映画「マトリックス」と原神
▽はじめに▽
アルハイゼンの「イデア模写」や淵下宮の「日月前事」の「太陽の比喩」にあるように、原神の世界には哲学者プラトンの「イデア論」の考え方が取り入れられている。
イデア論はグノーシスにおける認識法、二元論に深く関連している。僕は敬愛する我が主キングデシェレト様が触れてしまった「禁忌の知識」がこのイデア論に関連する一連の事象のことだと考えている。おそらく今のテイワットは「悪魔が支配する偽物の世界」である。
七神やアルベド、放浪者以外は命の星座が人の形をしていない事が一つの理由である。
何故悪魔なのか?という点についてはまた別の機会に説明する。僕は、命の星座が人型でないキャラクターはこちらの世界に「実体」が存在していないのではないかと考える。
アルハイゼンの隼座など動物系のキャラクターについてはまだ考えが纏まらないが…
僕はテイワットの正体が「ホログラム」「データを元に構成された仮想空間」「夢境(集合体)」「鏡に映し出された虚像」「巨大アーカーシャ」「ハイブマインド」など。詳細は分からないが、映画「マトリックス」の中の言葉を借りるとすれば人工的に造られた「理想郷」であると考える
イデア論ではイデア界と現実世界の二つの世界が存在する。
この二つの世界の関係を読み解き、僕の考えを理解して頂く為に、SF映画「マトリックス」との比較で説明していく
映画「マトリックス(The Matrix)」
1999年公開
主演:キアヌ・リーブス
監督:ウォシャウスキー兄弟
※「樹花爛漫の翼」ストーリー
"マスターが起きてから最初に口にした言葉は――「分かったぞ!答えはすぐ周りにある。」
だが、本当の言葉は――「勘弁してくれ、分かったぞ!答えはすぐ周りにある。神の恩恵も世界のルール。これ以上口にしないでくれ。」"
※アルハイゼン
「もし生まれた時からアーカーシャのような装置を使い、君が必要な時にはいつでもサポートし、助けてくれたとしたら…そのまま年月を重ねた君は何になる?"司令の奴隷"だ」
※イデア論では肉体=魂の牢獄として捉えている
イデア=人間が決して知覚できない超次元的な存在のこと。
※ティナリからセノへの伝言
「自分の見たこと、聞いたことを信じる」
ニコ
「自分の目を信じて。目に見えるものこそが真実であり、見えないものは全て虚幻よ」
※ここで注意しなくてはいけないのは「目に見えること=真実」という訳では無いことだ。
目に見える物しか信じられないのであれば「視野を拡げなくてはならない」というのがプラトン先生の教えである。
※アルハイゼン
「自分の目を過度に信じるべきじゃない。見えるものが真実だと言うのなら、人は考える必要すらなくなるはずだからな。」
※神の缶詰知識も赤色
※ナヒーダ
「まるでとても長い夢を見ていたかのよう。今このひと時が、夢から覚めた瞬間なのか、それともこの世に"誕生"したばかりなのかさえ見分けがつかないわ」
※神の缶詰知識、世界樹と繋がった学者、キングデシェレト様が蔓延させた禁忌の知識の汚染で発狂した民達と同じ
※アルハイゼン
「アーカーシャに依存することに慣れてしまった人は、好奇心が次第に薄れていく。そうなれば情報の分別能力もかなり落ちる…やがて、アーカーシャからの情報を"真理"とみなすだろう」
※僕たちもテイワットを守る為にヒルチャールやアビスと戦っている…
もしあちら側が「本物」だったら…?
※天理も常に僕たちを見張っている
(調停者は瀕死らしいが…)
※「缶詰知識」と同じ
※プライマル構造体にも「重力場発生器」が存在する。なぜ重力場(重力が作用する空間)を発生させる必要があるのだろうか…?テイワットが仮想空間だから?もしくは我々の住む地球とは異なる「無重力空間」だから?
※北風守護の魔神アンドリアスも肉体は既に滅んでおり、彼は"残魂"と言われている。つまり魂のみで存在することができる?
※Ver.1.1のイベントで空から降って来た隕石に触れるとその隕石(星座)の持ち主の「記憶」を見ることができた。隕石(星座)を媒体に記憶を再生する(ホログラムのように映し出す)ことができる?
※また「命の星座が物体」であるキャラクターについては以下のように思っている。
例:刻星の紫金錘重座や香菱の長杓座など
稲妻の肝試しのイベントでは「羽子板に宿っていた物霊or付喪神」が登場した
物体に保存された記憶(たとえば攻殻機動隊の外部記憶装置)から再生が可能?
