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ギターバイオレンスのメモ⑦

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憧れのあまり、3D-CADを用いてMEWの再現を試み始める。
ネット上の画像と動画資料等を頼りにする。

今回もMEWの記事です。
自分はギタービルダーでもあるのですが、ビルダー目線で
よりマニアックにMEWについて書こうと思う。

●2020年8月、一気に物事が動いた

見出しにある3Dモデルをもとに、NCをフル活用し、今年8月MEWレプリカを個人的に製作した。これは完全に僕のエゴであり、自己満足と憧れを具現化させたかった結果だった。この話はまだ別の機会に。

そしてそのレプリカをtwitterにて公開したところ、巡り巡ってなんとJinmo氏の目に留まり、氏から直々に、8月下旬に行われる身内限定の演奏会に来ないかと有難いことに招待された。たまたま僕はスケジュールが空いており、これは行くしかないと。

演奏会後、現在のMEWを超至近距離で撮影する事ができた。
15年越しに拝見する、伝説と化したGVのMEW初号機。
以下に解説と共に画像を残そうと思う。

※Jinmo氏に公開許可を頂いています。


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DRのネオン弦が張られた初代MEW。ズシリと重く、あらゆるところに傷があり、1989年完成から31年経過しても、その凄まじさは揺るがない。

氏より聞いたMEWの新情報

・ボディ:某ギター工房でボール盤の土台として使われていた50年物のブビンガ
・内蔵したアクティブサーキットはEMGのもの


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アトランシアによりカスタマイズされたコントロール郡。
ボリュームノブが傾斜しているのが分かる。垂直より、斜めの方がアクセスが良いという操作性の追求の結果。理にかなっている。

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配置図解。

・トレブル、ベース、ミドル
・ミドルはフリーケンシー付きの2軸
・EMGのイコライザー

ここから導き出される結論は、

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・恐らくEMGのBQS control systemが組み込まれている。


本来ベース用のプリアンプなんだけど、実際に自分の製作したレプリカにBQSを組み込んだら、非常に効果的な効きをした。1ハムのギターにBQSはかなりアリな選択肢と思う。

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ボディ、ネック共にクリアフィニッシュが施されている。
経年変化か、良い感じの半艶になっている
(当初僕はオイルフィニッシュだと思っていた)

※9/26追記
上記、クリアフィニッシュではなく、
「デュポン社のオイルフィニッシュではないか」という可能性が出てきました。名称的には「シーラー&フィニッシュ」というオイルで、
樹脂成分多めのオイル、現在入手できるかは不明。
情報進捗あればまた追記します。

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ボディの黒ずみ。長い間弾かれていることが分かる。


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今まで42フレットまでネックエンドがあるものと思ったら、
「つば出し」42フレットだった事が判明。39Fあたりにネックエンドがある。PUとネックの間にはボディ壁面が6~7㎜程存在している。
壁面が存在していることの利点は、
・エンド周辺のボディ強度確保
・ネック仕込み時の垂直位置出し要素 等がある。
とは思うものの、恐らくテンプレートの都合などでこの仕様になったのではないかと推測している。

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42フレット部は指板エンドに沿って水平に「落とされて」いる。
ここに尋常でないロマンを感じるのです。
フレットが6㎜スラントしている分、ブリッジのサドル位置もスラントする。
安価な「ライセンスド」フロイドローズ等では、サドル固定用六角ビスの穴が縦に2つしかないものが多くあり、スラントに対応しきれないブリッジが多く存在する。ライセンスドでないフロイドローズ(original.1000.special等)は縦に3つ穴があるため、サドルのオクターブ可変域を広く取る事が出来る。例外として、GOTOHのGE1996Tは穴が縦に2つなものの、各弦で穴の位置が計算され斜めに配置されている為、可変域が広い。


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キャットテイルと呼ばれる第二のアーム。
ブリッジに追加工で穴をあけ、短く加工したアームのタップを深く切り、六角ナットにて結合されている。GVの土屋氏曰く、
「もっとも制作で大変だったのはキャットテイル」だったという。

