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TOKAI VC-55
1980年代、ハードロック全盛の時代。
当時、エレキギターに於いてはトラディショナルなモデル以外に、
国内外でHR/HM路線な尖ったギター、モデルが数多開発され販売された。
その勢いは今とは比較にならないほど熱く、独自ハードウェアを新規で開発するメーカーも多かった。アーティストモデルも山ほどあった。
1989年、東海楽器の短命だったモデルで、こんなものがある。
●VC55/VC75
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バスウッドボディ、メイプルネックのローズ指板。27フレット。
上位モデルの75は塗装の仕上げタイプが多く、
メイプルトップ/ソフトメイプルバックになってたり、スイッチ類が増えてたりする。謎に斜めになってるセンターリアの2ハム配置、ちょっと小ぶりなボディ。今見たら逆に凄くクールに見えてくる。
そんなVC55/75、とあるギタリストとのコラボレーションモデルなのだ。
●ヴィヴィアン・キャンベル
当時、ディオやホワイトスネイク等で活躍していたギタリスト、
vivian campbel(ヴィヴィアン・キャンベル)
ホワイトスネイクでエイドリアン・ヴァンデンバーグとツインギターをやってたりした。テクいプレイもあり、シュレッドもあり、メロいソロも
演ってたり、とても王道なHRギタリスト。
(僕の好きなキコ・ルーレイロは、彼をフェイバリットに挙げていた)
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キャンベルが当時使用していたギターに、
KRAMER製の「ナイトスワン(ポルカドット)」
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バディーブレイズ製作のポルカドット
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市販品のナイトスワン(今も売ってる)
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Rand guitarsの「VC-1」
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(元B.C.Richのランドヘブナーによって設計され、
トムアンダーソンによって製作されたプロトタイプ。
white snakeのstill of the night PVにて確認できる)
もうわかると思うけど、
今回取り上げたVC55はこのRand guitars VC-1が元ネタ(だと思う)
今でも通じるクールさがある。多フレット好きとしてはたまらない。
●センター、リアの2ハム
キャンベル仕様の独特な点はここに尽きる。
…といっても、Kramerのナイトスワンが最初からセンター、リア2ハムという独特な配置で、当時ナイトスワンを使用していたキャンベルがある意味
インフルエンサー的になり、彼の代名詞な配置と認知される流れが出来た、
と考えるのが自然かもしれない。ポルカドット塗装もアイコニックさに拍車を掛けていた。
ボディも一般のストラトより12.5%小さい。
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時系列的に書くと、
1:Kramerのナイトスワンという、センターリア配置のモデルがあり、
2:それをキャンベルが使用、彼的にアレンジしたものが製作され、
3:VCモデルとしてKramerから流通、有名に
4:同じ頃、Rand guitarsのキャンベルモデル、VC-1が彼の為に製作され、
5:そのVC-1をインスパイアしたのが今回のTOKAI VC-55/75
という事になる。
上記のRand guitars のVC-1は、2002年頃に別メーカーのラインナップに加わる事になる。デザインの譲渡があったのかは不明。
そのメーカーがこれ。
↓
●Ed Roman guitars
アメリカはラスベガスに居を構えるEd Roman Guitars。
歴史は古く、1976年創業。小売りもしてるし製造もする。
このメーカーのモデルに、Caligulaというモデルがある。
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Rand guitars VC-1にそっくり。と言うかほぼ同じ。
受注生産モデルは3500ドル、量産モデルは1295ドルだったらしい。
しかしこのcaligula、流通してる個体を全く見た事が無い。
もう生産してないのだろうか?
●まとめ
・Kramer ナイトスワン
・Rand guitars VC-1
・ヴィヴィアン・キャンベル
・TOKAI の当時のコラボの熱量
上記を勢いで混ぜたのが
TOKAI VC-55(75)。
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ちなみに、冒頭でキコルーレイロの話を出したけど、
彼が以前メインで使っていた、ブラジルの「TAGIMA」という
ギターメーカーをご存じだろうか。そのTAGIMAの「K-1」、
キコシグネイチャーモデルがこれ。
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TOKAIのVCにキコがインスパイアされてこうなったのか、
TAGIMAがTOKAIをインスパイアしたのか、
RandのVC-1をインスパイアしたのか、はたまたcaligulaか、
どことなく似てます。
●最後に
何で今回突然マニアックなVC55の記事を書いたのか、
明確な理由がありまして。せっかくだから色々調べて記事にしようと
思ったのです。
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該当機を買いました。
現存する数少ないVC-55です。