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ルパン三世 「殺し屋はブルースを歌う」

これは原作をベースにしていて、自分も読んだ覚えがある。ルパンは殺し屋プーンとは実質対決していない。なのに男同士の熱い勝負、熱い駆け引きが繰り広げられていて、過去の男と今の男の一歩も引かない熱い想いがぶつかり合っている。

奪い合い牽制し合う中で、一人の女を巡る想いは通じ合うものがある。プーンは恋敵のルパンを「ルパン君」と呼び、ルパンはプーンを「あんた」と呼ぶ。まるで相撲の土俵際のようにジリジリとせめぎ合う中で生まれる男同士の共感とリスペクト。不二子に対して本気なのは二人共変わらない。


プーンは不二子がたとえ死んでもルパンに渡すつもりはない。不二子が死んだら自分も死ぬ覚悟でいたのかもしれない。半ば心中のようなもの。たとえ心中しなくても、不二子を死なせたらルパンに殺される。ルパンを敵に回し、瀕死の不二子を連れている限り、自分の死も覚悟しているはず。それでも不二子を渡したくない。ルパンの元へ戻したくない。


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深々と座るプーンのアングルがいい
せっかく不二子を奪ったのに憂鬱な顔でうつ向いてる
まるでこの先の悲劇を予感しているような逃避行


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追うルパン
小池ルパンのようなビビットなカラーリングと
コントラストの強いシャープな作画
今見ても全然古くない


不二子を連れて山荘に立てこもるプーンとその仲間。
2nd以降のルパンならさっさと突破しそうな包囲なのに、手こずるルパンたち。
負傷した不二子を人質に取られていること、敵が不二子の元カレだからか。


過去の男であり不二子との思い出に生きるプーンと
今の男であり今を不二子と生きるルパン。
この男同士の勝負は実は勝負になっていない。

不二子がかつて愛した男をルパンは殺すことは出来ない。
プーンがルパンを殺すことは出来ても。


だからルパンはプーンを倒さず、不二子を抱きかかえながら背中を見せる。
そんな危険なことありえないのに

銃の世界では敵に後ろを見せたら負け
だからゴルゴ13は絶対に背中を見せない
ルパンが敵を背後からでも撃つのは別にルパンが悪いわけじゃない
勝負の世界では背後を取った者の勝ち
背中を見せた時点で勝負はついてる


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ルパンとプーンのどちらを取るか
ルパンは命を懸けて不二子に決めさせた
男同士の勝負は勝負になっていない
だから女が決めるしかない
その酷な選択をルパンは不二子に迫った
プーンに背中を見せ、挑発した


強引にでもよりを戻したくて追いかけて来たプーン
不二子もうわ言でプーンの名前を呼んでいた
不二子も未練があるかもしれない

だとしたらルパンがプーンを殺して解決する問題じゃない
どちらの男を選ぶか、不二子が自分で決めなければいけないこと
ルパンが殺してしまったら永遠に解決しない、未練が残るままになる
だからルパンはプーンを殺せなかった
過去との決別を不二子自身の手でやらせた


そして不二子が自分を選ぶだろうこと
不二子を救おうとしている自分を選ぶだろうことは
ルパンにはわかっていたたろう

敵は不二子を自分のために殺そうとしているのだから



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「ルパンは今も燃えているか」


撃ったのは不二子ではなくルパン
パンチ先生の原案


「いつまで経ってもわかりゃしない。女心ってやつはよ」

なぜ不二子ではなくルパンが撃ったかというと、プーンを殺して悲しむ不二子を見たルパンが、今度は自分が殺す役を引き受けることにしたからだという。なのに逆上した不二子はルパンを撃ってしまう。

かつての恋人を自らの手で殺した不二子が悲しむ姿を見て、ルパンが代わりに悪役を引き受ける。

不二子に辛い決断させたことを改め、自分が不二子の痛みを背負おうとするルパンの男らしさ。ルパンの愛。

どこまでもロマンチストな先生らしいリメイクだと思う。



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