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サイドドットも2㎜のアルミ棒。
エボニーの指板エッジが斜めに落とされているのが分かる。
36Fまでしかポジションマークは打たれていない。

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ギブソン・ファイヤーバードみをほのかに感じる、
トラディショナルであり上品なヘッド。MEW JINMO SPECIALと
ロッドカバーに記されている。ペグは90年代に流通していた
クロコダイル・ロックチューナーと呼ばれていたペグで、
ペグ上部を硬貨などで締めて弦を固定可能な仕様だった。
GOTOHのマグナムロックの様に、弦引っ張って巻くだけでも固定が出来た。
(僕の記憶では、古いMOONのギター等にも使われていたはず)

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スラント故に斜めに配置されたロックナット。
弦の通り道が若干うねる為、ここはかなり強引さも感じる仕様だけども、
極論、弦をロックしてしまえばあとはファインチューナーで微調整が利く為、割り切った故の配置に感じる。

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段差のつけられたお洒落で立体的なヘッド。
ロッドカバーはフレイムメイプルの突板と、薄いABS材をサンドしている。恐らく0.5㎜と1㎜。(イソロクのロッドカバーがそうだった)

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ロックナットは裏留め。スカーフジョイントが見てとれる。
ネックグリップが若干四角い感じなのがわかるだろうか?

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ネック裏。長年の弾き込みを感じる重圧なTABACCO-ブラウン感。
ジョイント部付近の元の塗装の色との差。激渋。

ネックシェイプがかなり独特で、明確な非対称グリップ。確かこんな感じだった。そして薄い。20㎜厚以下だった感覚。

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ボディバック。塗装の削れ具合が歴史を語る。右側にEMG用の006P電池ボックス。
このアルミ製バックプレートにより、スプリングキャビティの構造は
長い間判明しなかった(しかし前記事の黄緑MEWにより、遂に構造が判明した)が、初号機も同一のザグリ形状かは謎なまま。ただ、謎なままの方が良いとさえ思える。僕にとってはロマンの塊。


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ジョイントは恐らくM5の5点留め。かなり大きめのジョイントワッシャーを使っている。

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本来は1ボリューム、1キャノン出力だったが故のスリムなバックパネル。
ここに「バックパネルのサイズよりもコントロール面積が広いボディトップ」という不可思議が生じる。
ザグリの形状が後加工で立体的にされている、としか考えられなかった。


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それぞれ、単純にノブがボディトップに出ているのではなく、
土台に装飾用ワッシャーが経由されている。
ここから推測できる構造は以下のようなもの。こうじゃないかもしれないし、マジでこうなのかもしれない。

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ボディトップから円形でバックパネル前までくり抜き、元のザグリと「内部で接続」することで、バックの見た目も変えず、
トップも装飾ワッシャを経由することでザグリを見せなくしつつ、内部のザグリ拡張が可能になる。


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製作したMEWレプリカで実際にその案を実行に移した図。
トレブル、ベースに試行。
ノブの落とし込み、バックパネルを変更せず内部ザグリ拡張が可能となった



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初号機MEWと僕の製作したレプリカ。


造形的にも仕様的にも見た目的にも、これ以上Cutting Edgeでcoolなギターは無いだろうと思い続けて15年。大乗仏教では「人の思念が少しづつ未来を動かし変えていく」という教えがあるけども、ずっと思ってればこういった機会にも巡り合えるのだなあと思った1日だった。

僕は今自分の個人ギターブランドをこしらえてるけど、
その根底にはギターバイオレンスの影響が計り知れないほどにある。



蜀咏悄 2020-09-20 0 17 04

ニッコニコのJinmo氏と僕


歳が何だろうが、時代が何だろうが、己がビビッと来た何か。
それが人間でも良いし、物体でも良いし、音楽でもイラストでも風景でも映画でも何でも良い。
自分の脳みそにずっと残るイメージっていうのは、趣味や性癖、生み出すものに相当の影響が反映される。そこからまた生み出されていくモノがある。
たまたま僕はギターバイオレンスのMEWに刺激を受けた。
とてもシンプルな答えなのです。


続く。