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ルパン三世 「殺し屋はブルースを歌う」Ⅲ プーンと不二子

久ぶりにこの回を視聴してみたのだけど、プーンが不二子を奪う理由が「不二子と活動していた時の充実感を取り戻したい」というもので、プーンのエゴでしかなかったのを今更気が付いて、私少し間違っているかもしれないと思って、また考え直してみた。


プーンの言葉通りだと、プーンは自分のことしか考えていないエゴの塊だけども、その割には言葉とは裏腹に破滅に向かっているのはなぜだろう?


不二子が負傷して虫の息だから不二子を奪えたけども、もし事件が起きてなかったら不二子をどうしたのだろうか?

不二子はプーンにどんな態度を取ったのだろうか?


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プーンとの愛の日々。
瀕死の不二子を前に、二人の幸せな思い出を回想するプーン。

その想いを受け止めつつも、不二子の記憶はひたすらプーンに撃たれて海へ落下した恐怖が繰り返しフラッシュバックしている。


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崖から崩れ落ちる不二子のねじれた首筋と折れ曲がった腕、そして大きくボリュームのある胸が、落下の恐怖とスピードを生々しく伝えている。崖から落ちるシーンでこんなアングルや姿勢は観たことがない。


作画の大塚さんの不二子のキャラデザは、昔のアニメらしく人物描写に「重さ」があって、キャラの動きに体重や重力のような重みを感じさせる。

それは不二子のはち切れんばかりの豊満な肉体美だったり、うねるような豊かな髪の毛だったり、落下の重力だったり、重苦しい情念として現れたりする。


スタイリッシュで軽い2ndやその後のどの不二子よりも汗や涙が生々しく、アニメの世界を飛び出して不二子だけが実在しているようなリアリティ。

昨今のアニメのパーツを無駄に強調したエロスよりもセクシーで、実物に近く描いた方が実際のエロスを表現出来るのだから、よりセクシーであるのは当たり前。

過度に強調した方が現実から離れ、リアリティがなくなり、エロスも消えてしまう。


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この後不二子はプーンの想いにあふれる涙を流す。


再会したプーンは不二子を愛していたのか、それともただかつての自分を取り戻したかっただけなのか。


回想シーンで、プーンと逃亡中に不二子は撃たれている。きっと追手に捕まり、白状したのだろう。助かるために組織を売ったのかもしれない。

だから組織の裏切者として、プーンは仲間の前で不二子を始末しなければならなかった。


結局プーンも組織を追われることになり、かつて不二子とコンビを組んでいたような華々しい活躍が出来なくなる。

失意の中で不二子と過ごした日々を忘れられず、女を追いかけ強引に奪い、瀕死の状態に追い込んでいる。


なぜプーンは不二子を無理矢理奪わなければならなかったのだろうか?

不二子を撃った自分がまた不二子とやり直すのは心の底では無理だとわかっていて、だから誘拐のような強引な行動に出たのだろうか?


不二子にしてみれば、どんなに愛していても、非は自分にあったとしても、組織の側に付いて自分を撃った男をまた愛せるだろうか?

殺されそうになって、命からがら逃げだした過去を水に流せるだろうか?


原因は不二子にあって、組織によって別れさせられた二人だけども、ルパンなら返り討ちにするか、一緒に海の底に飛び込んででも不二子を守っただろう。絶対不二子を撃ったりしなかったと思う。


とは言っても、ルパンはスーパーマンだから、比べるのは酷なことで。組織の駒だったプーンがあの時どうすればよかったのか。


ルパンと違って男の弱さがあるプーン。
そんな男を不二子が愛したのは想像がつく。

そしてその弱さのために不二子を追いかけ、果てようとしたのも。


弱い男は自分を亡ぼす。

だから強い男が好き。ルパンが好き。


不二子が過去の経験からルパンを選んだとしても不思議ではなく、ルパンを愛するのにプーンとの過去は不可欠だったと思う。


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1stの不二子の悪女ぶりは1stの描写が泥臭いのもあって、2ndよりも生々しい。

2ndの不二子はもう成り上がっていて、悪事にも余裕があるけども、1stの不二子は成り上がるためならどんな汚いことにも手を出して、必死に生きていた感じがする。


不二子のような悪女もプーンのような男を愛した過去があって、そのために二度も死にそうになったのは、不二子という女を理解するのにとても説得力がある。

どうして峰不二子という女が生まれたかを知るのに。


この世界で生き延びるためには、不二子のような女は、ルパンのような強い男でなければ、命が幾つあっても足りない。

そして不二子のような女でなければ、ルパンの傍で生き延びることは出来ない。


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結局冒頭のプーンの言葉は、男の強がりで、不二子の喪失に耐えられない自分の弱さの言い訳のように聞こえる。

たとえその言葉が身勝手さに満ちていても。


不二子とやり直せないなら不二子が死んでもいい、心中するくらいに思いつめたプーンは、愛する女を撃ってしまった、守れなかった後悔もひどくあったのかもしれない。


誇り高きプーンが、愛した女を撃って自分は助かろうとした、その裏切りに自分自身が許せなかった、耐えられなかったとしたら

その苦しみは、不二子を失った辛さをさらに耐え難いものにしただろう。

本気で愛していればいるほど、不二子を傷つけて別れた苦しみは、不二子以上だったのでは。


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プーンの強引さというのは、心中覚悟で逃避行したり、不二子の前で死ぬこと、不二子に殺されることで自分の過去の罪に対する罰であり、不二子を傷つけ別れたことへの許しを乞う行為でもあった。

どんなに勝手な理由と行動でルパンたちを苦しめても、最後まで憎まれることがないのは、その哀れさのため。

西部警察の渡哲也のような強面なのに、女が居ないと生きて行けない程思い詰めたのは、相手が不二子だからか?


不二子の気持ちも容態もまるで無視した強引さで、殺されても仕方ない「悪役」として登場したプーン。

「不二子とまたやり直したい」ではなく「かつての自分を取り戻したい」という身勝手極まりない動機と、不二子の苦しみや生死を無視した無茶な行動は、やり直すことなど到底出来ない程深い溝と傷が二人の間に横たわっていたからかもしれない。


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そしてルパン。

もしルパンが本当に不二子のことを愛していたら、あの時プーンを追い詰めるべきだったのか?

プーンがルパンから奪ったように、ルパンがプーンから奪ったのは、そのためにプーンが死んだのは、本当に正解だったのか?


二人の男が一人の女をまるで自らの所有物のように扱い、そしてどちらも譲らなかったからこそ、誰かが犠牲になる最悪の結末になった。


一見するとルパンは不二子を救ったヒーローだけども、やっていることはプーンとさほど変わらない。

二人の男の諍いによって、不二子の傷はどんどん深くなり、争えば争うほど不二子も追い詰められた。

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