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2010全日本選手権~大学生(女子②)

☆原川 愛(日本女子体育大学)

福岡の折尾愛真高校時代には、団体メンバーとしてインターハイに出場経験はあるものの、個人では全国的にはまったく無名だった原川だが、大学生になってから、まるでジュニアのようなスタイルと、キュートな演技で、一気に伸びた。昨年までは、インカレまでは出場してもオールジャパンには届かなかったが、今年はついにジャパンのフロアに立つ。

原川

原川愛の演技からは、フロアに立てる喜び、人に演技を見てもらえる喜びがあふれている。大学3年生になってなお、チャイルド選手権に初めて出場した子どものような初々しさがある。そこが彼女の最大の魅力だ。この3年間の成長ぶりを見ても、個人選手としての厳しい練習にどれほど貪欲に取り組んでいるかが感じられる。そのひたむきさは、大学に入った時点で「まだこれから」と思えるだけの余地があってこそもてたものではないかと思う。高校までに個人で目立った実績のない選手にとって、大学、ましてや日女や東女で新体操をやろうというのはだいそれた夢のように感じるだろう。しかし、その夢を実現する選手がたまにいる。原川愛もその1人と言えるだろう。
花開く時期は人によって違う。そのごく当たり前のことを再確認させてくれる選手だ。
                               

☆長田侑里乃(東京女子体育大学)

開花する時期が遅かったという点では、原川と同級生のこの長田も負けていない。ジュニア時代の彼女は、細すぎる体で安定感のない演技をする選手だった。
高校生になってから、安定感を増しぐっと伸びてはきたが、激戦区東京にいたため、インターハイにも選抜大会にも縁はなかった。高2だった2006年のユースチャンピオンシップで決勝に残り、27位になっているが、高校までの長田にとっては大きな大会ではこれが最高位くらいだ。

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それでも、今でもジュニア時代とほとんど変わらないスリムなスタイルを武器に、大学生になってから東女で個人選手となり、ぐんぐん実績を出してきた。演技も安定し、貫禄も出てきた。大学生になった最初のころは、少し演技に負けているように見えていた時期もあったが、だんだんとやりこなせるようになってきた。期待に実体が追いついてきた、そんな印象だ。ジュニア時代の彼女を見て、今を想像できた人がどれほどいるだろうか。「素材はいい」と言われながら、さまざまな理由で消えていく選手も多いなか、よくここまで続いたと思う。
期待先行型、の選手ではあった思う。それでも、期待に追いつけるところまで頑張れば、こうなれる。その見本のような選手だ。


☆宿谷あゆみ(アミューズ新体操クラブ)

宿谷あゆみは、「落差の大きい選手」だと私は思っている。手具操作が器用で、演技に多くのリスキーな技(操作)を入れてくる、という印象を私はもっているのだが、それゆえに、「あ~あ」なミスも少なくない。そんな選手だ。
途中まで素晴らしい演技をしていたのに、途中から大くずれ、そんな演技を何回も見た覚えがある。たしか今年のインカレでもそんな演技が多かった。決して守りに入ることのない演技、はとてもいい。いいだけに、なんとかもうちょっと演技をまとめて、それなりの評価を得てほしいな、とそう思っていた。

宿谷

そんな彼女が、今年のクラブ選手権では、4種目をよくまとめた。小さなミスはあったにせよ、大くずれしなかった。その結果、オールジャパンの権利を勝ち取ったのだ。ミスに泣いた姿も何度も見てきただけに、私もうれしかった。
今年の1月、長野カップで宿谷の演技を見たとき、「この子は大学でも新体操をやるんだな」と確信した。高校卒業を目前にして、宿谷の演技はまだまだこれからやりたいことがたくさんある! という意欲に満ちたエネルギッシュな演技だったから。そのときもミスはしていたけれど。
何年も前から、巧い選手ではあった。だが、まだ彼女は登り坂の途中にいるらしい。きっともっと登れる。クラブ選手権でその可能性は見えた。これからが本当に楽しみだ。
                                  

☆庄司七瀬(東京女子体育大学)

おそらく。
今年はきつい1年だったのではないか。
インターハイ3連覇、大学に入ってからも、優勝争いの一角にいた庄司七瀬が、今年は苦しんでいる。私にはそう見えた。
ジュニア時代から本番でのミスが少なく、安定感のあった庄司が、今年は試合で何回か大きなミスを犯している。庄司らしくないミス、だった。
チャイルドのころからずっと、いつも一生懸命で、演技中には輝くような笑顔で、いつも「上手な選手」だった彼女がこんな風に苦しんでいるのを見たのは初めてのような気がする。

庄司

ただ、成績がどうだとしても、本来の「庄司七瀬」はそれほど揺るがないのではないかと思う。少なくとも、私が思っていた庄司はそういう選手だ。工夫と努力のうえに、いい結果がついてきたこともあった。もちろん、そのときはそれが嬉しかったに違いない。だが、庄司は「勝つこと」をもっとも望んでいたのだろうか。私にはそんな風には見えなかった。
高校時代の庄司は、いつも「もっともっと自分が向上すること」を望んでいるように見えた。その結果が、インターハイ3連覇にもつながっていただけ、なのだと思っていた。
庄司七瀬は、演じたいものをもっている、こうありたいという選手像をもっている、それはかならずしも「勝ち」にはつながらないかもしれないが。庄司はそんな選手だと、私は信じている。ほかの選手がどうだろうが、誰がどんな点数を出そうが、それは関係ない。自分は自分の道を行くだけだ、と覚悟を決めれば、きっと庄司七瀬は再び輝きを放つに違いない。

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シーナ
20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。