【ミニ小説】ニッポンのヒーロー
正義のヒーローといえばウルトラマン、仮面ライダー、ゴレンジャー。ただそれは地球外生命体と戦う場合がほとんど。基本的には人間の味方である。
これから出てくるヒーローは人間をやっつける側だ。ただし全人類が敵というわけではない。それをこれから説明する。
第一章 31人
コロナ禍真っ只中の2021年夏、ネット活動者の誕生日を祝うため31人が集まって宴を開いたとの情報連絡。
ニッポンのヒーローはすぐさま動画コメント欄、亀山ツイッターやヤフコメに駆けつけた。
「自粛しろ!」「皆我慢してるのに」「最低だ」
そして必要とあらばテレビのワイドショーにもニッポンのヒーローは登場し31人を攻撃した。
ニッポンのヒーローのおかげで31人はネット活動を休止した。ニッポンに平和が訪れたのだ。
第二章 未成年
ネット活動者が未成年を家に連れ込み性行為に及んだとの情報連絡。
ニッポンのヒーローはすぐさま当該活動者の動画コメント欄や、ツイッターやヤフコメに駆けつけた。
「もう顔も見たくない」「今すぐ消えろ!」「なんで逮捕されないのかな」
一方で庇う人間もいる。
「信じて待ってる」「そんなことするわけない」
ニッポンのヒーローはそのような人間も駆逐する。
その後、美人局疑惑が浮上すると
「騙されてたのか」「やっぱり」「だと思った」など情勢が変わりつつあった。
しかしニッポンのヒーローにも意地がある。
「いやいや連れ込んでる時点でアウトだから」「大人なのにそんなこともわからないのか」「やってないからアウトという訳ではない」
性行為を攻撃していたが、そのものが無かったとわかっても攻撃するのがニッポンのヒーロー。
ネット活動者は半年間活動を休止した。
辛勝ではあったがニッポンに平和が訪れたのだ。
ヒーローが絶対にやってはいけないことは何か?
それは自分の意見を変えないことだ。違うと分かっていても勝つために戦わなければいけない。そうプログラムされているのだ。
まだまだニッポンはあぶない国だ。
【つづく】