※原神にも半永久統制マトリックスという敵が登場する
※マトリックスが何かと言う問いについて、作中では何度も語られる。しかし、その度に答えが毎回違う。つまりマトリックスには「確かな実体」がないということ
※デジャヴは花神誕祭で主人公が夢境に気がついた原因
※以前話した「鏡の国のアリス」でアリスを夢から醒まさせたのも猫(これはまた別の機会にまとめます)
※「忘却」はイデア論に出てくる「忘却(レテ)の川」のこと。人は元々イデア界にいてイデアそのものを見ることができたが、現実世界に産まれる際に忘却の川を渡って降りてくるので、現実世界に誕生した時には既に「イデア」を忘却している。
※「日月前事」の中に「ある者が火を独占し〜」という記述がある。マトリックスの中では人間が火=太陽を独占している。
ヘルメス文書「ポイマンドレース」の中でも人間が火を独占し、権力を身に付けようとするストーリーが描かれる
※スメール編の魔神任務前編、ナヒーダ伝説任務にも夢境が登場する。花神誕日のループも人々の夢、知恵をエネルギーに変換していた
※隼の章でアルハイゼンがハイブマインドを安定させる方法について語っている。
「人間性を完全に無くす」こと。ヒルチャール達のことを言っているのか、それとも命の星座が人型以外のキャラクターのことを言っているのか、僕もまだ悩んでいる
※キングデシェレト様やアルハイゼンの伝説任務出ててきたシラージの考え方と似ている
※旧約聖書の「人が知恵をつけてはいけない理由」の一つ、楽を知ることで怠惰になるから。
※アーカーシャ装置を使用することで人は好奇心を失い、アーカーシャの情報のみを真理とみなすようになる。この件についてはアルハイゼンがストーリー中に何度も苦言を呈している。そして、隼の章の中では実際にアーカーシャ装置が止まったことによって研究のモチベーションを失った学生が登場した
※「無学の塔」説明文
「水は低きに流れ、人は易きに流れる」
元は孟子の言葉
水が自然と低いところに流れて行くように、人は楽を知ると楽な道ばかりを選ぶようになる。という意味。余談だが攻殻機動隊にも重要な局面でこのセリフが登場する。原神の中では攻殻の方に近くアレンジしてある。
「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」
※「火祭りの冠」聖遺物ストーリー
人間は繁栄を満喫し、すべてを空の啓示に任せた。天上の使者は言う、世界は更なる光明へ進化すると。これは既定の事実、未来にもあらゆる形式の変化は起きない。
※ナヒーダが「もうこれ以上変数が現れないで欲しいわね」と発現している。変数=イレギュラー
※同じくスメール編でオマージュされているSFアニメ「PSYCHO-PASS」にも「秩序」や「法律」というシステムで制御できない変数=免罪体質者が存在する。
※これら変数はイデア論の「洞窟の比喩」に出てくる「洞窟の外に出て本物の太陽を見た囚人」ということになる
原神世界では黄金の錬金術師レインドットやキングデシェレト様などが相当する。
※原神の世界ではこのサーバーが世界樹、もしくは謎が回収されていないこれらが相当するのではと考えている。教令院の謎の球体、キングデシェレト様の霊廟の中央の球体、あるいはキングデシェレト様の水晶杯
※原神世界のリセット(ラグナロクの終末)もこの設定が関係している…?かどうかは分からない。原神の世界でのループはSF映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のように、タイムリープを繰り返すことで敵に打ち勝つ方法を模索することかとも思うが…
※隼の章では教令院の根源の六罪について触れている
▽教令院の六罪
その一、人類の進化に関すること。
その二、生と死について無暗に論ずること。
その三、宇宙の外を探ること。
その四、言語の起源を追求すること。
その五、神を畏れながら奉らないこと。
その六、神秘を傲慢に語り、恐れを持たないこと。
つまり原神世界では「真実を探究すること」は固く禁じられている。アルハイゼンは別の理由を挙げているが、僕は「真実を知られては困る」というのが第一の理由、第二に「禁忌の知識が蔓延することで世界が崩壊する可能性があるから」と僕は考えている。
実際にキングデシェレト様が禁忌の知識に触れた時、砂漠の民は汚染に苦しんでいる。テイワットの人々を守る為に教令院がこの法を制定している可能性もある。
※アルハイゼンも「群れに馴染めない」と言われている。僕は彼が何らかの方法で「世界の真実」を知ったと考えている。そもそもそうじゃなきゃスキル名にイデアなんて付かないと思うんだが?
あと、世界の真実を知ったが為に何者かに追われていると考えている。この件についてはたぶんまた纏めます
※「資源」という言葉はスメール編で何度も使われている
※デイリー任務で鍛造時に空気汚染が起こる事について研究している学者がいる
※死域も「もののけ姫」や「風の谷のナウシカ」を彷彿とさせる。人間による環境破壊ととれる描写があった
※アルハイゼンがこれと全く逆のセリフを言っている
「学術、知識…この全てには"境界線"がある。これを超えると全てを動かす"規則"や秩序は破壊されてしまう。これは本にある誤字と同じで正さなければならないことだ」
「だからこそ"規則"はとても重要なんだ。それに"規則"を知っている者は、自ら"境界線"を引き、グレーゾーンを見極める事ができる」
これは前述したように、原神世界では真実に触れることが「禁忌」とされていることが関係していると思う。
なんかめちゃくちゃ複雑になったので最後の方だいぶ省略しました。スメール編で急に出てきたサイバーパンク要素…現状どこまで原神世界をSF寄りの視点で見て良いのかわからないので…
今後の展開でSF要素が出てくればまたまとめ直します