寒冷地と私
寒さだけは本当に勘弁ならない。夏のチリだってセーターで過ごす極度さむがりの私に言わせれば、どの地域も十分に寒冷地だ。
岩手の寒さはひどかった。家もぼろくて、床と壁の間に隙間と言うには広すぎる空間があいていて、室内なのに前髪がたなびくほど吹雪いたものだ。
冬なんて生きてるだけで精一杯だったけど、楽しかった思い出もある。隣に住んでいた友人が、ある日「牛乳を光らせたい」と言い出した。寒冷地の屋外に牛乳を置いておくと発光バクテリアが涌いて光るという。
紙コップに入れた牛乳を、毎日「光らないね?」と言いながら、ふたりで覗いたのはとても楽しかった。水分が次第に抜け、春には得体の知れない何かが生えてきたので紙コップは捨てた。
それから10年くらいして、就職先で偶然捨て忘れたイカが暗闇で光っているのを見つけ「発光バクテリアだ!!」と気付いた時は本当に感動した。人生はいろんな伏線回収があるから面白い。なんの話でしたっけ?