

牡丹灯籠は「四谷怪談」「皿屋敷」に並んで日本三大怪談と評される物語。恋煩い死んだお露さんが盆の夜に恐ろしい姿で会いにくること、そして欲と金にまみれた男達の哀しい最期、まさに盆ギリの世界観のベースとなった物語と言える訳ですが、それが「パーティになっちゃって」と軽々しく言えてしまうところに、TOP OF THE POPS 桑田佳祐の底なしの才能を感じます。


Don't Worry Don't Worry
般若波羅蜜
冥土に Going Home

盆ギリ、ギンギラ、ほんにゃら、ぼんぼり、ときて「Don't Worry」。ここについては特に言うことはありません。韻です。

般若波羅蜜は、お葬式で読まれる「般若心経」の一節ということくらいは分かりますが、調べていくと深すぎてなかなか触れにくい……ともあれ盆ギリに散りばめられた仏教の世界観を形成する要素です。

直後に冥土にGoing Homeですよ。好き勝手言って、飲めや歌えのパーティしといて、いきなりの冥土にGoing Home。情緒どうなってんだ。きゅうにこわくなってきた。

今際の際(いまわのきわ)で叫んだよ
『イクのはエクスタシー!!』

今際の際は「死に際」の意ですが、同時に桑田佳祐も親交のあった忌野清志郎や、最近(でもないけど)だと今際の国のアリスなんて漫画も思い出します。そこで叫んだ言葉に関しては、ノータッチでいきます。逝くとかけてるんだと思います。たぶん。

涙はじんじろげ
祭りだ 納涼だ!!

じんじろげ。調べてみると1961年の曲が元ネタのようだが…

ここにもインド民謡や日本の童歌をルーツとする要素が散りばめられているようで、さらには桑田佳祐がスカウトされたという逸話のあるドリフターズの志村けんが「ウンジャラゲ」と歌っていることも関係があるようで、最早追いきれん……。怖くなってきた……。

後に続く「祭りだ‼︎納涼だ‼︎」がカオスを盛り上げます。

こりゃ
スーパーボウルやグラミー賞より
盛り上がるんで Show!!

スーパーボウルもグラミー賞も説明不要ですが、念のため。熊本民謡からインドへ、そしてついに全米が泣いた。スーパーボウルのCM枠は30秒で7億円とも言われてるらしい。

これより盛り上がる、というのは完全に茅ヶ崎ライブを見越した歌詞かと思います。とんでもない自信だ。

愛倫情事に
うつつ抜かすのも
Uh Uh

ここ、今回1番びっくりしたんですけど「愛倫情事」なんていう日本語は存在しないんですね。完全なる造語。なのに、なんとなく意味の想像はつく。後に続く「うつつ抜かす」も相まって、さもある言葉のように聴こえる。この歌詞を書いた男、天才か?

と思ったら1985年のアルバム「kamakura」収録の「古戦場の濡れん坊は昭和のHero」に同じ言葉が登場しています。やべ…おかじとしたことが見落としていた。さらに前年1984年のアルバム「人気者で行こう」の「よどみ萎え、枯れて舞え」では「愛倫浮気症」という造語が登場します(読みはアイリンブーケショウ)。そう言えば確かに、盆ギリからはこの頃のサザンがやっていた異国音楽の闇鍋MIXに似た赴きを感じます。

あの
サザンビーチでナンパするなら
ヨシオんとこ(夏倶楽部)で Show!!

サザンビーチは茅ヶ崎駅を降りてサザン通り商店街を抜けた海岸の名前。1999年に茅ヶ崎海水浴場から「サザンビーチちがさき」に改名したそうで、来たる45周年ライブが開催される茅ヶ崎公園野球場も近く、サザンファンにとってはひとつの聖地となっています。ずっとサザンが流れてます。

そこにある「夏倶楽部」という海の家を営むのが、桑田佳祐の幼馴染、大久保義雄さん。なので、「ヨシオんとこ」というわけで、ヨシオは盆ギリのMVにも出演して話題を呼びました。「飲むんなら」「盛り上がるんなら」でもなく「ナンパするなら」というのが2人の関係性を示唆しています。

遠い... 夏の... 夢でした
ちょいと危険な夢だったよ

危険な夏の夢、と言われて連想するのはユーミンでしょうか。こちらはカリビアンナイトということで、さらに異国風情が高まります。

そして、桑田佳祐のシャウトで大サビ前の間奏へ。このシャウトはウルフマン・ジャックを彷彿とさせます。1979年「10ナンバーズ・からっと」の1曲目「お願いDJ」では、間奏で彼の喋りとトレードマークである遠吠えのようなシャウトをモノマネしました。


間奏では桑田佳祐の独り語りなのか、女性との掛け合いなのか、謎のセリフが挿入されます。歌詞カード(古い)に記載はなく、聞き取りにくい部分もありますが無理矢理書き起こすとこんな感じでしょうか。

男「ねえねえまゆみちゃん」
男「あ、いやまだまだもうちょっとやる」
女「もうちょっと?」
男「え?ちょ、ちょ、ちょ…」
男「こんなんどうでしょう?」
男「ああっ気持ちいい…」
女「ハイ」

こう書くとマジで意味わからんな。「まゆみちゃん」は、女優の小川真由美さんのことで、女性の声の出演として登場していただいている(サンプリング?)とのことでしたが、調べても詳細は分からず……。

先日のMUSIC STATIONやNHKのライブ特番では名前を変えて、コーラスのサポートメンバーTIGERさんと掛け合いを見せてくれました。

ちょいと
老若男女が熱い魂で
『Rocking On』で Show!!

いよいよ大サビです。

夜空の花火で
海が煌めいた
Uh Uh

海が煌めく夜空の花火は、茅ヶ崎サザン芸術花火をイメージしたものと思われます。またサザン/桑田佳祐はよく野外ライブの終わりに花火を打ち上げており、コロナ禍で花火師さん達の仕事が激減してしまった際にも、全国で花火を打ち上げていました。

ほいで
呑めや歌えの迎え送り火
Stairway To Heaven!!

「Stairway To Heaven」は説明不要の名曲。レッド・ツェッペリンです。

遠い... 夏の... 恋でした
熱い... 恋の... 物語

結局、恋の物語だったそうです。ほんまかいな。

この後のアウトロでは、桑田佳祐がお経を唱えるような声で「江ノ島が見えてきた 俺の家も近い」と、自身らのデビュー曲「勝手にシンドバッド」の一節を繰り返し、最後に女性の声で「いい加減にしなさいよ」とツッコミが入り、曲は終了。45年前の栄光を引きずるようなセルフパロディ…?

ちなみに最後の最後のリフは、動揺「たきび」の歌い出しに似ているような……。

(23.10.16追記)
父親から最後のリフは「トワイライト・ゾーン」という意見をもらいました。確かにホラーな雰囲気の代名詞とも言えるこの前奏は盆ギリの世界観にぴったりです。


以上、2週に渡る盆ギリの解剖でした。
くぅ~疲れましたw これにて完結です! (懐かしのコピペ)


今週の質問:納涼!ヒンヤリした話

祭りだ納涼だ〜♪

ヒンヤリした話って、怖い話とかヒヤッとした話かと思ったらら、みんな文字通り「ヒンヤリした話」をしててびっくりしました。

ということで、おかじのヒンヤリした話。

エアコンの冷風で喉がやられました。前にも日記に書きましたが、今でもエアコンの適切な設定温度が分かりません。今年が暑すぎるせいか…。誰か、1番いいエアコンの温度を教えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?