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ルパン三世 2ndの美しさ Ⅰ OPの構図

2ndの北原健雄さんの作画の素晴らしさは何度語っても語り切れない。
2ndの成功は、キャラデザや美術、声優、音楽など総合演出の部分が大きいと思う。

映画はよく総合芸術と呼ばれるけれども、アニメは作画から一から作り上げることで更にその上を行く。視覚の総合芸術であることをルパン三世は教えてくれる。


2ndの美しい作画がルパン三世の人気を決定的なものにしたと思うのだけど、1stの大塚康生さんの話ばかり聞かれるのはなぜだろう。国内だけでなく海外までもいまだに高い人気を誇るのは、2ndの時代を経ても古びない圧倒的な画力と、すべてにおいて際立ったセンスのよさだと思うのだけど。


ルパン三世と言いながら、パチもんのような田舎臭さもあった原作漫画や、後半はハウス子供劇場のようなお子ちゃま化した前作から、ジャン=ポール・ベルモントをモデルにし、オシャレなジャズフュージョンと色気のあるキャラデザでルパンをスタイリッシュで洗練されたイメージでまとめ上げたのは、北原さんの高度なテクニックがなければとても無理だったと思う。


パリのセーヌ川河岸のトンネルのルパンと不二子
2ndの3パターン目のエンディングの最後に出て来るこのシーンが好きな人とても多いと思う

私もこのシーンこそルパン、ルパンの大人の世界を感じて大人になることに憧れたものです(笑)

ルパンの功績の一つに、大人世界への憧れを子供たちに抱かせてくれたのもあると思う。それは大人への入り口に立つ思春期の子供たちにとってはすごく大事なことで。


盗んだバイクで走り出す人たちもいるわけですから
外に対しては反抗的に、逆に内側の世界に閉じこもりがちな悩み多い時期に、ルパン三世は大人になるとこんな楽しいことが待っているよと教えてくれる

タバコに酒、外車やビリヤード、海外旅行、洋風の大きな家、(不二子の)ファッション、ロマンス

2ndにはきらびやかな世界が詰まっている。


1stよりも子供向けに作られたのに、子供がほとんど出て来ない。ゲストヒロインもマダムだったりオジサンだったり、最近のテレスペの方が子供ばかり出て来る。

大人しかいない世界を意識して作られていたからこそ、犯罪アニメでも子供に悪影響を与えることなく、大人だけの特権として、またそれは大人の世界への憧れとして、子供に成長を促すように作られている。

2ndでは世界中を舞台にし、まるで旅番組のように海外への興味を刺激し広い世界へ好奇心を刺激する。男女関係もフェアで実力主義。泥棒を主人公にする代わりにとてもリベラルで、毎回主要人物が全員登場し、ドリフターズのようなファミリー感、アットホームな安心感がある。


セーヌを背景に不二子がルパンの壁ドン
ルパンではなく不二子から

本編では子供向けにルパンが不二子を追う。コミカルにやってるけど、EDでまったく反対の二人の関係を垣間見せる。子供ながらに見ては行けないものを見てしまった気分。


ネグリジェのような薄着をした不二子が
はためく長い髪と長い手足でルパンを捉えて離さない
男は両手をズボンのポケットに入れ余裕を見せながらも
女の誘いに後ずさりするかのように壁に膝を立てている

きっとまんざらでもない顔をして
見つめ合いながら洒落た会話
恋の駆け引きを楽しんでいる

どうすれば男が喜ぶか女はすべてわかっていて
そんな女に男は抗う術もない・・・


OPは男がテーマ(男の美学)
EDは女がテーマ(愛の歌)

で作られてると聞いて震えました・・・

男女の生き方の違い、想いの違いが
ルパンのOPとEDで語られているわけですね

OPとEDで本編では出来ない仕掛けをする
それまでキャラクターやスタッフの紹介でしかなかったアニメのOP/EDを
コンセプトを持って作ったのは画期的

ルパン三世には当時起こったフェミニズムとかジェンダーの問題も大きく反映されてて、男とは何か、女とは何か
子供向けのアニメを使って大人たち、若者たちの思いやジレンマをさらりと描いている

またルパンがアニメ化され長期シリーズ化された時期でもあったから、不二子のキャラがルパンに対して過剰にキャラ立ちしたのかなと思う



不二子の流れる髪と、壁に伸ばした腕
そして髪と平行して流れるスカート
ルパンの折り曲げた足
そしてその下には長い影

二人共長い手足でスタイル抜群



これらが斜めのラインで平行している

これに対して二人の長い脚とレンガや建物、手すりの脚の垂直のライン
手すりの脚は、ルパンと不二子の脚と並行して少し角度がついている


人物のラインが風景のディティールのラインと調和しているので
人物が風景の一部となった見事な構図になっている
だからこそ絵画のように、写真のように
このシーンが一枚の画として目に焼き付く

北原さんは人物をただ描くのではなくて、絵画のように構図を計算して描いている

二人の位置を少し右へとずらし、センターフォーカスをトンネルの出口に置いて、見るものを奥へと引き込む。
主役はパリのセーヌ川とその先の街並みの風景で恋人たちは脇役。


なぜなら彼らは隠れて楽しんでいるから。密やかに逢瀬を楽しむ恋人たちが街並みの一部となって同化している。

はためく女の髪の毛にスカート
トンネルの中を風が通り抜けているのがわかる

不二子からルパンを見つめる視線
ルパンから不二子への視線も、絵の構図のライン上にある


恋人たちの美しさ=街の美しさ
またその逆でもある

フランスの印象派の絵画のような構図と淡い色彩

これはパート5のエンディングで、セーヌを望む二人でオマージュされてる。


こちらも素敵ですが、心に焼き付くという意味では2ndの方が印象的なのがわかると思う。記憶に残るのは2ndの方

でもEDで本編で描き切れないアナザーストーリーを持ってくるのは、2ndのOPやEDで仕掛けをするのと通じるものがあります。

プロデューサーによると「不二子の夢」ということらしいですが、それは銭形もいる酒場のシーンで、後はルパンと不二子の同棲時代の過去になっています。


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