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東京都による子ども五千円給付がもたらす反作用とは (1月16日)

先週9日、ラジオ茨城放送のダイバーシティニュースに出演しました。その放映内容がYouTubeにて公開されています。

その際に、東京都が18歳以下に5千円給付をおこなったニュースについて解説しましたが、その内容を紹介しておきます。

■東京都による5000円給付とは何か

 東京都に居住する18歳以下に対して、月5,000円を2024年1月から給付が行われます。

 所得制限を行わないことが特徴で、東京には18歳以下の方は200万人いますので、年間1,200億円がかかります。一人あたりでみれば、仮に18年間給付をうけると、総額108万円になります。

■少子化対策になるのか

 必ずしもなりません。

 月数千円ほどの現金給付は、子どもを必ずしも増やすことがないことは、理論的にも実践的にも研究者から指摘されています(※1)。現金給付はまず、今いる子どもへの教育費に使われ、もう一人増やす側には向かいにくいためです。

 お金よりも、とりわけ母親の時間をいかに守れるか。そのために保育サービスの拡充や、男性や企業の意識改革が少子化対策においては重要とされています。 

※1 https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou_report04.pdf


■子どもの貧困対策になるのか

 なります。生活困窮家庭は1食あたり300円程度で生活しており、子ども1人5,000円の給付は、想像以上にインパクトがあります。

 ただ、相対的貧困率は14%。困窮家庭のみに支援すれば200億弱で済む予算が1,200億円かかります。効果に対して、予算がかかりすぎると言えます。

■他都道府県への影響は

 かなりあります。

 1,200億円の予算を独自に出せるような自治体は東京都以外にはありません。同様の予算を、千葉県や埼玉県が独自に行うことは困難でしょう。そうなると、子育て世帯が隣県から東京に移住するケースが増えることが予想されます。

 数年後に東京都は、この政策によって子どもの数や税収が増えたことを喧伝するはずです。それは、出生率が増えたからではなく、隣県からの子育て世帯の移住によるためです。

■今回の政策をどう考えると良いか

 日本の社会保障は高齢世代や医療介護に偏っていますから、子育て世帯への支援が増えることは歓迎です。

 他方、強い反作用を考えておく必要があります。東京都と同様の施策を他自治体が行えないため、国に予算を確保するよう求める世論が必ず広まります。18歳未満は1900万人いますので、予算は1.1兆円必要になります。

 これだけ予算をあげたとしても、少子化は解決しません。教育ビジネスや子供服などの業績は上がるでしょうが。

 長期金利が上昇する昨今、国債に頼ることの限界があり、このことにより大幅な増税がもたらされ、現役世代の負担がさらに高まる可能性も高まります。

 子育て世代・現役世代を手厚くする方向性は重要ですが、反面のリスクも頭に入れておく必要があります。

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