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年収1,000万円でも150円のパンが買えない話。「会社員を待ち受ける8倍希少の罠」


趣味とは、「私的な研究」のことだそうです。

私は経営コンサルタント・中小企業診断士として、経営者の方々やマネジメント層、個人事業主、大企業の子会社社長たちとお話しする機会に恵まれました。その中で、以前に比べて「成功」よりも「幸せ」を求めている人が増えてきたように感じています。

また、私自身
・「幸せになること」
・「幸せのために成功を利用すること」
・「幸せと成功を両立させること」
"人の幸せ"という幾らでも個別解のあるものに、どうしても興味があり、つい考えてしまうのです。

これが私の趣味であり、「私的な研究の対象」なのです。


何故こんなことを考えるようになったのかについて

数年前、自分自身が初めて年収1000万円を超えた時に、自分では「幸せになる(≒生活を良くする)」ために努力をしているつもりだったけどいつの間にか「幸せとは関係ない違うゲームをしていた」というショッキングな気付きがありました。

それから「幸せになるとはどういうことか」、「どうすれば自分は今よりも幸せになれるのか」を真剣に模索するようになりました。

今回はその研究の導入編ということで、きっかけになったそのショッキングな気付きについて書いていきます。

「残業時間20時間以内・年収1,000万円」という目標

当時、私は『30歳までに残業時間20時間以内で、年収1,000万円以上になる』という目標を掲げていました。

私は個人事業主と会社員の二足のわらじだったため、残業という概念は正しくありませんが「週40時間(1日8時間 ✕ 5日)を超えた分は残業」と考え、それが月間で20時間以内に収まる状態を軸にしていました。

というのも私は20代半ばに子供が第一子、その後すぐに第二子がうまれ、30歳時点だと二児の父として育児に向き合う必要がありました。

当時まだ少なかった男性育休を取得したり、育児には向き合うようにしてきました。

それは「育児に向き合うべき!」というべき像から来たものではなく、私は「家族と幸せな時間を過ごすことが、私の人生の目的だと思っているタイプ」の人間で「やりたいからやっている」というものです。(そうは言っても育児の大変さというのは重々感じておりますが…)

そういう背景もあり、月20時間以下の残業時間にはこだわりました。

さて「30歳で月間残業20時間以下で年収1000万円」、残念ながら30歳の誕生日時点では目標達成はできませんでしたが、ほどなくしてこの目標を達成した時、もちろん、とても嬉しい思いが込み上げてきました。

6枚切り100円のパン

目標を達成したその日、小市民の私は、いつものように近所のスーパーに朝食用の食パンを買いにいきました。

私は毎朝「6枚切り100円」の山崎パンを食べてきました。

年収1,000万で6枚切り100円の山崎パンだなんてケチな人間だ!と思う方もいるかもしれません。私の家族は共働きのため、いわゆるパワーカップル的な収入はあるのでしょう。ただ私は生活レベルをあまり引き上げないことに喜びを感じるタイプなので、独身の頃から今でも同じような価格帯の生活を行っていました。

しかし、年収が目標の1,000万円を超えたので、少し浮かれて、今日はちょっと別のパンでも買おうかなと思い、スーパーのパンコーナーを眺めました。

さて、ここで年収1,000万の人間というのはどれぐらいのパンを買って良いものなんでしょうか。

年収1,000万円の希少性

このデータによると30代で年収が1,000万円以上は全体の1% ほどだそうです。
対して年収が600万円以上は8% ほどです。

このデータでは「年収1,000万円」は、「年収600万円」の8倍希少であると言えます。

30代 1,000万円以上の割合は約1.2%程度

一方で、本当に当然のことですが、実際の数字で比較すると「600万」と「1,000万」という数字はそんなに大きな違いはありません。1.67倍です。さらに所得にしては累進課税で手取りも減っているため、大体1.3~1.4倍ほどでしょうか。(もちろん厳密には扶養家族の人数などで大きく変わります)

つまり年収1,000万円の人は年収600万円の人の所詮は1.3倍しか金銭的な違いはないのです。8倍とはえらい違いです。

これを考えた時に私は「今まで100円のパンを食べてきたので、1.3倍なら130円のパンまでしか買えないな」とその時思いました。

もちろん「いや、その考え方はおかしい」と考える人も山ほどいるでしょうしかし、その時の私はそのように考えました。

スーパーで6枚切りのパンを眺めると
・山崎の一番安いパンが100円
・美味しくて有名なパスコの超熟が190円
・山崎パンの中ではかなり美味しいロイヤルブレッドが150円
でした。

パンの価格。96円 / 149円 / 192円

私は目標の年収を超えたのでつい、"超熟"とまでは言わないものの"山崎のロイヤルブレッド"に手を伸ばしたくなりました。
しかし、自分は600万円の時代の1.3倍の収入しかないのです。ロイヤルブレッドは今まで買ってきたパンの1.5倍の値段、それを買うのは理屈に合いません。

結局、私はいつもと同じ山崎の一番安い食パンを買って家に帰ってきました。

その時、自分が長い時間と努力をかけて手に入れた「年収1,000万」という目標の値到達点が、自分の生活を変えない範疇の生き方だと自覚しました。

パスコのパンが食べたければ、この理屈では年収2,000万円は必要です。
残念ながら、この時点の私には、近いうちに年収2,000万円に届くビジョンが頭の中にありませんでした。

大きなショックを覚えました

そんなことは年収1,000万円なる前に、わずかでも考えてみれば分かること。
それはその通りなのですが、目標に届いたからこそ、その現実を痛感しました。

会社員と、「8倍と1.3倍」の罠

1,000万円が600万円の8倍大きいワケがありません。掛け算を習った小学2年生にすら分かります。

しかし会社員は、この希少性8倍の、実態1.3~1.4倍の罠にハマってしまうのです。

つまり「手取りを1.3倍にするには、8倍の希少性を達成しなければいけない」というだいぶタチの悪いゲームをプレイさせられていているのです。

この先、自分は経営コンサルタントとしても「幸せはビジネスモデルに依存する」ということに注視していくのですが、今日の記事としてはここまでにします。

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