広報、関東のアリゾナに立つ。
2020年春。全体のシナリオが完成に近づいた頃、撮影場所（いわゆるロケ地）探しを始めた監督。
屋内ロケは友人に紹介してもらったBarなどがほぼ決まっていた。問題は屋外ロケ地の選定だ。
屋外の場合、公有私有に関わらず、許可手続きが大変。
なので早めに決めておきたい。
（後日、追加撮影となった綾瀬の地下道が難易度Dの良い例である）
足立区の届け出、課を間違えてた・・・orz
— Jun Kitamikado@酒場SF監督 (@nekokunjp) November 9, 2020
撮影許可申請、区役所クリアして警察署で再び差し戻し🤣
— Jun Kitamikado@酒場SF監督 (@nekokunjp) November 9, 2020
「最後のシーンでさー、ヒロインが遠くから歩いてくるシーンあって、ロケ地に砂漠みたいなとこ探してるんだけど...」
砂漠。日本の砂漠というと、鳥取しか思い浮かばない。
鳥取ーーー。遠いぃぃぃ。
「実はここ考えてるんだけど」
示された場所は茨城のとある海岸。
監督の考える条件とは
・遠景効果のある広い砂浜
・廃墟感のある岸壁あればなおよし
・レンタル料安い（一番大事！）
らしい。
さらに、イメージは「マッドマックス」だという。
（写真は茨城県サイトよりお借りしました）
･･･めっちゃ日本だった。
頭の中でエンディング、この砂浜を歩いてくる女優を浮かべる。
……
火サスしか思い浮かばなかった。
そんなやり取りのあと、とある日曜ロケハンに行くというので一抹の不安を抱えつつも、自粛生活の息抜きついでに付き合うことにした。
北茨城。結構遠い。天気は良くてロケハン日和。
現地について、海岸に降りてみた。
思ったのと、なんか･･･違う･･･
満潮に近かったのか、砂浜が狭い。これだと廃墟感を出せない。
少し車を走らせてみたものの、良い頃合いの海岸は見つからない。
「仕方ない、今日は帰るか...」
見るからに落胆している監督を見て、やる気0の広報のやる気が0.1ポイント上昇した。もうダメだと言われると、そんなことはない！となるのは、悪い癖だ。
さて、私には特技がある。自他ともに認める検索上手。
会社でも、なかなか見つけられない情報を秒で見つける異能の持ち主、と言われている。
ポケモンを取っていたスマホの画面を閉じ、猛然と検索を開始した。
奇跡の出会い
「どうしよっかなー、屋外ロケ。あー、シナリオ変えるしかないかな･･･」
ぼやく監督。どんどん高速のインターが近づいてくる。
「茨城 ロケ地 廃墟」
「茨城 ロケ地 廃工場」
「茨城 ロケーション 荒野 映画」
検索キーワードを変えつつ、サイトを開いては閉じる。
しかし目ぼしい情報は見つからない。
諦めかけたその時、一件の検索結果のタイトルが目に入った。
「荒野、爆破 - Jimdo」
Jimdoというのは、無料でWebサイトを制作できるツールで、
問題はその前。「荒野･･･爆破！？」
その下の説明テキストにはこう記されている。
「東京から120分！ 荒野・工場・爆破ロケなら松井建設ロケサービスへ～日帰りできる関東のアリゾナ～. 爆破、荒野、廃工場ロケのことならお任せください。 - 荒野、爆破、工場ロケのことなら松井建設ロケサポートサービスにおまかせ。」
き、
ｷﾀｰｰｰｰｰｰｰｰｰ!!!!!
「ちょちょちょ、ねえ！ここ良くない！？」
「えっえっ！？な、なに･･･？」
驚く監督に上記のテキストを読んで聞かせる。
どうやら、建設会社の工場を利用して、一般向けにロケーションサポートをしている会社らしい。
場所も今いる場所からさほど遠くない。これは、奇跡だ。
サイト内を素早く回遊する。コーポレイトサイトとは別の、
それはガチでロケーション専用サイトだった。
ページ内に踊る「火気使用」「爆破」「荒野」などの文字。さらに「関東のアリゾナ」というサブキャッチ。
マッドマックスじゃん。すごい、私がすごい（自画自賛）。
撮影実績もたくさん掲載されている。観たことのあるものばかりだ。
その中には「仮面ライダー」の文字も。
やっべ、聖地巡礼できる･･･！（動機）
が、どうやらロケハンには予約が必要らしい。
日曜は当然会社なので営業していない。
でも、見てみたい。
「ねえ、外から眺めるだけでも雰囲気わかるかもしれないよ、行ってみようよ」
「え、でも入れないんじゃだめじゃないかな･･･」
なぜか及び腰の監督を急かし、20分ほど車を走らせた山裾に、その工場は突如姿を現した。
（写真は正式なロケハン時に撮影したものです）
お。おぉ、これは。
「これは、まさに、だな」
オープンエアな巨大セットのような空間。一面が砂地でさびれた工場がその中心部にたたずんでいる。
まごうことなく、そのイメージはマッドマックス怒りのデス・ロード（多分）。
「やったね！見つかったじゃん！」
頭の中で「聖地･･･」とワクワクが止まらなくなるただの特撮ファンの横で、監督は「でも、高そう･･･」と懐具合を気にしていたのだった。
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