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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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2025年1月に読んだ本の一言感想


1.史上最高に面白いファウスト/著:中野和朗

あなたはなぜ、名作『ファウスト』を、
最後まで読み通すことができないのか?

理由1 これまでの翻訳はエリート教養人向け、しかも誤訳があったから。
理由2 これを読めば人格が向上する、という間違った考えが広まったから。
理由3 ファウストはエライ人、という思い込みがあったから。

文豪ゲーテが「ファウスト」にこめた人生の真理とは、

「破滅へ向かう男社会を救うのは、女性だ」

この名作は、現代に通じる一大エンターテインメントなのです!

ゲーテが人生60年をかけた名作『ファウスト』は、「努力し続ける教養人・学者ファウストの物語」とされてきました。
しかし名作をひもとけば、欲望のままに少女を騙すわ、捨てるわ、殺人を犯すわ――ただのろくでなしと何が違うのか?
実は、「努力の人ファウスト」のイメージは、誤訳にもとづく虚像だったのです。
ゲーテを愛して60年の信州大学名誉教授が、楽しく解説しながら原作を一気に紹介。現代に通じる新しいファウスト像を提示します。

出版社HPより引用

 昨年末に読んだ「ゲーテはすべてを言った」に感化されて、作中で取り上げられていた「ファウスト」を読んでみようと思い立ち、とはいえなかなかとっつきにくそうだったため、原作を解説しながら紹介してくれる本作を手に取りました。
 出版社紹介文にもあるとおり、独文学研究者の著者がファウストを最後まで読めない人向けに書いた本だからか、楽しくさらっと読むことができた。

2.回転草/著:大前粟生

楽しくてばかばかしくて切実な絶望で、今にも破裂しそう。
読んでる私も破裂しそう。せーのでいっしょに破裂したい!
――藤野可織

「たべるのがおそい」で衝撃的な話題を呼んだ「回転草」、冬休みに母と妹とともに亡き祖父の湖畔の家で過ごした恐怖の日々を描いた「夜」、キリンになったミカを解体する描写からはじまる「彼女をバスタブにいれて燃やす」、記録的な吹雪の夜に現れたユキとの氷の生活を綴った「海に流れる雪の音」をはじめとする、愛と狂気と笑いと優しさと残酷さとが混在した10の物語。

出版社HPより引用

 私は大前粟生さんを文藝に掲載されていた「物語じゃないただの傷」で知って興味を持って、「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」、「きみだからさびしい」と読んでいったたのだけど、本書に収められた短編はどれもそれら3作とは異なって、不思議なホラーっぽいテイストのものが多かった。
 ウィキペディアで調べる限りでは、本作がデビュー作なのかな。これはこれで面白いけど、前に読んだ三作のような作品に出会いたいので、他のも読んでみようと思う。

3.絞首商會/著:夕木春央

謎が謎を呼ぶ怪死事件。元泥棒が導く真相に瞠目せよ。

和洋入り交じる大正の東京。
秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる
血液学研究の大家・村上博士が刺殺された。
不可解な点は3つ。遺体が移動させられていたこと、
鞄の内側がべっとり血に濡れていたこと、そして、
遺族が解決を依頼したのが以前村上邸に盗みに入った元泥棒だったこと――。
頭脳明晰にして見目麗しく、厭世家の元泥棒・蓮野が見つけた
四人の容疑者の共通点は、“事件解決に熱心過ぎる”ことだった――。

出版社HPより引用

 「方舟」の著者・夕木春央さんのデビュー作。「方舟」もそうだったけど、特殊設定モノと思わせておいて本格モノとしてロジックの解決につなげるのが上手い。「方舟」ほどのどんでん返しはないものの、容疑者全員がとある行動原理に従って動いていたというのは、ミステリ界隈でもなかなか見かけない仕掛けだった(捉え方次第では、アンフェアという意見もありそう。)。

4.ハイパーたいくつ/著:松田いりの

迷惑系給金泥棒として職場で疎まれている「ペンペン」。鬱屈した毎日がついに限界を迎えたとき、壊れた言葉が壊れた風景を呼び起こす。リリカル系日常破壊小説、爆誕!第61回文藝賞受賞作。

