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2024年4月に読んだ本の一言感想/印象に残ったフレーズ

 新年度で部署を異動して仕事が少し忙しくなった。帰りの時間が遅くなったので読書ペースも少し落ちた。


1.「しろいろの街の、その骨の体温の」/著:村田沙耶香

 小学生~中学生くらいのときの衝動的な行動が、無意識的に他人を傷つけてしまうことってあるなあと思った。主人公結佳の行動は突飛ではあるけど、そのまわりの友達間の人間関係や、環境が変わってクラス内カーストが変化するところとか、読んでてつらいけどリアルで面白かった。

2.「黄色い家」/著:川上未映子

 2024年本屋大賞候補作。結局「成瀬は天下を取りにいく」が受賞したけど、成瀬は本屋大賞前からかなり話題になってたし、最近の受賞作の傾向から、黄色い家が大賞かなと勝手に思っていたので、対象発表前に読了。普段読むのはどんなに長くても300ページくらいだから、本作は長くて読むのが大変だった。
 多分こういうジャンルの解像度が自分は高くないと思うのだけど、正直設定は割と最近よくある親に虐げられて第三者に救われる系だった。ただ、よくあるのと違うのは、似た境遇の同年代との関係で救済され、そして、最後はその関係すら破綻するところ。その後、主人公は見捨てたはずの黄美子さんを気に掛けるのだけど、この辺まで行くと自分にはちょっとどういう心境なのかわからず、消化不良。

3.「いい子のあくび」/著:高瀬隼子

(略)休み時間中に話し掛けないでほしい、と心が一瞬でささくれてめくれる。Jさんは「そういえばさ」とニュースサイトで仕入れたばかりの話を始める。仕方ないのでわたしは驚いたり悲しんだり反応を与える。この人死なないかなあ、とふいに思う。最近はまっているというドラマのあらすじを話しているJさんに相槌を打ちながら、さりげなく左右を見渡す。I課長もMさんもWさんもE主任もFさんも、みーんな、死なないかなあ。

「いい子のあくび」単行本P.138『お供え』より引用

 結論としては、バージンロードから嫌だったから、つまり、初めから嫌だったということになる。直訳して処女道であるそれを、父親の腕に手を添えて歩き、道の先で待つ新郎に引き渡される図。新婦、物みたいだなあ、と最初に思った。

「いい子のあくび」単行本P.156『末永い幸せ』より引用

 表題作も好きだけど、2編目3編目もかなりエッジがきいていて好きです。

4.「アイスネルワイゼン」/著:三木三奈

 序盤からよし子を車でコンサート会場まで送るあたりまでは、抗えない嫌な感じと、取り返しがつかないことが起きそうなドキドキ感ですごくおもしろかった。その後、優の家でのホームパーティで少し話の起伏が落ち着いた。

5.「男も女もみんなフェミニストでなきゃ」/著:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ、訳:くぼたのぞみ

 先月に引き続き、「フェミニズム」の話をするのってなんで気まずいんだろうという率直な疑問から読んでみた。(少なくとも自分の受け取りとしては、)内容的には「私は男でフェミニストです」と同じレイヤーで、これまでの女性としての不遇を自身の体験として語った話。そういうお話を世間に共有していくこと自体は大事だと思うけど、自分の関心としては、そこはわかっているから、次のステップの難しさを知りたかった。ただ、読んでいて思ったのは、自分が知りたいのは、たぶん反フェミニズム側の思考なのではないかと気づいた。なので、そっちの方面でまた何か読んでみよう。

6.「うるさいこの音の全部」/著:高瀬隼子

 作家活動をしていることが職場の同僚にばれ、奇異の目や偏見から、それまでの人間関係が変化していく表題作。作家である主人公は、作品内容と作家の人格の同一視化、作家と中の人の人格の混同、作中表現の意図と受け取られ方との齟齬によって苦労する。そしてそればかりか、自分自身も周りからの影響を受けてか、作品に現実世界の要素が入り込んでいくという、なかなかシンプルでは終わらないお話。

7.「許されようとは思いません」/著:芦沢央

 月の半ばまで純文学続きだったので、お口直しにイヤミスを読もうと思って読了。安定の嫌な話が続く短編集だったけど、自分としては、「汚れた手をそこで拭かない」の方が好みかな。

8.「列」/著:中村文則

9.「彗星交叉点」/著:穂村弘

 紹介文に「偶然性による結果的ポエム」についての考察とあるとおり、街中で聞いたり見かけたりした、意味不明な言葉について、それを考察するエッセイ。一気読みするのがもったいなかったので、ほかの本と並行してゆっくり読んだ。

10.「くるまの娘」/著:宇佐見りん

11.「きれぎれ」/著:町田康

 第123回芥川賞受賞作。正直、最後のあたりまで、何が何だかよくわからないまま物語が進んでいき、ラストで急に霧が晴れて視界が良くなるような不思議な読書体験。最近何冊か芥川賞受賞作を読んだが、それらのどれにも全く似ていなくて、こんな作品も受賞するんだと目からうろこ。ほかにも町田作品を読んでみたくなった。

その他(漫画)

「ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ」/作:魚豊

『チ。』の魚豊が描く、恋と陰謀ーー!!
あの人に、好きな人はいるのかなーー
あの時話していた言葉の意味ってーー
抱いた恋心が溢れるとき、
世界を動かす謎に迫っていくーー!
『チ。』『ひゃくえむ。』の魚豊が描く、
圧倒的新機軸、前代未聞のラブコメストーリー!!

小学館HPより引用

 第1話を試し読みして、即単行本購。1話から面白すぎた。
 論理的思考力に自信を持っている主人公渡辺が、意識高い系のハイスぺ女子に出会い、彼女を守るため、そして自身の不遇の真相を突き詰めるために、陰謀論的秘密結社にはまっていくお話。

「あと一歩、そばに来て」/作:武田登竜門

この恋は、ふたりだけのもの。
拐かされた王女と指のない世話役の男、ふたりの声なき囚われの時間。
平凡な女性とストーカーで変質者の男の10分間。末期癌と宣告された最愛の妻との半年間。

公開即100万PVを記録した『大好きな妻だった』を含む計7篇の作品を収録し224ページの大ボリュームで、待望の書籍化。

KADOKAWA HPより引用

 武田登竜門さんの短編集。絵が自分の好みだったので、試し読みしてみたところ、お話も面白くて電子で購入。どの話も、少し謎があって最後に意外な結末が待っている、広義のミステリな雰囲気。収録策の中では『楽園』が最も好みで、米澤穂信の短編集「満願」にも通ずるような、ちょっとブラックな結末が良かった。
 武田登竜門さんの長編、「BADDUCKS」と「DOGA」も購入したので、今度一気読みする。

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