新しい生命
「あ」
声は出しませんでしたが、私には確信に近い感覚がありました。
お腹がほんのりとあたたかなのです。
ただそれだけ。
でも、私は自分の中に新しい生命が宿ったことを知りました。
夫には内緒で、大学附属病院の産婦人科を受診しました。
尿検査、エコー。
診察室に再び呼ばれると
「おめでとうございます。妊娠されてますよ」
と告げられました。
帰り道、足もとがふわふわしていたのを今でも覚えています。
空の色だけでなく、すべての風景が違っていました。
街のあらゆるものが、光を浴びて輝いているように見えたのです。
スキップしたいのをぐぐっと堪えて、地面を踏みしめるようにして一歩一歩歩きました。
夫と私は、子供を持つということに関して特に話し合ったことはありませんでした。
何故かというと、私に持病があったのと、母が不妊症でつらく長い不妊治療の末にやっと授かったのが私だったということから、きっと私もその体質を受け継いでいるんじゃないかと結婚前に彼に話しておいたからです。
「子供がいなくたって、夫婦ふたりきりだとしても、家庭は家庭でしょう?違うかな」
と静かな笑顔を浮かべた彼の横顔を今も覚えています。
そう言ってもらえて、私は本当に安堵しました。
でも、もうふたりじゃない!
バッグの中の携帯に手を伸ばしましたが、我慢しました。
もうひとつ確かめなければならないことがあったからです。
私のふたりの主治医に。