教員採用試験の面接官が,人材採用のプロでもなく,対人面接のプロでもなく,専門教科でのプロでもないという前提は,教採の面接戦略に,大きな示唆を与えてくれます。
本日(2023年5月28日・日曜日)から,レトリカブログは,新しいカタチで,有益な情報をお届けします!
では,本日のブログの要約を!
(1)教採の面接官は人材採用のプロではない。
教員採用試験の面接の面接官は,ほとんどの場合,学校の管理職(校長・教頭),教育委員会の管理職,指導主事,センター長などです。
こういった人たちは,学校教育に関しては一定の見識を持っていますが,人材採用のプロフェッショナルではありません。
企業の人事部のような採用のノウハウを持っているわけではありません。
また,日常的に,人材採用を行っている人たちでもありません。
彼らは,リクルーター(人材採用担当者)ではないのです。
教員採用試験がある夏に,数日間だけ,輪番で面接官役が当たるという,言ってみれば,短期パートのような面接官です。
ですから,教員採用試験の面接官は,確かに,管理職としての一定の人事管理の眼はあるかもしれませんし,学校教育には一定の見識はあるでしょうが,数多くの候補者(受験者)の中から,面接を通して,優秀な人材を見抜いて採用するという専門家ではありません。
このことは,教員採用試験の面接官は,綿密な面接戦略,語りの戦略,レトリックの戦略,パフォーマンスの戦略で,うまく印象操作ができるということを意味します。
科学的に考えて,教員採用試験の面接官に,緻密に計算された面接戦略を見抜く力はありません。
もちろん,受験者側の準備がいい加減であれば,見抜かれますが,広報レベル,マスコミレベル,演出レベルで準備された面接戦略を見抜く力は,教採の面接官にはありません。
(2)教採の面接官は対人面接のプロではない。
教員採用試験の面接官は,対人コミュニケーションのプロフェッショナルではありません。
採用候補者(教採受験者)と話して,その候補者の資質や適性,能力を本当に見抜く能力を,適切に持ち合わせているとは言えません。
教採の面接官は,相手との会話の中から,真実を見出し,相手の言葉や表情から,本心をつかむ専門家ではありません。
教採の面接官は,対人コミュニケーションの素人として,完全に主観で評価しています。
面接官が変われば,評価の基準は変わりますし,ある面接官が評価することを,別の面接官は評価しないことも,多くあります。
また,教採の面接は,構造的な面接ではなく,各面接官の主観的評価に委ねられていて,その主観も,その面接官の高度な対人コミュニケーションの分析力に基づいたものではありません。
ただ,校長だから,教頭だから,教育委員会の管理職だから,指導主事だから,センター長だからという理由で,教採の面接が行われる夏に,数日間だけ,短期パートとして駆り出される,臨時の面接官です。
中には,非常に優秀な面接官となる人もいるでしょうが,一般的には,教採の面接官が,優秀な人材を客観的に選ぶことは,客観的に考えて,難しいでしょう。
対人コミュニケーションのプロフェッショナルでない人が相手であれば,受験者の方が,科学的なコミュニケーション戦略を駆使して準備すれば,面接官の心を印象操作することは簡単です。
決して,教採の面接官を軽視したり,侮辱しているのではありません。
相手が,コミュニケーションのプロフェッショナルでなければ,相手の心を印象操作することは,とても簡単であることは,科学が証明していますし,それが,マーケティング戦略や広告戦略,選挙戦略やスピニング戦略となっていることは,周知の事実です。
教員採用試験の面接官を納得させる戦略は,実は,簡単に立案することができます。
巧妙に,綿密に,科学的に戦略立案を行えば,面接官に気づかれることは,まずあり得ません。
(3)教採の面接官は,専門教科のプロではない。
教員採用試験の面接官は,概ね,2人~3人で構成されています。
例えば,保健体育教師志望者の個人面接を担当する面接官は,多くの場合,保健体育の専門家ではありません。
時に,保健体育教師だった校長がいたり,保健体育の指導主事が面接官になっていることもありますが,それは,偶然の出来事で,そのように面接官を配置することは,まずありません。
ですから,例えば,高校数学教師の個人面接の面接官が,小学校の校長と教育委員会の行政職の中間管理職であるようなことは,頻繁に起こります。
このことは,教員採用試験の面接は,教科の内容学を深く議論する場ではないということを意味します。
また,その教科の専門家であれば当然知っていることを前提として,話すことはできないということも意味します。
つまり,面接官は,その教科の素人だということを前提として,受験者は面接の語りを構成する必要があります。
ちょうど,これから,その教科を学ぶ児童生徒に対するのと同じように,素人にわかりやすく語る技術が必要になってきます。
他のプロフェッショナルの採用面接では,専門家を採用するときは,専門家である面接官も立ち会うことが圧倒的に多いのでしょうが,教員採用試験は,そうではありません。
学校教育全般には一定の見識がある面接官でも,受験者の志望教科のことは全く知らないということは,頻繁にあり得ます。
このことは,教採の面接時の語りの戦略に大きな影響を与えます。
教採の面接時の語りは,同じ教科の専門家同士の会話とはなりません。
相手が教科のことをほとんど知らないということを前提として,それでも,わかりやすく,しかも,好感・共感・好印象を勝ち取る語りにしていく必要があります。
ここでも,語りの戦略,面接戦略が必要になってくるわけです。
以上のように,教員採用試験の面接官が,人材採用のプロでもなく,対人面接のプロでもなく,専門教科でのプロでもないという前提は,教採の面接戦略に,大きな示唆を与えてくれます。
このことを理解した上で,確実に,面接官の好印象を勝ち取れる戦略を立案し,それを語りのコンテンツとデリバリーというカタチにしていくことが必要です。
これは,サイエンス(科学)であり,サイエンスの応用でもあります。
面接で,確実に合格を勝ち取りたい人は,科学的な面接戦略を立案することが何よりも重要です。
河野正夫
レトリカ教採学院