出版社HPより引用

 掲載されている文藝で読みましたが、本当にお気に入り過ぎて著者応援のために単行本も購入。私の今一番期待の作家さんです。
 初読のときはジェットコースターの速度でジャングルクルーズに乗っているようで(例え合っているか分らんが)、作品のパワーに振り回されながらあっという間に読み切ってしまったのだけど、あらためて再読してみると、いいこと言っているフレーズがたくさん見つかった。出版社あらすじの「リリカル系日常破壊小説」とは言い得て妙で、初読は「日常破壊」に気を取られていたけど、再読で「リリカル系」に気付けた感じ。

5.プロジェクト・インソムニア/著:結城真一郎

睡眠障害(ナルコレプシー)のせいで失業した蝶野は、極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者となる。極小チップを脳内に埋め込み、夢を90日間共有する――。願望を自在に具現化できる理想郷(ユメトピア)は、ある悪意の出現によって恐怖と猜疑に満ちた悪夢へと一変する。次々と消えてゆく被験者たち、はたして連続殺人鬼の正体は――。驚愕の真相に涙が落ちる。最注目の新鋭作家による、大満足の長編ミステリー。

出版社HPより引用

 書店系のYoutubeで紹介されていて面白そうだったので購入してみたが、うーん、自分はミステリをあまり楽しめなくなってしまったのかもしれないと思った。なんだか事件とその解決のために舞台設定が用意されて、人間が動いている感じがしてしまった。

6.おわりのそこみえ/著:図野象

「感動、アホか。そんなもんはいらんのじゃ、暈け。これは効いた。効きまくった」(選考委員・町田康)。美帆、25歳。買い物依存で性依存――。第60回文藝賞優秀作。

「私に明日なんて必要ないし、夜は明けないほうがいい。」(本文より)
スマホで消費者金融のアプリとマッチングアプリを交互に見る生活を送る、美帆、25歳。今を生きるため人生を手放し、地獄の底の絶望と希望へと爆進する、衝撃の問題作。町田康、喝采!

出版社HPより引用

 「ハイパーたいくつ」が好きすぎて、文藝賞が自分に合っているのではと思って購入(本作のほか、日比野コレコさんの「ビューティフルからビューティフルへ」も購入した。未読だけど。)。
 「プロジェクト・インソムニア」が自分の中で若干消化不良だったので、本作の生きづらさを抱えた主人公がすごくよかった。とはいえ、本作全体でみると、家族パート、アメ・ナムちゃんパート、宇津木パートのだいたい3つで構成されていて、どれも割とずっと同じテンションで主人公と相手との関係が大きく変わったりもしないので、少し単調に感じてしまった。
 最後は、求めていたアメ・ナムが離れてしまい、拒絶していた家族・宇津木に向かっていくラストシーンで、それまでの対比になっているのは面白いと持った。

7.菜食主義者/著:ハン・ガン、訳:きむ ふな

ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―
 3人の目を通して語られる連作小説集。

出版社HPより引用

 ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの代表作(?)。ハン・ガン作品は未読だったため、あらすじからしてもっともとっつきやすそうだった本作から読んでみました。
 あらすじにあるとおり、ある日突然野菜しか食べなくなり植物になりたいと願うようになった女性を、その周りにいる3人の視点から描く連作短編集。
 自分は、翻訳モノは読みにくくて苦手な場合が多いけど、本作は結構スムーズに読めた。一見、菜食主義となったヨンヘが特異な人物のように映るけど、読み進めていくとその周りにいる人も普通とは言えない行動をとりはじめる点が物語上の肝かと思うけど、その特異性のフォーカスがヨンヘから各章の視点人物へシームレスに移行していくのが上手いし面白かった。

(その他)愛すのぢゃーにぃ/著:日比野コレコ

容姿に屈託を抱えるまつりと、社会から疎外されたハルタ。革命が不可能な世界を「箱舟」で渡ろうとする若者たちの超現実的冒険譚シュルレアル・アドベンチャー!

出版社HPより引用

 新潮2024年12月号に収録の本作。日比野コレコさんは本作で知ったけど、文章表現の美しさが圧巻だった。
 本作を読み終わった日の仕事帰りに、さっそく書店で著者の既刊二作「ビューティフルからビューティフルへ」、「モモ100%」を購入しました。

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