#1 雨の止まない世界 地球温暖化で未来の天気はどう変わる?
ここ数年、厳しい暑さが続く夏。熱中症の危険から不要不急の外出は避けるようにとアラートが出る程で、以前とは比べ物にならない厳しい暑さが続いています。
そんな暑さもあってか、日々の生活の中でも地球温暖化による気候変動を身にしみて実感するようになってきたのではないでしょうか。昨今よく耳にするSDGsでも、その達成目標の一つとして「気候変動に対する具体的な対策」が挙げられていますが、その理由は 地球上の気温は産業革命前から比べて、2035年までに1.5度、2100年までに2.5度上昇する* と言われているから。今後も気候変動が止まることなく進んでいくことがすでに予想されています。
そのように急激な気候変動が進むことで、未来の天気はどうなっていくのでしょうか。はたして、今回のテーマの一つである「雨の止まない世界」は実際に訪れるのでしょうか。様々な研究データから検証してみたいと思います。
日本では、大雨の日数が増加
気象庁が発表している“異常気象リスクマップ**” によると、大雨の発生日は過去100年で増えているそう。また2006年発表の“気候変動監視レポート”でもっと詳しく降水量を見てみると、20世紀初頭の30年間(1901〜1930年)と比較して、降水量が100mm以上の日数は約1.2倍、さらに大雨と言える200mm以上の日数は約1.4倍の出現頻度に。2019年に海洋研究開発機構の研究グループが、コンピュータによるシミュレーションを元にまとめた論文によると、20年後には雨の激しさが現在の1割増しになるとの予測も立てられています*** 。確かに、最近では熱中症警戒アラートと同じように線状降水帯による大雨被害と、それに伴う自然災害のニュースも頻繁に目にします。昔よりも大雨の発生率が増えているというのは、実感値としても納得せざるを得ません。
そしてこのような気候変動に、大きく影響しているのが地球温暖化。気象研究所のレポートによると、大気中に存在できる水蒸気量は、気温が1℃上がるごとに6〜7%増加するのだそうです**** 。気温が上がるにつれて水蒸気が増えることで、大雨の原因となる雲が発生すると考えられています。つまり、温暖化による気温の上昇と、大雨の増加は切っても切り離せない関係なのです。気温と降水量の関係を考えると、これから先の未来、さらに過酷な環境での生活を想定する必要がありそうです。
世界では雨の多い地域と砂漠化が進む地域の2極化に
日本は世界の平均と比べると年間降水量が約2倍と雨の多い国*****に分類されますが、地球全体で降水量が増えているわけではありません。地球規模で降水量を見てみると、降水量が増加している地域と、干ばつや砂漠が拡大している地域と二極化現象が起きていることがわかります。国連食糧農業機関(FAO)のホームページ******で公開されている世界各国の降水量データ(2013〜2017年の年平均降水量)を見てみると、日本が1,668mm(世界48位)に対して、トップのコロンビアは雨季が2回あったりと降水量は日本の約2倍の3,240mm。一方でエジプトやリビア、サウジアラビアなどの乾燥した地域では、年間50mm程度しか雨が降らないのだそう。コロンビアやエジプト、リビア、サウジアラビアなど既に過酷な自然環境下にある国々には、その環境に適応するための未来の暮らしのヒントがあるかもしれません。
ちなみに豆知識ですが、世界の連続降雨記録の最長はハワイのオアフ島で計測された331日******* 、日本の場合は青森で130日間********なんだそうです。
雨の日が増えると鬱が増加
雨の日が続くとどんよりとした気分になる人も多いと思いますが、実際にメンタルヘルスの観点からも雨と体調の関連についての研究********が進んでいます。理由は大きく2つあって、一つは気圧の変化によって自律神経が乱れ、睡眠等の生活リズムに影響してしまうというもの、もう一つは日照時間の減少により、日光浴によって体内で生成されるセロトニンやドーパミンが減少してしまうというもの。もちろん個人差はあると思いますが、もし雨が降り続く世界が訪れるとしたら、メンタルヘルスの意識や対策は今よりもさらに重要になるかもしれません。日々の生活のことなので投薬に頼るばかりではなく、体調や気分の浮き沈みを自分で上手にコントロールするために、ヨガや瞑想の習慣を生活に取り入れるなど、人々のライフスタイルにも変化が生まれることでしょう。
まとめ
気象変化の研究データから推測するに、地球温暖化により徐々に大雨の発生日が増えていくことは確実なようです。「雨の止まない世界」が訪れるとは言い切れませんが、20年前の暑さが今よりも過酷ではなかったように、20年後の未来の天気が今よりも過酷なものになっていることは容易に想像できます。大雨による災害や、生活や精神への悪影響を少しでも減らすためには、環境問題への早急かつ具体的なアクションが必要です。と同時に、そんな環境変化のなかでも快適に暮らすための具体アイデアを考えていくことが、自分らしく生きていく大きな知恵になるのかもしれません。
(文・高橋 功樹/未来予報株式会社)